無気力の領域へ
今回短めです。
体育館へ進む途中、恭一達は二年生の教室がある廊下は通り抜けていく。
クラスメイトをはじめとする見知った顔の生徒たちが廊下にうずくまっていたり、一点を見つめて立っていたりしている。
「多田!」
多田が何か言葉を発しながらフラフラと恭一の方へ歩いてくる。
「おい! 多田! しっかりしろ!」
恭一は多田の体を揺さぶって呼びかける。
「どうせ俺はモテない……どうせ俺はモテない……全身タイツがお似合いのマヌケな男……どうせ俺はモテない」
濁った目で何もない空間を見つめたまま「モテない」を繰り返している。
恭一がいくら呼びかけても多田の反応はない。
「多田……」
恭一は多田を苦い顔で見る。
「多田さんは気力だけでなく希望まで奪われてますね。宝玉の力が相当強くなっている証拠です」
ルキエナが悲しそうに多田を見つめて言った。
「コイツそんなに女の子にモテたかったんだな」
恭一は多田に同情しながらそっとその体から手を離す。
多田は「モテない」を繰り返しながら再びフラフラと歩き出した。
多田から離れ、再び廊下を進んでいくと、桃花が糸の切れた操り人形のように座り込んでるのを発見する。
「後藤さんだ」
恭一は桃花にそっと近づき、腰を下ろして桃花に声をかける。
「後藤さん?」
桃花は恭一に反応することなく壁を見続けている。
恭一が更に百華に近寄とうると、桃花が小声で何か言っていることに気づく。
「風香お姉様は私がお嫌い……風香お姉様は私がお嫌い……風香お姉様は私が鬱陶しい……風香お姉様は私がお嫌い……」
桃花はうわ言のように同じ言葉を繰り返している。
「ルキエナ……これってやっぱり」
「ええ……彼女も気力と共に希望を奪われてるようですね」
「体育館へ急がないとな」
「そうですね」
恭一は立ち上がると、もう一度桃花を心配そうに見る。
「まずは宝玉の力を止めましょう」
ルキエナが恭一にそっと寄り添って諭す。
「ああ、そうだな」
恭一はルキエナにうなずくと、体育館への道を急いだ。
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