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「月明かりと潮騒の中で」


今日は人生の山場の日


「苦しいときも病める時も、君がいれば乗り越えられる」


誓いの言葉を君に伝えたい僕は


車を飛ばしてわざわざ海まで来たんだ

だけど、ちっとも空は晴れてくれない


どうせ伝えるなら

カンペキなシチュエーションを整えたいと思うのは

僕の意地なのか見栄なのか





「気持ちいい風だね」



君は風になびく髪をかき上げながらそう言うけれど

僕はつい心が入っていない返事をしてしまう

それでも君は、何も言わなかったよね

焦っている僕の胸の内を、ちょっとは気づいているのかな


二人揃って波打ち際を裸足で歩く

夜になってもまだ昼間の熱は残っているから

海の水と濡れた砂の冷たさが心地いい


僕はつないでいる君の手を、少しだけ強く握る

君はつないでいる僕の手を、やさしく握り返す







波の音が静かに響く中で

木々が(ざわ)めく音がする

少しずつ、すこしずつ

黒い雲が風に流されていくのがわかる


夜空の下でもう一度

僕は君の手を強く握り直す


二人の歩みが止まる

波が穏やかに打ち寄せ

足元の砂を(さら)っていく








立ち止まったままの僕に

君が静かに囁く



「ちゃんと言えるまで待つよ」



胸が早鐘を打つ

喉から言葉が出てこない

手が汗をかいているのがわかる








でも、今この時に。

君に伝えたい言葉があるんだ。

本気で伝えたいんだ。








頬を撫でるような風が駆け抜ける

雲が晴れて、満天の星空が現れた


月明かりと潮騒の祝福の中で

ありったけの勇気と、気持ちを込めて

僕は、今こそ君へ「誓いの言葉」を伝えよう








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