勇者への思い
彼女はユウたちの幼馴染であるデューナ。少しぼさぼさした栗色の髪の、クールっぽい少女である。頭が切れ、知識も豊富な幼馴染メンバーの頭脳担当。ちなみに冷たそうに見えてはいるが、中身はとても仲間想いで甘えん坊な女の子であった。
「デューナちゃんだ、おはよー!」
「みんなここにいたんですね。おはようございます、――ふぁ~」
デューナはフェイのあいさつを返したあと、目をこすりながらあくびを。
「なんだ? デューナもまだ眠いのか?」
「昨日は遅くまで魔法の研究をしていたので。本当はもっと早く寝る予定だったんですが、興が乗ってしまって」
「デューナちゃんは頭がすごくよくて、うらやましいなー。わたしだとあんなに魔法の理解を深め、いじったりできないから」
「魔法の研究は奥が深くておもしろいですよ。慣れてくれば術式をいじって改良、開発、しほうだいで、自分好みの魔法ができますから。魔法へ理解も深められ、実際の戦闘でも大いに役立つ。勇者として大幅な戦力アップですね」
デューナは胸に手を当て、ふふんと不敵に笑う。
ファンタジーの世界でおなじみの魔法は、この世界にも存在していた。自然界にあふれるマナと呼ばれる純粋なエネルギーに方向性を与え、望んだ力を生成する。それがこの世界の魔法の定義である。魔法を行使するときは、自身の生命エネルギーをマナに変換し力を形作っていく流れであった。
「あはは、デューナはさ~、もう勇者目指すの辞めて魔法使いになったほうがいいんじゃない~? 戦闘だって魔法主体で勇者っぽくないし、絶対そっちのほうが合ってるよ~」
「ふふっ、古い考えですね。補助や回復魔法で的確に仲間を援護しつつ、せまりくる敵を強力な攻撃魔法で一掃していく勇者。ド派手で華があってかっこよくないですか?」
「――くっ……、少しね……。でも勇者といったら誰よりも前に出て、剣で敵を斬り伏せていく勇猛果敢な頼れる前衛じゃないとでしょ!」
「そんな脳筋な戦い方でこの先通用しますかね? やはり的確に状況を判断する、頭を使ったスマートな戦い方じゃないと」
アリアの皮肉交じりの言葉を、デューナが軽くいなしていく。
「そんな頭でっかちな戦い方は強大な敵が現れたとき、一気に瓦解しちゃうんじゃない? やっぱり勇者に必要なのは勇猛果敢さ! たとえ勝率が一パーセントであろうとも、その奇跡の数字をつかみとってみせるという気概を常にもっとかないとね~!」
「やれやれ、蛮勇はパーティを危険にさらすだけですよ」
「なによ~、すべてが計算通りにうまくいくと思ったら、大間違いなんだから~!」
「二人とも、ケンカはだめだよ」
フェイがヒートアップする二人の仲裁に入る。
「いけない、いけない。ついムキになってしまいました。どうせワタシが勇者になって、この戦闘スタイルが正しかったことを証明するので」
「ふん、勇者になれたらね~」
「ざんねん。ワタシが勇者になることはもう確定してますから」
「確定してるのはアリアだから! あとで吠えずらかいても知らないんだからね~!」
しかしまだいがみ合う二人。
本気で勇者を目指しているがゆえに、熱くなるのもしかたがないことだろう。
「ははは、こう見ていると、ほんと微笑ましいな」
「うん、まぶしいね」
勇者にあこがれる彼女たちはフェイのいう通りキラキラしていて、目を細めてしまう。
「みんなの思いはわたしが引き継ぎ、勇者としてこの世界を救ってみせるからね……」
フェイはそんなアリアたちを見守りながらも、胸に手を当て瞳を閉じる。そして万感の思いを込めてつぶやいた。それはまるで誓いのように。
(ははは、みんな昔とかわらないな。自分が勇者になるのを疑ってない)
今も昔も勇者を夢見る彼女たちを見て、感慨深くなってしまう。
そんなみんなで勇者に対する想いをはせながら、里長の屋敷に向かうユウたちなのであった。




