第16話 自分を売る女(直球)①
文句を言おうとした和樹に、物凄い勢いで縋り付いてきたカサンドラ。
両腕で和樹の右腕をがっちりとホールドし、カサンドラは自慢の胸を押し付けながらぴょんぴょんはねる。
それによって、和樹の腕に波状攻撃のような心地の良い感触が襲ってきていた。
(おっふぅ……!? 柔らかッ!? いや、しっかりしろ俺!)
その感覚で再びIQが初取引の時のように急激に下がりはじめ、カサンドラへの悪感情が吹き飛びかけるが、 微かに残った脳の機能によりカサンドラが初取引で色仕掛けをしてきたことを和樹は思い出す。
「ちょ、離せ! そう何度も引っかかるわけ——」
「謝ろうと思うてたんや~~! あの時はウチもどうかしてて……ほんまや! 信じてや!!」
「……ほんとぅ?」
しかし直前まで静欲に支配されていた和樹である。
涙目のカサンドラの顔を見て一瞬で絆されそうになる。
(ま、まあこれだけ頼んでるわけだし話だけ聞くならアリかな? 美少女だし! むしろあの端金で美少女から好意を変えるなら安いっていうか? 決しておっぱいに釣られたわけじゃないんだもんね!)
「ほんまや! 証拠にとっておきの商品をカズキはんに用意してきたんや!」
「……? でもお前、今何も持ってなくない? 宿とかに置いてるのか?」
カサンドラの言葉に和樹はカサンドラのみなりを見ながら返す。
今のカサンドラは初めて会った時のようなリュックも背負っておらず、手ぶらに見える。
(というか、心なしか以前会った時よりも着ている服がくたびれているような……)
「いいや、ここにあるで!」
「?」
「商品は、ウチ!」
見たところどこにも商品はないので疑問符を浮かべる一樹に、カサンドラは上目遣いでのたまった。
「は!?」
「お詫びに私を特別価格でご提供! なんと今なら銀髪処女美少女のカサンドラちゃんを十年、いや二十年間完全独占!」
「そ、それってもしかして……!」
「せや! 奴隷契約や!」
「じょ、条件は!?」
「もちろん女として自分を売るんや、覚悟はしとる! ヤり放題孕ませ放題! あ、特殊性癖だけは堪忍してな? あ、あと隷属中の私有財産凍結も堪忍してや! ど、どうや!」
なんか色々条件がついているが、和樹はその一部分しか聞こえ……いや、聞いていなかった……。
(ヤり放題孕ませ放題!? 生中エブリデイって……コト!?)
「つまりラブラブチュッチュ生活てこと!?」
「…………せや! なんと今なら! 銀髪処女美少女エルフのカサンドラちゃんと、ラブラブちゅっちゅ生活をプレゼントや!! 一般性癖の範囲ならNGなしや!」
「まじか!」
和樹の確認にカサンドラは一瞬引きつった顔をするが、和樹はそれに気づいていない。
ただカサンドラが同意した部分だけしか聞いていなかった。
美少女エルフ、しかも処女が。
二十年間、ヤり放題、生中エブリデイ!
それは和樹が奴隷商館で希望として出そうとしていた条件そのものだった。
「でもお高いんでしょう?」
「っ!」
お約束のセリフを言う和樹に対して、カサンドラは一瞬肩をびくっと振るわせる。
「お、お値段なんと……チーレム金貨300枚、いや200枚や!!」
チーレム金貨200枚。
奴隷の相場を知らない和樹にとってそれが高いのか安いのかは分からなかった。
わかるのは今日稼いだ金貨の半分ということだけ。
それは性欲に支配された和樹にとっては予算内ということを意味した。
しかも33%オフである。
「買った!」
目の前のこのおっぱいが、褐色銀髪美少女エルフ(しかも巨乳。大事なことなので二度言った)が、文字通り自分の『所有物』になり、好き放題できるという事実、そして半額というお得感で、和樹は即決した。
「ほ、ほんま!? カズキはん!! やっぱなしはイヤやで!?」
和樹の即答にカサンドラは目を丸くする。
「即金で行けるぞ」
「……!? ほ、ほな、善は急げで目の前の奴隷商館でさっさと契約しよか!!」
「お、おう! 行こう行こう!」
和樹の言葉を受けて、カサンドラは和樹の右腕をがっしりとホールドしたまま、ぐいぐいと奴隷商館の方に誘導していく。
その顔はかなりの必死さを感じるのだが、性欲に支配された和樹は胸の感覚に集中していて一切気付いていない。
和樹の全神経は布越しの柔らかい感覚、そしてぴったりと密着されたことによって手が触れているカサンドラの下腹部の感覚に支配されていた。
(うっひょぉぉ!! 奴隷最高! マジ最高!! こんなに必死に俺の奴隷になろうとするとか俺って罪な男!)
和樹の都合よく脳内変換されたご都合世界観では、前回の取引すらカサンドラが和樹に自らを売り込むための前準備とみなしていた。
どう考えても違うだろう。




