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俺の異世界交易FIRE計画を役所が邪魔する  作者: 九束


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第28話 帰ってきたカス子

「運転手さん、ここでいいです」


自宅マンションの近くにある、見慣れたディスカウントストアの前で和樹はタクシーを降りる。


理由は警察署での長丁場で腹も減っていたし、こまごまとした日用品も買いたいからだった。


「ん~今日の気分は~~日本酒! ビールも一応補充するか。おっ、なんか新しいおつまみ缶が出てるじゃん。一通り買っちゃえ~♪」


和樹は鼻歌を歌いながら店内を物色し、日本酒にビールと缶詰めなどの晩酌の材料、それに切らしていたシャンプーなどの日用品を買い込んだ。


そうして買い物を終えると、レジ袋をぶら下げて夜の住宅街を歩く。


梅雨のじめっとした空気が和樹の肌を撫でる。


が、そんな不快な空気も何のその。


頭の中は相変わらず、数週間後に手に入る予定の金髪碧眼エルフのことでいっぱいだ。


「早く時間経たねえかなー。あ、そうだ。明日にでもネットで高級なベッド買い直そう。ハイボール塗(まみ)れだったし丁度いいや。俺の専属清楚エルフちゃんとのラブラブちゅっちゅ生活にふさわしいものを買おう。ぐふ、うぇひひひひ……」


ニヤニヤとだらしない笑みを浮かべながら歩く和樹。


もう自宅は目の前。


そのままオートロックのエントランスのドアに手をかける。


「……ん?」


何かの気配を感じた和樹はエントランスの隅に視線を移す。


視線の先、エントランスの隅、植え込みの影になる暗がりには、小さな影がうずくまっていた。


酔っ払いが寝込んでいるのかな? と思った和樹はそのまま通り過ぎようとする。


しかし人影は和樹を一目見るや否や和樹の方に飛びついてきた。


ガバっ!


「んあ!?」


「カズキはん~~~なんやここ!? なんやねんここ~~~~!!!」


何回か経験のある柔らかい感覚が和樹の腕に伝わってくる。


健康的な琥珀色の肌。


乱れた銀色の髪。


そして、しょんぼりと垂れ下がった、長い三角耳。


和樹のダボダボのパーカーとスウェットズボン姿のカス子だった。


おそらく和樹が部屋から和樹の服を盗んで飛び出した時と同じ姿なのだろう。


「……カス子? って臭!」


「銀貨かと思って持ってったコイン、全然価値ないみたいやし!! 食べ物ちょぉーっと買ったら無くなるって何!? そもそも言葉が全然通じひんってどういうことなん!? 世界共通語意外に言語ってあったん!? なんなんここ!?」


未知の世界に放り込まれて数日。


言葉も通日ろくな買い物もできていなかっただろうカス子は今までのような小悪魔的な余裕は皆無。


完全にメンタルが折れていたようだった。


「くせぇからはなれろって!!」


近年の温暖化で梅雨とはいえ日中は高温。それに梅雨の多湿。


その中で放浪していたせいか、カス子は汗臭かった。


そのせいで前回、前々回のようなカス子に抱き着かれたこと由来によるIQ低下が起こらなかった和樹はカス子を引きはがそうとする。


「暗黒大陸ちゃうんか!?」


「最初からそうだって言うってんだろ!?」


どうやら、彼女はここ(日本)が、自分の知る暗黒大陸の一地方だと勘違いして逃げ出したらしい。


しかし、異世界ドアのカギに付属する翻訳チートを持っているのは和樹だけであり、和樹から離れたカス子にとっては、日本の言葉は完全に意味不明の異国語である。


頼みの綱である和樹の家から盗んだ小銭も、せいぜい初日に弁当を買えた程度だろう。


もしかしたら言葉が全く通じなかったことから、ろくな買い物もできてないかもしれない。


つまり、魔力も極端に薄く、頼れる者もいない未知の世界という事実をようやく理解し、飼い主の元に戻ってきたという訳だった。



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