宝玉の猛威
一方その頃、恭一とルキエナは高校のすぐ近くの大通りの歩道を歩いていた。
「なんとか話を聞いてもらいるといいけどな。涼原さんに」
恭一が青空を見上げながら呟く。
「今日は好印象になる加護をきちんとかけますよ。きっとうまくいくはずです」
ルキエナがガッツポーズする。
「まあ、それでなんとかなるに越したことはないんだけどな」
恭一は昨日の風香の態度を思い出す。
冷ややかでゴミを見るかのようなあの目、果たしてあれでこちらの話を聞いてもらえるのだろうか。
「おっといけない。弱気になっちゃダメだよな」
恭一は頭を左右に振って弱気な気持ちを振り払う。
「よし! 行くか! もたもたしてたら遅刻するしな
」
恭一が正面を向いて歩く速度はやめようとした瞬間、
「!?」
道路の反対側からフラフラと足元をふらつかせて、こちら側に横断してくる女生徒の姿が視界に飛び込んできた。
道路の真ん中に居る彼女に大型トラックがクラクションを鳴らしながら迫ってきている。
彼女はそれに気づかないのか、道路の真ん中を歩き続けている。
「危ない!」
恭一は全速力で女生徒の元に駆け寄ると、女生徒を抱きかかえてそのまま道路の反対側の歩道へ飛び込んだ。
間一髪女生徒の救出に成功し、大型トラックはそのまま走り去っていった。
「あ、危なかったあー!! てかあの距離でよく間に合ったな俺」
恭一は息を切らせながらその言葉を漏らす。
「はい、恭一さんが走り出した瞬間、身体強化の加護をかけましたのから」
「ハハハ、ありがとなルキエナ。命の恩人だわ」
一歩間違えば死んでいたかもしれない状況に、恭一は引きつった顔で笑ってルキエナに感謝した。
「いえ、それよりそちらの方が」
ルキエナが心配そうに女生徒の方を見ている。
「おっとそうだ、ねえ君、大丈夫? ていうかなんでこんな横断歩道でもないトコをフラフラ渡ってたんだ?」
「……授業受けたくない……もう帰りたい……」
ピンクのリボンで縛ったサイドテールの女生徒が虚ろな目でボソボソと呟く。
「ん? 帰りたい?」
女生徒の言葉に恭一が首を傾げていると、ルキエナが深刻な表情で女生徒を見つめる。
「恭一さん……この方は、気力を奪われています」
「それって!?」
ルキエナの言葉に恭一が目を見開く。
「じゃあ、もしかして間に合わなかったってことか!?」
「ええ、そうみたいですね……」
ルキエナが悲痛な顔で恭一に答える。
「どうやらそのようじゃな」
ウアルフェの声が聞こえ、ルキエナの懐にあるキューブが光りだす。
「ウアルフェ様!」
ルキエナはキューブを取り出した。
「ウアルフェ、説明してくれるか?」
「うむ、明涼高校から、宝玉の強い反応が出ておる。急いで向かってくれ」
「ていうかこの子どうしよう?」
恭一は抱きかかえているを見ながら尋ねる。
「そのまま放っておいたら、またフラっと車道に出てしまうかもしれんな」
「あーもう! わかったよ!! この子も連れてく!」
恭一はため息をつき、女生徒を背負った。
「それでは高校へ急ぎましょう!」
「おう! 了解!」
恭一は背中にあたっている女生徒の胸の感触に赤面しながらルキエナの後に続いた。
「これは……」
高校に到着した恭一達は、校内の様子を見て絶句した。
校庭をあてもなくうろつく生徒。
廊下や階段に座り込み、ブツブツと何かを呟く生徒。
壁の一点を見続けている生徒。
廊下を生気のない虚ろな表情のまま歩き回る生徒等、生徒に混じって教師の姿も見える。
まるでホラー映画のワンシーンのような光景が広がっている。
「むう、これは想定よりも事態が悪化しておるな……」
ウアルフェが悔しげな声をあげる。
「ワシのそばでこちら側の管理しんも見ておってな。ここまで事態が悪化してしまった以上、それを収拾させるまでは神力の制限を大幅に解除してくれるらしい」
「いよいよ強引な手段ってやつか。こんな光景見せられたらそれも仕方ないと思う」
恭一が顔をしかめて周囲を見ながら同意する。
「お主ら、力の源へ向かってくれ。どうやら体育館の方に強い反応が出ておる」
「行くぞ。ルキエナ」
「はい! 恭一さん!」
「待て待て。恭一、お主いつまでその娘を背負っている気だ?」
ウアルフェに言われて恭一は女生徒を背負ったままだったことに気づく。
「おっと、忘れてた」
恭一は女生徒をそっと下ろした。
「ここに置いていって大丈夫かな?」
「まあ、問題なかろう」
「よし、それじゃ今度こそ」
恭一が両手で自分の頬を叩いて気合を入れる。
「うむ、気をつけて進むのじゃぞ」
恭一達は体育館へ進み始めた。
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