謎の少女との出会い
「――あの女の子……」
キレイな夕暮の空の下。フェイたちと別れた帰路の途中、一人の黒髪の少女が広場の女神像の前でたたずんでいるのに気付く。まったく見かけない顔であり、旅人だろうか。
(なんでこんなにも気になってしまうんだ?)
いつもなら素通りしているところだが、今回はその場にたたずんでしまう。そして少女のことを見つめてしまっていた。自分でもよくわからないのだが、目が離せなかったのである。
「アタシになにか用?」
「はっ!?」
ぼーっと見ていたせいか、気付けば少女はユウの目の前に。
そして彼女は怪訝そうにたずねてくる。
「――ごめん、見慣れない子だなって思って」
「今さっきこの里に来たところだから」
「そうだったのか。こんな辺境にある里に、なにしにきたんだ?」
「とくに用事はない。ここなんかおもしろそうな場所だから、旅の合間に立ち寄っただけ」
少女は淡々と答えてくれる。まったくユウに興味がなさそうにだ。
歳はユウと同じくらいだろうか。キレイな長い黒髪の、顔立ちが整った少女である。かなりの美人だが、人を寄せ付けない冷たい雰囲気が出ていたという。
「へー、旅か。キミってもしかして冒険者?」
「――そうだけど、もういい? アタシ長旅で疲れてるから」
少女はさっさと話を切り上げ、去っていこうと。
「待って」
「っ!?」
そんな彼女の手を、思わずつかんで呼び止めてしまっていた。
少女は振り返り、目を丸くしている。
(やばい!? なんか手を取ってしまった……)
これにはやった張本人も驚いていたという。完全に無意識に少女を呼び止めていたのである。
「なに?」
「――ごめん、えっと……」
手を離し、頭をポリポリかきながらなんとか話題を探そうと。
「いいところに来たな。実は明日、勇者の選定というビッグイベントがあるんだ。そこでこの世界を救う勇者が誕生する」
「なんかそうらしいね。里中みんなそわそわしてた」
「ははは、そしてなにを隠そう、このオレも試練を受けるんだ! そして女神さまに力を授けてもらって、正式な勇者になるんだぜ!」
とんと胸板をたたき、不敵に笑ってアピールを。
「アナタが?」
少しは興味を示してくれると思いきや、少女はすっと一歩後ずさりなぜか警戒した様子をみせた。
「どうしたんだ?」
「ううん、なにも。じゃあ、せいぜいがんばって。勇者候補くん」
少女は静かに首を振り、背を向け今度こそ去ろうと。
まだ話していたいが、さすがにこれ以上呼び止めると嫌われかねない。なので見送るしかなかった。
(オレ、どうしたんだ? なんであの子がこんなにも気になってるんだろ? なぜか懐かしいような、――ははは……、そんなはずないのにな……)
自身の感情に首をかしげてしまう。
彼女とは完全に初対面なのに、なぜだか懐かしさに似たなにかを感じてしまったのだ。遠い昔、まるでよく知っていた人物のように。一瞬とある少女の顔がちらつくが、そんなことありえないと自嘲げに笑った。
「――さて、帰るか」
そして気を取り直し、ユウは家に戻るのであった。




