↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染は全員勇者!? 女神さまに勇者の使命を託されたのは一人だけではなかった件!?  作者: 有永 ナギサ
1章2部 勇者の回廊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/20

試練の始まり

 ユウは転生する前、かつて学生だったころのなにげない日常の夢を見ていた。

 放課後の夕暮れに照らされた校舎。帰路に着く者、部活に励む者、わいわい会話を楽しみのんびりする者。みな思い思いの放課後を満喫している。そんな中、仲よくしゃべりながら校舎を出る学生たちをぼんやり眺めてたたずむ、一人の少女がいた。

 一条いちじょうゆうはその少女へいつもみたいに声をかける。

 すると少女はわずらわしそうに一人にしてという雰囲気を出してくるが、これで夕が引き下がらないということを彼女はよく知っていた。そのためやれやれと観念したように夕の隣に並んで、話に付き合ってくれる。一見いやいやしかたなくといった表情でだが、内心どこかうれしそうでもあったという。

 長瀬ながせミユ。幼少からりんとした美人であったが、どこか冷たい印象を覚えずにはいられない少女。そんな彼女は小さいころから人と馴れ合わず、いつも一人ぼっち。そんな孤独な少女を放っておけず、声をかけにいったのがすべての始まり。最初の方は声をかけても煙たがられ、まったく相手にされなかった。しかし小さいころの夕はそれでもめげず、何度も何度も話しかけそばにいようとした。その甲斐あってかミユは観念しだし、ちょっとずつ心を開いてくれるようになったのである。そして夕とミユは幼馴染として今に至るまで、多くの一緒の時間を過ごしてきたのだ。

 この夢の瞬間も、まさにその一ページ。大切な幼馴染との日常である。これから先もずっと続くと思っていた。


「ッ!?」


 心温まる幸せなミユとの一刻。しかし突然光景が切り替わる。


「夕! 夕! しっかりして!」

 

それは血だらけのミユが夕の手をとり、泣きながら必至に呼びかけているという。冷たく無情なあの瞬間の光景であり。

 ユウの夢はそこで終わるのであった。




「少し眠いな。昨日興奮でなかなか寝つけなかったうえに、あの夢のせいで変に早く起きてそれからまた寝つけなかったからな、――ははは……」


 ユウはあくびしながら自嘲気味に笑う。

 今日なぜか突然、転生する前の夢を見たのだ。始めはなつかしくいい感じだったが、最後の方は雲行があやしくなり跳び起きたという。そのせいか目覚めは最悪だったといっていい。


「とはいえそんなこといってる場合じゃないよな。試練の本番なんだ。気合を入れていかないと」


 こぶしをにぎりしめ、前へと進む。

 現在ユウは勇者の回廊かいろうで、フェイたちと一緒に試練を受けている真っ最中だ。

 勇者の回廊内部は、重厚な石造りの巨大な神殿のダンジョンというべきか。あちこちに神秘的な石像やオブジェが立ち並び、複雑な迷路上の通路で構成されている。そしてときに開けた場所に出て、試練のため生み出された魔物が襲ってくるみたいだ。すでに何度目かの敵を倒し、ユウはどんどん奥へと進んでいた。

 ちなみに全員一緒に入ったのだが、みんなバラバラの地点に飛ばされていたという。


「――げっ、敵がこんなにも。さすがにこの数を一人でやるのは一苦労だぞ」」


 勇者の回廊を攻略していると、また開けたフロアにたどり着く。そこには全身鎧が一人でに動くスピリチュアルナイトと呼ばれる敵が。その数ざっと二十体以上はいるだろうか。一対一体はたいして強くないため、軽く倒せるはず。しかしこの数が一斉に押し寄せてくるとなると、やられはしないが少し手を焼きそうだ。


「うわ~、なんかうじゃうじゃいるんだけど~。こんなザコにかまってるヒマないんだけどな~」


 げんなりしていると、アリアもこのフロアへやってきた。


「おっ、アリア、いいところに! ここは協力しよう! 二人で手分けしてやれば、楽に進めるだろ?」

「協力か~。うん? あはは、それいいかも! ぜひ協力しましょう♪」


 アリアは指を鳴らし、なにやら企んでいる笑みを。


「じゃあ、まずはアリアからいこうかな!」


 そしてアリアは剣を抜き、器用にクルクル回しながら前へ。

 スピリチュアルナイトたちは侵入者に気付いたようで、それぞれ剣や槍、斧といった武器を構え迎え撃とうとする。


「あはは、アリアの華麗な剣技! 目に焼き付けてね♪」


 次の瞬間、アリアの姿が消える。

 標的を見失い、おろおろするスピリチュアルナイトたち。

 だがそれもつかの間、先頭にいたスピリチュアルナイトが斬撃に両断され崩れ落ちていった。しかもそれは一体だけでは終わらない。次々に敵は斬り裂かれなすすべもなくやられていく。

 なにが起こっているのか。答えは簡単だ。アリアが猛スピードで疾走し、すれ違いざまに敵を斬っているのである。それはまるで吹き抜ける一陣の風のごとく。あまりのアリアの俊敏さに敵は彼女をとらえきれず、なにが起こっているのかわからないままいつの間にか斬られている状況だ。それほどまでにアリアの速度は速すぎるのだ。


「あはは、遅すぎてあくびがでちゃうね♪」


 アリアはスピリチュアルナイトの集団を抜き、軽やかに着地する。

 彼女が疾走しまだ数秒しかたっていないのにも関わらず、七体のスピリチュアルナイトがすれ違いざまに倒されていたという。


(いつみても速いなアリアは)


 これこそアリアの戦闘スタイル。彼女はユウたち幼馴染メンバーの中で、一番身体能力、俊敏性が高い。そして持ち前の速度を生かしての、高速戦闘を得意としているのだ。もちろん速いだけでなく剣技においてもユウと同等、いやそれ以上かもしれない。そんな彼女ゆえ接近戦においては無類の強さを発揮し、非常に頼もしい前衛なのであった。


「じゃあ、ユウ~、あとはよろしくね~♪」

「おい、なにいってるんだ!? 協力はどうした!?」

「協力でしょ? アリアの代わりにこいつらの相手よっろしく~♪ いや~、ほんとたすかるわ~! ユウが協力してくれるおかげで、アリアが一番乗りを狙えるんだから!」


 アリアは手をひらひらさせて、にひひといたずらっぽく笑いながら一足先に奥へと進んでいった。 


「あのやろ~」

「~~~~!」


 そしてスピリチュアルナイトたちはもはやこれ以上誰も通さないといいたげに、立ちはだかってくる。完全に先に進んだアリアを放って、ユウねらいであった。


「おいおい、おまえらアリアを追わなくていいのかよ!? くそ、あいつ~、おぼえてやがれ!」


 やけくそ気味に剣を持つ手に力を入れ、臨戦態勢を。

 ユウも速度で振り切りたいが、さすがにあそこまで通さない気満々の相手だと難しそうだ。こうなったらやるしかないと覚悟を決める。


「――はぁ……、でもこの数か」

「フレイムブロウ!」


 ため息をついた瞬間、スピリチュアルナイトたちが燃え盛る炎の波に呑まれていく。

 炎は次々と標的を焼き尽くしていき、全員まとめて倒していった。


「数が多いからといって、弱音を吐くとは情けないですね。相手が大軍でくるならまとめて薙ぎ払えばいいだけの話です」


 そしてデューナが悠々とした足取りで、このフロアへやってくる。


「デューナ! ナイス! さすがの魔法の腕だ。おかげで手間がはぶけたよ!」


 デューナの魔法のウデは、ユウたち幼馴染メンバーの中でもずば抜けている。ただ高位魔法使えるだけでなく、自身でそこに術式を組み込みさらに出力を上げているのだ。なので彼女の撃つ魔法は、同じ魔法であったとしても威力が全然違う。勇者を目指していながら、本職の魔法使い顔負けレベルなのであった。


「ふふふ、貸しですよ。アリアは先にいったんですよね? 早く追いかけましょう」


 デューナはクールに髪をかきあげながら笑い、先へと進んでいく。


「はっ、デューナ!? 危ない!?」

「なっ?」


 しかしデューナの目の前に、天井から敵が出現。このフロアの親玉と思わしきゴツくていかにも強そうなスピリチュアルナイトが、突然降ってきたのだ。

 デューナはとっさに剣を抜き、敵が振りかぶる大剣を防ごうとするが。


「はっ!」


 親玉のスピリチュアルナイトの大剣が、完全に振り下ろされることはなかった。

 なぜなら敵はデューナへ攻撃する前に、両断され崩れ落ちていったのだから。そう、助けに入った、ユウの剣の一閃に断ち斬られて。


「お見事です」

「ははは、オレも少しはかっこいいところ見せておかないとな」


 剣をさやにおさめながら、得意げに笑う。


「これで借りはチャラかな?」

「ふふふ、まあ、今の攻撃は対処できましたが、助けられたことは事実。そういうことにしておきましょう」


 そして二人で先に奥に進んだアリアのあとを、追うのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。