襲い来る彼女たち
空き教室から廊下に出た恭一は、誰か襲ってこないか周囲を警戒する。
「よし、大丈夫そうだ。先に進もう」
背後にいるルキエナに声をかけ、ハリセンを両手でしっかりと握って構えながら注意深く進みだした。
まだ体育館に近づいていないせいか誰も襲ってこないがその静けさが緊張感を誘う。
「恭一、体に力が入りすぎておるぞ、油断しろとは言わぬが少し力を抜かねば体育館に着くまでに疲れきってしまうぞ」
「ああ、そうだな」
ウアルフェの忠告を受けて恭一が肩の力を抜きつつ保健室の前を通り過ぎようとした時。
ガラガラガラガラ
突然保健室の扉が開き、恭一はさっと左手でルキエナをかばい、右手に持ったハリセンを扉の方に向けて身構えた。
「誰だ?」
空いた扉に向かって誰何する。
メガネをかけた女生徒がゆっくりと出てくる。
「鳥居さん?」
千絵は頭をうつむかせたまま、恭一の方に近づいてくる。
「会長は誰にも渡さない……神楽屋は会長に近づくな……キシャアアアア!!」
奇声をああげて千絵が襲いかかってきた。
「うお、怖!!」
恭一はハリセンで千絵を押しとどめる。
「この!」
力をいれてそのまま千絵を押し返した。
見た目以上に頑丈なハリセンに感心しながら油断なく千絵に向かってハリセンを構える。
「おっかねえ、食われるかと思った。まるで人食い鬼みたいだな」
千絵の変貌ぶりに恭一が戦慄する。
「何をビビっておる。さっさとハリセンで頭をを叩いて気絶させんか」
ウアルフェが歯痒そうに恭一に指示する。
「いや、でも女の子に使うのはちょっと躊躇われるというか」
「先程の話を聞いておらんかったのか? そのハリセンで叩いても相手は傷一つ負わん。思い切りやってしまえ。かけ声を忘れるな?」
「かけ声って何って言えばいいんだ?」
「何でも構わん。頭を叩くのと同時にお主が声を発すれば、ハリセンは神力を発動させる」
「わかった。何でもいいんだな」
恭一に押し返されて尻餅をついていた千絵が立ち上がって再び迫ってきた。
「鳥居さん、ごめんね!」
パーーン!
千絵の攻撃を避け、恭一は謝罪の言葉と共に千絵の頭をハリセンで叩き快音を響かせる。
「会……長……」
千絵はゆっくりと廊下に倒れこみ動かなくなった。
「ふう、なんとか気絶させたか。ホントに怪我とかさせてないよな?」
恭一は念のため千絵の様子を観察する。特に目立った外傷はなく、思い切りハリセンで叩いたにもかかわらず頭にコブの一つもできていなかった。
「うん、ホントに傷一つないな。さすがは神具――」
「神楽屋アアア!!」
千絵の様子に安心してたところに、突然自分の名を呼ばれ声のした方に振り向く。
桃花が恭一に飛びかかってきた。
「うわあ!」
恭一が紙一重で桃花をかわす。
目標を失った桃花がそのまま恭一の横を通り過ぎ、数歩先で立ち止まった
桃花がくるりと恭一の方に振り返る。
「お姉様に近づくな……お姉様に色目を使うなアアア!!」
桃花が再び飛びかかってきた。
恭一のすぐそばで倒れている千絵を巻き込まないように、ハリセンで応戦しながら少しずつ後ろに下がる。
「後藤さん、身軽ですばしっこくてかわすのがやっとだ」
「わかりました! 身体強化の加護を更に強めます」
ルキエナが恭一に向けて右手をかざすと、桃色の光が恭一を包む。
恭一は自分の体が軽くなったように感じた。
目で追うのがやっとだった桃花の動きがゆっくりとしたものに見えてきた。
「よし! これならいける!」
恭一は桃花から少し距離を取ってハリセンを両手で構えた。
「キエエエエエ!!」
桃花が奇声を上げながら身をかがめてて恭一にタックルを仕掛けてくる。
恭一は最小限でかわすと、
「隙有り!」
かけ声と共に桃花の頭めがけてハリセンを振り抜く。
パーンという音と共に桃花の動きが止まり、
「お姉……様……」
桃花は廊下に倒れ伏した。
「ふう、まさか生徒会役員が立て続けに襲ってくるとは……」
恭一が壁に寄りかかってため息を漏らす。
「油断大敵じゃな。恭一よ」
「ウアルフェ、さっきと言ってることが違うぞ?」
「気のせいじゃろう。先を急げ」
「はいはい」
恭一は何を言っても無駄だと頭を左右に振って再び歩き出した。
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