第35話 浅草デート①
「わぁ! 人で一杯やね……今日は祭りか何かがあるん?」
浅草寺の雷門前。
外国人観光客や修学旅行生でごった返す仲見世通りの人混みを見て、カス子はそんな感想を漏らす。
ナーロッパの港町ニューモンもそれなりに賑わってはいたが、現代日本の世界的観光地・浅草の人口密度は、祭りの時のそれに匹敵する規模らしい。
「これが日本の観光地の普通の込み具合だな」
「これで!? ひゃ~……うすうす感じてたけど、ニホンって街の規模がめっちゃおおきぃやん」
「というか、こっち方面にはこなかったのか?」
「うちはあっち方面さまとっとったで、ずっとデカい建物ばかりでようわからん小売店ばっかりやったわ」
北の方を指さすカス子。どうやら浅草寺の北の当たりをさまよっていたらしい。
「ま、とりあえず、はぐれないように手ぇ繋いどけ。あ、さっき買った帽子はちゃんとかぶれよ? エルフ耳は目立つからな」
「こ、こうでええ?……」
先ほどその辺の店で買ったつば広のバケットハットで耳を隠した後に、カズキが差し出した手をカス子は握り返す。
バケットハットの中からちらっと見えるカス子の瞳が、カズキにクリティカルヒットした。
(やっべえ、バリ可愛い。これ俺が認めた瞬間が恋人になるのか。……マ?)
特に意図している媚び以外にも順調に和樹はカス子にほだされていく。
しょうがない、だって今まで年齢=彼女無しだったのだから。
このゆるふわ令和メンズはいわゆる悲しきモンスターだった。
そんな悲しきモンスター級小物クズ、和樹は今までの灰色の青春を取り戻すがごとく、人生初の無料デート、カス子とのデートを全力で楽しみ始める。
うなおにぎり、たこせん、そして抹茶クレープ。
「んんん~っ!! 甘いっ! 甘苦や! それでいて冷たくて癖になる風味! なんやこの緑の粉! ホンマに合法なん!?」
抹茶の独特の風味にはまった様子のカス子は、目を白黒させながらバケットハットを揺らす。
その中ではピコピコとあの長い意味が動いているのだろう。
「ナーロッパだと砂糖も貴重なのか?」
「ちょぉーっとお高いくらいやけど、氷菓子は貴重やな! 氷魔法を使える魔法使いは貴重やからなぁ……」
その後、浅草周辺の商業施設に入り、しま〇らでカス子のための洋服を選ぶ。
といっても和樹に女の子の服を選ぶようなセンスはない。
「とりあえずあのマネキンと同じの着るか?」
和樹が指さしたマネキンが来ているのは、花柄のレースブラウスに白インナー、白のワイドパンツというオールホワイトコーデ。
「ええやん!」
カス子的にもお気に召したようで、そのまま試着室で、マネキンコピーのコーデに着替えだす。
「ど、どうやろ?」
「お、おぉ……」
数分後、試着室から出てきたカス子を見て、和樹は思わず息を呑んだ。
「こんなヒラヒラした布、着たことないんやけど……似合っとる?」
恥ずかしそうにもじもじとレースブラウスを弄るカス子。
オールホワイトコーデがカス子の褐色肌とのコントラストとなり、エキゾチックな雰囲気を醸し出している。
(……カス子が着替えてる間に同じような恰好のおばちゃんがいて失敗したな―とか思ったけど全然じゃん! 同じような服でも美少女が着るだけで高級ブランドだよこれ!)




