第21話 買取配送と買い出し
「ふふふふふ……五千万えーん五千七百万えーん」
カサンドラを残して運送会社の営業所に赴き、金貨入りの段ボールに伝票を張り付けて預け終わった帰り。
カズキは小声でぶつぶつと呟きながら足取り軽くペンギンが目印のディスカウントストアへと足を進めていた。
今回異世界から持ち帰ったチーレム金貨は200枚。
現在の相場に直すと見込み金額はおよそ5700万円だった。
流石にそれを一括で送ってしまうとまずいような気がしたカズキは、今回は複数の買い取り業者を使うことにし、あとは五月雨式の入金を待つだけ。
とはいえ前回の経緯を考えるにおそらく今回も一週間以内に入金が来ると和樹は見込んでいた。
その上、今回は一部をすでに近くの貴金属買取店で店頭買い取りに出し、1000万円ほどを換金済み。
既に財布が温かくなっか和樹の心は有頂天だった。こいついつも有頂天だな。
そんなこんなで、二度目の異世界交易でやることはすべて終わった和樹。
(あとは……脱・童・貞!!!)
和樹の脳内は次なる大仕事、脱童貞に全力だった。
「大体宿泊で4万か、宿泊だな」
回転ベッドがあることで有名なラブホテルを調べ、そこまでのタクシー経路をタクシーアプリに入れてスタンバイ。
「あとはおもちゃも買い込むか」
鼻息を荒くしながらマンションに帰る前にペンギンがトレードマークのディスカウントストアに向かう和樹。
「お豆ちゃんを吸う奴と……中でウインウインする奴と……ピンクローターはあるだけ買うか。これくっつけるのって医療用テープでいいのか? あ、コス衣装も捨てがたい……一通り買うか。手錠……一応買うか。ぐふふ……」
和樹の脳内はカス子を現代の大人のおもちゃで攻め立てる妄想で一杯だった。
「――3万3462円でーす」
「クレジットカードのタッチ決済で」
「あじゃじゃしたー」
アホみたいな量の大人のおもちゃを買い込む和樹に、『同人AVの撮影かな?』と怪訝な視線を投げる店員の目線をスルーし、和樹はビニール袋一杯に詰まった大人のおもちゃを手に意気揚々と自宅への帰路に就く。
日時はもう夕方に差し掛かってきた。
(今夜はお楽しみだぜひゃっはー!)
「可愛い可愛い俺の奴隷ちゃんを起こして、めくるめく快楽の夜と洒落込みますかねぇ!!」
和樹は小走りでマンションに戻り、エレベーターで謎ダンスをし、そのまま軽い足取りで自室の玄関ドアを開ける。
「ただいまー! ご主人様がお帰りだぞー! 起きて――あれ?」
和樹の言葉は、部屋に入ったろころでピタリと止まった。
ベッドの上に、先ほどまでスヤスヤと眠っていたはずのカス子の姿がない。
「……え? カス子?」
ユニットバスのドアを開ける。いない。
クローゼットを開ける。いない。
ベランダに出る。誰も、いない。
「???」
(えっ!? どういうこと?? 逃げ……いや、魔法契約があるはずだし、そもそも家を出る前はなんかいい雰囲気だったじゃん!?)
そんなことを考えながらうろうろ決して広くない部屋をうろうろする和樹。
すると、テーブルの異変に目が留まった。
テーブルの上に置いてあったはずの、和樹の財布の横の小銭入れの籠。
財布が重くなるのが嫌なキャッシュレス派の和樹は、現金しか使えない場所で小銭が発生するとその籠に放り込んでいたのだが……。
無くなっていた。
もしかして、と思った和樹は洗面所の洗濯済みの服を入れておく洗濯籠を見る。
「ジャージも、ない」
まさかと思って玄関に行くと、近くのコンビニに行くときに使っていたかかと付きのサンダルもなくなっていた。
状況証拠的に、考えられることはひとつしかない。
「あのカス……逃げやがった!?」
理由は分からないが魔法契約が破られて逃亡されたということだった。




