第13話 美少女のえっちな奴隷!実在したのか!
「この大陸のことはよく知らないんで、どれくらいの価値があるかはわかんないですけど、この前石鹸の価値が高いと聞いたんで、いろんな種類のを仕入れてきたんですよ」
「おぉ! そりゃいいな!」
「そんなわけで商談のために――」
「――まった。急がなくても商会は逃げねえよ。せっかく暗黒大陸内部までポータル繋げてる商人。まずはこの町をメインの取引先にするメリットを説明してやるよ。飛び石商人なら誰でも飛びつく特大のメリットをな」
「(興味ねえから早く商会紹介してくれよ!)メリット?」
心の中で説明が長い(和樹感覚)リチャードにイラっとしつつ、飛び石商人全員が飛びつくとあっては聞かないわけにもいかないので一応興味がある態をする和樹。
「そもそも、なんでこの港町ニューモンにはお前ら飛び石商人を相手する商会が集まってるか分かるか?」
「わかんないっすね」
そう言いながら和樹が首を横に振ると、リチャードはニヤリと笑って懐から町とその周辺の地図を取りだす。
「ここを見ろ」
「えーっと……」
取り出した地図から町の郊外にある池っぽい場所を指さすリチャード。
そこには現地語に上書きされる形で、
――マナ回復水の泉――
と表示されていた。
「マナ回復水?」
「そうだ。この街の郊外にはな、お前さんら飛び石商人が移転魔法で使い果たしたマナを回復させるのにうってつけの優秀な泉があるんだよ。しかもポーションよりも効果が高い上に無限湧きしていて取り放題。ポーションと違って大体1か月そこらで効果が消えるのが玉に瑕だが、往復1か月のお前らにとっちゃぁそれも問題ねえだろ?」
「あー確かに」
(つまり個人貿易商の輸送費が劇的に下がるポイントがこの街にあるってことか)
「だから、暗黒大陸から来た連中はまず間違いなくこの街に最初に足を踏み入れる。で、ここに飛び石商人が集まるならそこに買取拠点を持った方が効率的だろ? そんな経緯で、商館もこぞってここに集中してるってわけだ」
「なるほど……」
リチャードの説身に納得しつつ和樹は珍しく別のことにも思考を割く。
というのも、和樹は異世界ドアでこちらに来ているためリチャードの説明は何のメリットもなかったからだ。
そしてそれ故にリチャードの説明の裏にも考えが及んだ。
(リチャードの言うことは事実なのだろう。でも、それならボったくられた商人を引き留める必要はない。なにせ輸送コストで圧倒的な強みがあるからだ。それなのにリチャードのような『引き留め役』がいるってことは……他にも同じような街があるのだろう)
「ありがとうございます。それならやっぱりしばらくこの街で取引を続ける方がよさそうですね(あの異世界ドアってPOPポイント変えれるのかな。後で試そうっと)」
表面上納得したようなそぶりを見せつつ、裏で和樹は別の街も選択肢として考え始めていた。
まあ、あれだけ騙されたので当然といえるが。
「で、本題の今回持ってきた商品を捌きたいんで、商会の紹介をお願いできますか? リチャードさん」
「おう、今回はそのカート一杯に石鹸が入ってんだろ? 前回のアホとの取引損を取り戻せる、いい商会を紹介してやる」
「ありがとうございますリチャードさん」
「……ところでカズキ。お前、今回の取引でどれくらい稼ぐ予定だ?」
「石鹸だけに絞って数倍は持ってきてるんで最低チーレム金貨240枚は行きたいですね。だいたいこの前見せてもらった基準価格がそんなもんだったかと思いますし」
「前回と同じ品質の物なら俺が紹介する商館ならチーレム金貨300枚は行くから安心しろ。しかし、そうか……」
和樹の返答にリチャードは少し考えこむ仕草をすると、スッと身を乗り出し、その太い腕を和樹の首の後ろに回した。
「おめぇさん、恋人とかはいるか?」
「(なんだこのおっさん?)いねえっす」
和樹がぶっきらぼうに答えると、リチャードは口角を上げる。
そして、カウンターの奥で仕事をしている受付嬢のクラリスから背を向けるように体制を変えると、和樹の耳元で和樹にとって非常に魅力的な情報を囁いた。
「カズキ、『奴隷』に興味はねえか?」
「!?」
「暗黒大陸じゃあ奴隷が禁止されてるって話だが、ここじゃあそうじゃねえ。お前もこの大陸に来たからには……そういう奴隷、欲しいだろ?」
(ファンタジー世界。ファンタジー世界といえばしれっと終わってる倫理観。そして『そういう』奴隷……もしや!)
和樹は震える声でリチャードに確認する。
「え、えっちなやつですか……!?」
「えっちなやつだ」
和樹の脳内に衝撃が走った。
(奴隷、しかもえっちなやつ。実在したのか!!)
その単語の組み合わせが導き出す答えは、アニメをそこそこ嗜む和樹の脳内に深く刻み込まれていた。
(これは……間違いなく『美少女奴隷』の気配ッ!! これからの不安におびえる奴隷、それに優しくしてからのニコポ! 昼は瀟洒で夜は娼婦(俺専用)! なんなら昼も夜も娼婦(俺専用)! これだ!!)
先ほどまでの「ほかの街を探す云々」は完全に脳内から吹き飛んでいた。
欲望に正直な和樹にとって、すでにそれはどうでもよいことになっていた。
今は美少女奴隷とのめくるめくキャッキャウフフ生活をシミュレーションするべく脳内が総動員されている。
「これは美少女奴隷の気配!(ちょっと2階で詳しい話を聞かせてくれません?)」
「脳内の欲望が駄々漏れだぞ」
「っは!?」
「なんていうか、お前さん本当にわかりやすいやつだな」




