ウアルフェ様の救いの手
渡り廊下から校舎に逃げ込んだ恭一達は、そのまま近くにある空き教室へと走った。
中に誰もいないことを確認すると急いで入り込んで鍵を閉めた。
二人は机の下に隠れて息を潜める。
「……」
「……」
遠くで誰かが歩く足音は聞こえるがこちらに近づいてくる足音はないようだ。
「とりあえずは大丈夫かな?」
「そうですね。こちらに近づいてくる気配はないみたいです」
恭一とルキエナは机の下から這い出して立ち上がると、顔を見合わせて安堵のため息をついた。
二人は机を挟んで向かい合わせになるように椅子に座ると、話し合いを始めた。
「なんか校舎に入った途端、追跡がゆるくなったような気がする」
「そうですね。渡り廊下を引き返して体育館に戻っていったようです」
「ということは、操ってる連中を体育館にかき集めて防備を固めてるってことかな?」
「そういうことでしょうね」
「じゃあこのまま体育館に戻ってもさっきみたいに囲まれておしまいだな……」
恭一は机に肘をついて手に顎を乗せて考え込んだ。
ルキエナも項垂れて机を見つめて思案する。
「ふむ、こうなったら奥の手を使うしかあるまい」
「奥の手ですか? ウアルフェ様」
ルキエナがキューブを机の上に置いて尋ねる。
「うむ! こちら側の管理神と話し合ってな。神具を具現化することを許可してもらったのじゃ」
光に投影されたウアルフェが誇らしげに胸を張ってどや顔を見せる。
「神具!? それって大丈夫なんですか!?」
ルキエナが身を乗り出して驚きの声を上げる。
「神具って何だ?」
恭一がウアルフェに尋ねる。
「神力が込められた道具じゃな。並の人間なら到底起こし得ない大いなる力を使うことができる。恭一はルキエナに仕える神官という扱いじゃからな。ルキエナの上司であるワシがお主に授けるというわけじゃ」
「へえ、そりゃすごい。どんなものを授けてくれるんだ?」
恭一は興味津々の顔で続きを促す。
「まあ、ワシの管轄の世界ではないから大したものは授けられんがのう」
「まあ、力が強すぎて扱いきれないってのも困るしな」
「うむ、その通りじゃ。まあ、それほど強力なものでもないしお主でも使いこなせるじゃろう。恭一よ、キューブの前に両手を出せ」
「こうか?」
恭一は言われるままにキューブの前に両手を差し出した。
「うむ! ではいくぞ!」
キューブから強い光があふれて恭一は思わず目を閉じる。光がおさまり、目を開けて両手の上に何か乗っているのを確認する。
「……ハリセン?」
恭一の手の上にハリセンが乗っている。
しっかりとした作りだがほとんど重さがない。
「これで戦えと?」
恭一が顔を引きつらせてウアルフェに尋ねる。
「うむ、それぞ<神威のハリセン>じゃ。かけ声と共に相手の頭を叩くと、傷つけることなく気絶させることができるぞ。かけ声はお主に任せるがのう」
恭一は手に持ったハリセンをじっと見つめた後、ため息をついた。
「わかった、ありがたく使わせてもらう」
「ルキエナよ、恭一の加護を強化しておくように」
「わかりました。ウアルフェ様」
「んじゃあ、再挑戦といきますか」
恭一はハリセンを肩に担ぎ、鍵を開けてルキエナと共に空き教室を出た。
神具の候補は色々あったのですが、ぱっと思い浮かんだら頭から離れずハリセンということに……
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