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幼馴染は全員勇者!? 女神さまに勇者の使命を託されたのは一人だけではなかった件!?  作者: 有永 ナギサ
1章3部 謎の少女

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気になる少女


 朝方みんなに会いにいこうとしていると、広場の女神像の前に黒髪の少女がいるのを見つける。どうやら彼女はまだ、レセドを去っていなかったみたいだ。


「――キミは」

「――はぁ……、またアナタ?」


 少女はイヤそうな顔を。

 なにやら話しかけられたくなさそうだが、ここは気にせず会話にもっていこうと。


「女神さまに祈りをささげてるのか?」

「まさか、アタシに信仰心なんてない。むしろアンチって言っていいかも」


 少女は首を振り、冷ややかな口調で答える。


「え?」

「女神はこの世界を自分の思い通りに支配する、悪しき存在だと教えられて育ってきたから。それにアタシ個人としても、嫌っているし」

「どうして?」

「かなり記憶があいまいなんだけど、昔すごい理不尽なことがあって本来あるはずだった未来も、大切な人も失った……。だからあんな悲劇的な運命を良しとした世界を、憎んでる。もし神様的な存在がいるなら、ぶん殴ってやりたいほどに……」


 少女は遠い目をしながら、静かにこぶしを震わせた。


「実際のところこの女神は関係なくて、恨むのはお門違いかもしれない。でも同じ全能な存在だし。これが完全な八つ当たりなのはわかってるけど、このどうしようもない感情をぶつけずにはいられない。だからアタシは与えられた役目を……」


 そして少女は天を見上げ、覚悟の決まった瞳でにらみつける。

 だがそれもつかの間、彼女は肩をすくめ大きなため息を。


「――はぁ……、なんでこんな大事なこと、赤の他人に話してるんだろ。ほんとどうかしてる」

「赤の他人とはひどいな」

「それ以外なんでもないでしょ。そうだ。せっかくだから一つ聞かせて。どうしてアナタは勇者なんかになろうと思ったの? あんなの、女神にいいように使われるだけの存在なのに」


 少女は髪をかき上げながら、さぞ不思議そうにたずねてきた。


「たとえそうだったとしても、こうして今の自分、この穏やかな世界が広がっているのは女神さまのおかげだからな。その恩を返すためなら、喜んでいいように使われる所存だ」

「女神の信仰心ってわけ」

「もちろんほかにもいろいろあるぞ。正義感だったり、使命感だったり。とはいえ一番の理由はやっぱりあこがれかな」

「あこがれ?」

「なんたってあの勇者だぞ! 胸躍る熱い冒険を繰り広げながら世界を救うなんて、王道展開にもほどがあるだろ! ロマンだよロマン! かっこよくてしびれるだろ!」


 拳をぐっとにぎりしめながら、勇者へのあこがれを力説する。


「そんな理由で、命を失うかもしれない危険な冒険に出るつもり?」

「ははは、子どものころあこがれた、物語の主人公になれるかもしれないんだぜ! そんなのやるっきゃないだろ! ロマンのためなら、命さえ軽いもんだ!」

(せっかくの二度目の人生なんだ。どうせならおもしろおかしく、謳歌おうかしないとな……)


 早くに終わってしまった人生の分、この世界で思う存分生きると決めているのだ。なので勇者という華々しくも苛烈な人生は、まさにもってこいといってよかった。


「くす、ほんと子どもみたい」

「ははは、子どもでけっこうだ。オレは勇者になって世界を救ってみせる!」

「くす、でもそれぐらいの意気込みの方が、案外勇者としてうまくやっていけるのかも。女神への信仰とか正義感とか、きれいごとばかり振りかざすやつらよりもよっぽど好感がもてる」


 少女はおかしそうにくすくす笑う。


「ほめ言葉として受け取っていいんだよな」

「さあ? そのあまりのバカさ加減に感心してるだけかも」

「ははは、手厳しいな」

「じゃあ、せいぜいがんばって。未来の勇者くん」

「待ってくれ。オレの名前はユウ。キミは?」


 去ろうとする少女を呼び止めてたずねる。


「――ユウ……」


 するとユウの名前をなにやら噛みしめ、目を見開く少女。


「どうした?」

「ううん、なんでもない。本当は名乗るつもりなんてなかったけど、ここであったのもなにかの縁ということで特別に教えてあげる。アタシはリディア」

「リディアか。よろしくな」

「よろしくされても困るんだけど。それじゃあ、今度こそさよなら」

「いや、リディア、もう少し話せないか?」

「アナタちょっとしつこい。馴れ合いたくないと思ってるのが、わからない?」


 リディアはさぞ迷惑そうに文句を口に。

 しかしまだ彼女と話したいユウは、手を合わせて頼み込む。


「そこをなんとかさ」

「そもそもなんでそこまでアタシと話したいの?」

「うーん、自分でもよくわからないんだけど、なんかキミのこと放っておけないというか」


 実際のところ確かな理由はなく、自身の内から湧き出る衝動に近いなにかだといっていい。なのでうまく説明できなかった。


「なにそれ、もしかしてアタシに恋しちゃったとか?」

「そうか、オレはリディアに恋してるのかもしれない。だからこんなにも気になって」

「冗談なんだけど。はずかしいから真に受けるのやめてくれる」


 リディアがテレくさそうに目を伏せる。


「この気持ちを確かめるためにも、もう少し一緒にいさせてくれ。頼む」


 彼女の手を取り、まっすぐな瞳でお願いを。


「ほんと、変な人。でもなんでだろう。この感じ少し懐かしい気が……」


 リディアはおかしそうに口元を緩めたあと、瞳を閉じなにやら思いをはせだす。


「どうした?」

「ううん、なんでもない。付き合ってあげるから、ちゃんとエスコートして」


 リディアは背を向け数歩前へ。そしてくるりと振り返り、少しはしゃぎ気味に微笑んでくる。


「ありがとう。精一杯エスコートさせてもらうよ」


 こうしてリディアともうしばらく一緒に居られることに。


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