「時を運ぶ手紙」
部屋の片づけをしていると、もらった手紙を放り込んでいた箱を見つけた。
メールやSNSがメインとなった今では、もう何年も個人的な手紙のやり取りなんかしていない。切手を貼って…なんてのは、書留ぐらいだろうか?
ふたを開けると、そこにはエアメールや授業中にやり取りした三角に折られた手紙が入っていた。ああ、そういやこのためだけに、ちょっと洒落っ気のあるレターセットも選んだっけ。なんだかとても懐かしい。
そのうちの一つを手に取り、開けてみる。
少し丸っこい字で、「今授業中に書いてるんだよ」って。……いや、そんなこともしてたっけ。見つかったら晒し者にされるかもしれないのに、なかなかチャレンジャーな事を昔はしてたものだ。そんなことも忘れてたよ。
こっちは……おっと…見るんじゃなかった。
これ、フラれたあとの手紙だ。
なんでとってあるんだよ、昔の自分!
しかも内容が「彼にフラれました」って……その「彼」って、こっちフッて付き合った奴だよなあ?
しかもしかも、そいつは俺の友達だった奴だよ。
当時はどんだけ落ち込んだか。
ついでに確かまだ吹っ切れてなかった時だったような。
それなのにこんな手紙書いてきたものだから、すっごく微妙な………というか治りかけのかさぶた剥がされて塩擦り込まれた気分になったっけ……
思い出したらなんか腹立ってきた!……いや、返事書いて慰めたのも思い出したけども!
何やってんだよ昔の自分よ!
……でも、そうだね。
捨てなくて良かったよ。
どんな字で書こうか。
どんな紙に書こうか。
折り方は?
渡し方は?
返事は来るだろうか?
どんな渡され方するかな?
今では考えなくなった事を、一生懸命考えてたあの時が蘇ってくるし、書かれた文字から伝わってくる。モニターに映し出された画一的な文字では、ここまで思い出せたかどうか分からない。
手紙には、その時に込められた想いが、その時に持っていた想いが、そこに残されている気がする。
今になって、その事が何にも代えがたいものだと、改めて思う。
一通りそこにあった手紙に目を通し、少しばかり当時の自分と彼女との思い出に耽った後、僕は箱のふたを閉じた。
拝啓
君は、元気にしているだろうか?
僕は、元気にしているよ。




