↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/31

15 7月30日 ジュディス・ガードナーよりアルヴァ・ガードナーへ

 第十六信

     ジュディス・ガードナーよりアルヴァ・ガードナーへ

                        七月三十日






 お義兄様へ。


 私の願いを聞き届けてくださりありがとうございました。

 その後、お身体の方は大丈夫でしょうか?

 また、悪化されたりしていませんか?

 以前、ドナルドお義兄様がご帰還されたおりにお戻りになった時は、赤い物が出てしまわれましたが、今回はそのような事は無いのでしょうか?

 もし、悪化されてまた赤い物が出ていたりしたら……明らかに私のせいですよね。

 でも、戻って来て頂いて、私はとてもとても嬉しかったです。

 いいえ、私だけでなく、皆が嬉しかったはずです。

 私は普段から身近にいるので分かりますが、お祖母様やお義姉様も驚きながらもとてもとても喜んでいました。

 そして、久し振りに家の中が明るくなるように感じられたのです。


 ただ、戻られた事について、お祖母様から言及が有った時は、私が無理にお願いしてお義兄様にお戻り頂いたことが知れて、お祖母様に叱られるんじゃ無いかと思い緊張していました。

 でも、そこは上手くお義兄様が説明されていて、助かりました。

 結果的にお義兄様が病気を押して、使用人の葬儀にも出て頂いた事に対し、使用人達が大変感激していたのを思いだします。


 私も、今では心がスッカリ落ち着きました。

 一時は気が狂うかと思われた心の不安と恐怖が、お義兄様の顔をみた瞬間、スウーっと消えて無くなっていったのです。

 お義兄様は私に対し、考えすぎだと言われ、頭を優しく撫でててくれましたね。

 変に考えるから、不安が不安を呼ぶのだと。

 その時、私も強く頷いたのを覚えています。

 ……でも、やっぱりダメです。

 お義兄様がいなくなると、どうしても色々な事を考えてしまうのです。


 それに、恥ずかしながら告白するのですが、お義兄様が戻られたら話そう、と思ったいた事をお義兄様に甘えるばかりで全然話すこともできませんでした。

 なので、本来なら先日話すべきだった事を、手紙に書こうと思います。


 エリックが亡くなったのは本当に事故なのでしょうか?

 あの場所で……あのタイミングで亡くなったのは只の悪い偶然なのでしょうか?

 そんな偶然など、本当に有るのでしょうか?


 いいえ、私はそうは思えません。

 では、私の考えるとおりに、エリックが亡くなったのが事故でも偶然でも無いとしたら、一体なにが起こったのでしょうか?

 私には、やっぱり、エリックはあの聖水を取りに行った事が原因で亡くなったのだ、と感じるのです。

 勿論、証拠や確証などはありません、でも、そうおもわざるにはいられないのです。


 では、なぜ聖水を取りに行ったことが原因でエリックは亡くなったのでしょうか?

 ……私が何を考えているかは皆まで言わなくても、聡明なお義兄様にはもうお分かりかと思います。


 ……それは聖水を持ち帰られたら困る者がいるのです。

 つまり、ドナルドお義兄様が何かをした為に、エリックは崖から落ちて亡くなった、きっとそうに違いないのです。


 私がエリックに頼みごとをした時は、勿論辺りに人のいないタイミングを見計らいましたし、声も私達二人にしか聞こえないぐらいひそめておりました。

 では、エリックが誰かに話したのでしょうか?

 それがドナルドお兄様の耳に入ってしまわれたのでしょうか?


 いいえ、違います。

 エリックは例え自分が悪い事にされても、私がナイショにして欲しい、と頼んだことを他人にいう人ではありません。

 でも、エリックが誰にも話さなくとも、ドナルドお義兄様はいつも聞き耳を立てるような仕草をしていましたし、悪霊が取り付いているのならば屋敷内で話したことは、どんなナイショ話も筒抜けになっていてもおかしくありません。

 以前、お義兄様にお出しした手紙にも同じような事を書いたと思います。

 つまり、ドナルドお義兄様は私がエリックに聖水を取りに行くことを頼んだのを知っていたに違いないのです。


 では、それを知ったドナルドお義兄様はどうするのでしょうか?

 そのまま、私達の思う通りにさせてくれるのでしょうか?

 そんな事はありません。

 きっと、きっと何らかの手を打って邪魔をしてくるに違いないのです。


 でも、他の人からしたら、ドナルドお義兄様は異国の戦場で怪我を負った結果、失明しているのだからエリックをどうこうするのは無理だ、と結論付けるかもしれません。

 目の不自由なドナルドお義兄様がひそかにエリックの後を付けて、事故に見せかけて殺害する。

 そんな事は不可能だと、そう考えるでしょう。


 でも、私達はドナルドお義兄様に悪霊が取り付いている可能性が有る事を知っています。

 その悪霊がエリックに何かをしたのではないでしょうか?

 その為に、エリックは命を落としたのではないでしょうか?


 ……勿論、証拠はありません。

 しかし私には、きっとそうに違いないという確信に近い思いを抱いているのです。


 ……ここまで一気に書いた所で、また心から異様な不安が湧き上がってきました。

 お義兄様、私、怖いです。


 エリックの亡くなった責任の一部が私にもあるというのに、私には何ができるのでしょうか?

 今の私には何もできません。

 私がなにか出来るとしたら、お兄様からお知恵を頂いた時だけなのですから。






 一日でも早くお兄様のご病気が治り、この家に戻って来てくれる事を日々願っています。

 貴方の義妹、ジュディス・ガードナー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。