第18話 カス子で情報収集
「いやぁ~! 地獄の釜の底から蜘蛛の糸で引っ張り上げてもろた気分やわぁ! カズキはん、いやご主人様はほんまウチの救世主やで!」
ここはカス子が商談に成功したとき(つまり新人貿易商からぼったくったとき)に自分へのご褒美として利用していたそこそこ良い料理屋。
そんなちょっと良い料理店の個室で、胡椒がたっぷりかかったTボーンステーキを豪快に頬張った後にビール(大ジョッキ)で流し込み、その後に和樹を拝むカス子(FX溶かしたカスだから。和樹はそう呼ぶことにしたらしい)。
奴隷商館を出た後に速攻で自慢のデカい胸を押し当てて食事をおねだりし、和樹を連れ込んだのだった。
「(助かった途端めっちゃ調子いいなこいつ)そんなにがっつかなくても食事は逃げないだろ?」
そんなカス子の調子のよいマシンガントークに和樹はあきれながら、マッシュポテトをつつきつつ、ツッコミをする。
ちなみに地獄とか蜘蛛の糸とかは異世界スキルで自動翻訳されているのだが、和樹が疑問にも思わない。
なぜなら彼の興味はカス子の口からこぼれたソースが彼女の谷間に吸い込まれているのに集中しているから。
ついでにポテトがあることにも突っ込まない。だってナーロッパだから。
「金策に奔走しててここ数か月は粗食やってん! あ、でもこれからはカズキはんの奴隷やしいいもん食わせてもらえるんかな?」
そう言って期待の目線を向けるカサンドラ。
「太るぞ?」
それに対して和樹はデリカシー皆無のレスポンスを返す。
そんなんだから今まで童貞なんだよお前は。
「安心してや! うち、いくら食べても栄養は胸に行くタイプやから! そ・れ・に、食べた分運動すれば、ええやろ?」
「どんどん食べていいぞ」
「やったー! 今夜は期待してな♪」
満面の笑みで一旦フォークとナイフを手から離し、自らの両胸をわし掴みにする動作をするカス子。
和樹は鼻が伸びっぱなしだった。
ついでにカサンドラへの好感度もうなぎ上りだった。
(美少女との小気味の良い会話、イイネ!)
明らかに立場の違いから媚を売られているだけなのだが、和樹は一切気にしない。
ちょろいやつである。
「……ほいで、うちはこれからどないすればええのん?」
一通りメインディッシュの肉料理を食べ終え、数日ぶりの満腹となったカス子は、和樹への接待会話もそこそこに改めて今後のことについて聞き始めた。
(そう言えばこいつは基本奴隷契約で縛られてるから俺の不利益になることはできなかったよな? じゃあ信頼できそうだしリチャードさんが言ってたことの裏どりとかいろいろしてみるか)
そこでようやく和樹ものぼせ上がっていたIQが少し戻ってきたのか、ちょっと疑問に思っていた事を聞いてみることにした。
「うん。それをどうするか決めるために、カス……カサンドラからもこの大陸について教えてもらっていいか?」
「あぁー……ご主人様は暗黒大陸出身やったな。どの程度ナーロッパについて知ってはるん?」
「どういう国があるかレベルすら知らない」
カス子は口の周りについた泡を手の甲で拭い、少し真面目な顔つきになった。
「カズキはん、じゃあこの『ナーロッパ大陸』が今どんな状況かも知らへんのん?」
「まったく知らない」
そもそもここは異世界なのだ。
和樹が知っている情報は皆無だった。
「さよけ。じゃー初歩からやな」
そう言うと、カス子はビールジョッキから手を離してピンと人差し指を立てて説明を始めた。




