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俺の異世界交易FIRE計画を役所が邪魔する  作者: 九束


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第22話 クレームだクレーム!

 (魔法契約はどうなってんだよ! 絶対服従で生殺与奪は俺のモノだったんじゃないのかよ! あのエフペケとかいうクソババアにクレームだクレーム!)


元々生殺与奪はお前の物ではない。


そんなツッコミをする者はいないため、和樹は大人のおもちゃが詰まった袋を部屋の隅にぶん投げると、さっき行ったばかりのディスカウントストアで適当に石鹸をリュック一杯に買いこむと、怒りを胸に異世界ドアを開いて再びナーロッパへ。


前回石鹸を纏め売りした商会で『まだ在庫がおありだったんですか?』と意外な顔をする商会長に愛想笑いをしながら手早くチーレム金貨50枚ほどを入手し、その足で奴隷商館へのダッシュで凸する和樹。


バンッ!!


「おい!! どうなってんだよ!!」


奴隷商館のドアを蹴破らんばかりの勢いで開け放ち、和樹は受付の奥にいたエフペケに怒鳴り込んだ。


「おや、これは先日のお大尽の旦那じゃないか。いかがなさいましたか?」


和樹のような息の荒いやからには慣れているのか、エフペケは奥の目を細めながら、静かに応対する。


「いかがなさいましたか、じゃねえよ! ここで魔法奴隷契約したカス子……カサンドラが逃げやがったんだよ!!」


「……カサンドラが、逃亡?」


しかし和樹の言葉に、エフペケは少し目を丸くする。


「そんなはずはありません。彼女の魔法奴隷契約には『逃亡禁止』の条項が入っています」


「じゃあなんで俺の家……いや拠点から無断でいなくなってるんだ!? 逃亡ってのは本人が逃亡じゃないと思えば逃亡じゃないとかそういうトンチみたいな話じゃないだろうな!?」


「拠点の留守を預けていた時に、無断でいなくなった、と?」


「そうだ!」


「確かにそれは逃亡に該当しますね……少々お待ちを」


そう言うと、エフペケは棚から分厚いバインダーを取り出し、和樹とカサンドラがサインした契約書の原本を引っ張り出してきた。


そして、そこに押印された魔法印に手を触れる。


「……ッ!? これは……」


すると、エフペケの顔色が変わった。


「魔法印が無効化されています。つまり、契約が完全に切れている状態です」


「はぁ!? なんで!?」


「今調べますので、少々お待ちを……」


そう言うと、エフペケは慣れた手つきで別の何枚かの魔法陣のような文様が入った書類を手に取り、無効化されたカサンドラの魔法奴隷契約書にかざして文様を読み取り始める。


そうして無効化の原因が分かったのか、すぐに和樹の方を向いて説明を始めた。


「ふむ。印の痕跡を調べるに、どうやら契約を維持するための『マナ』が完全に枯渇し、マナ切れを起こして拘束力が消滅したようですね」


「マナ切れ?」


エフペケの言葉に、和樹は首を傾げた。


「ええ。魔法奴隷契約に関わらず、拘束力を持つ魔法契約は拘束される側が持つマナのごく一部を利用することによって強制力を持たせる、という構造なのです。つまりこれはカサンドラのマナが一度完全に欠乏したことを表しています」


そこで一旦言葉を区切ると、エフペケは和樹を見据えるようにして言葉をつづけた。


「……カズキ殿。もしかして、彼女を連れていったのは通常の宿屋などではなく、『そういう』施設ではないですか?」


「そういう施設?」


どういう施設かわからない和樹はおうむ返しに聞き返す。


「ええ。この街には、力が強すぎる魔族の奴隷を大人しくさせたり、あるいは魔法を封じて高山病のようになった奴隷との『特殊なプレイ』を楽しむために、マナを完全に遮断する特殊な設備を持った宿泊施設がいくつか存在します。そうした無マナ空間に長時間滞在すると、契約の魔法印が魔力不足で干上がってしまうことがあるのです。……そういう場所へ?」


「なにそのSMプレイ専用ラブホみたいなところ!? ないって! 俺はただ自分の――あ」


エフペケの確認を否定する言葉の途中で、和樹はハッと日本にカサンドラを連れ込んだ直後のことについて思い出す。


(……そういえば日本に連れて行った時、カス子の奴『無マナ地帯にいるみたいや』とかいって、ぶっ倒れてたな……もしかして日本、いや地球ってマナない?)


現代文明で魔法を名乗るものは大体インチキだ。


だが、この異世界ナーロッパでは普通に魔法がある。


その差はマナの有無だとしたら、カサンドラの件も説明がつく。


その可能性に気が付いた和樹が次の言葉を出せずにいると、エフペケは呆れたようなため息をついた。


「……なるほど。そのご様子だと、心当たりがあるようですね」


「そういう施設では、ないけどな」


「類似する環境には心当たりがある、ということですね?」


「……そうだ」


「いいですかカズキ殿。これは魔法奴隷契約に付帯する条文として明記しておりますが、マナ枯渇による魔法契約の無効化については当商会では責任を負いかねます」


エフペケはカサンドラの魔法奴隷契約に追加するように割り印がされた付帯条項を指さしながら和樹に説明する。


そこには確かに瑕疵(つまりエフペケのミス)を除く契約無効化については魔法印の生成者は責任を負いかねると書いてあった。


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