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お仕事開始

 翌日の放課後、いよいよ今日から恭一の生徒会の助っ人の仕事が始まる。

 意気揚々と恭一が生徒会へ向かう。


 「おい、神楽屋、どこに行くんだ? 出し物の準備は?」


 教室の前の廊下で、多田に呼び止められた。


 「ああ、今日から俺、生徒会の助っ人に行くから」


 「何!? お前選ばれたのか!? どうして? なんかワイロでも贈ったんだな? 教えろ! 一体何を贈ればあの方たちに気に入られる!?」


 「人聞きの悪いことを言うな。昨日、生徒会室に行って申請書に名前を書いたら、会長に『明日からよろしく』って言われただけだ」


 「それだけでどうしたら選ばれるんだ? お前、会長に催眠術とかかけてないよな?」


 「そ、そんなこと、俺が出来るわけないだろ?」


 恭一は多田から顔を反らして反論する。ルキエナの加護の支援があったので、似たような事をしたという後ろめたさを感じて冷や汗が止まらない。


「冗談だって。じゃあ神楽屋、頑張ってこいよ! また明日」


「ああ、多田、また明日」


 恭一は多田に別れを告げると、逃げるように生徒会室へ歩き出した。

 

 生徒会室の前で立ち止まる。


 「いよいよですね」


 ルキエナが声をかけてきた。


 「ああ」


 恭一は一度深呼吸してからドアをノックする。


 「どうぞ」


 中から返事が聞こえたので、静かにドアを開けて入室した。


 「ああ、よく来てくれたね。今日からよろしく頼むよ」


 会長の奈月が笑顔で恭一を迎えた。


 「今日からしばらくこちらで生徒会の皆さんの助っ人をすることになった。二年四組の神楽屋恭一です。どうぞよろしくお願いします」


 緊張の面持ちで恭一が自己紹介し、頭を下げる。


 「ご丁寧にどうも。そんなに緊張しなくても大丈夫だぞ? では改めて、私が生徒会長の水沢奈月だ。こちらこそよろしくな」


 暖かい眼差しで恭一にそう返して、自分の後に続くように隣にいる副会長に視線で合図を送る。


 「生徒会副会長の涼原風香ですわ。ご協力に感謝します」


 風香が優雅に微笑みながら、奈月に続いた。

 風香を見ながら恭一が、


 (彼女がターゲットだ。どうにか仲良くならないとな)


 両手を強く握って気合を入れた。


 「生徒会会計の後藤桃花です」


 ショートボブの小柄の少女が、風香の左手に抱きついて、恭一に警戒する目つきで名前を告げる。


 (なんか警戒されてるな。俺この子に何かしたっけ?)


 恭一は身に覚えがないか記憶を探りながら苦笑いを浮かべた。


 「生徒会書記、鳥居千絵」


 切れ長の目のメガネをかけた少女がそれだけ告げると、もう用はないとばかりに奈月の方に顔を向けた。


 (んー、眼中にないって感じか?参ったな)


 恭一は先行きに不安を感じながら頬を軽く掻いた。


 「あれ? 俺以外の助っ人っていないんですか?」


 「ああ、なるべく交流会の出し物の方に専念してほしくてな。今回は君一人だ。まあ自分で言うのも何だが、今年の生徒会役員は優秀だからな。心配はいらない」


 奈月が誇らしげにその大きな胸を張った。


 「そ、そうですか」


 胸に目が行きそうになるのをこらえながら恭一が返事した。


 「それで、助っ人って何をすればいいんですか?」


 「そうだな、説明しておこう。今月にはもうすぐ交流会が差し迫っているが、来月には生徒総会が控えていてな。そちらの準備も並行してやっておかなければならない。ましてや生徒総会では予算案を通さないといけないから、その準備で各部活動の予算の申請を受け取ったり、それに応じての交渉とか、委員会との会議に出たりしなければならない。ああ、会議の方は君に出てもらうつもりはないから安心してくれていい」


 「なんか大変そうですね」


 「まあね、それに加えて交流会で見せる生徒会の出し物の練習もしないといけないから……まあ一学期のうちで今が一番忙しい時期だね。それで助っ人を募集するわけだ」


 「なるほど、納得です」


 「フフ、わかってくれて何より。そうだな、今日は、まだ交流会の出し物の内容の申請が出てないクラスがあるからそのクラスに打診に行ってくれるか?」


 「わかりました」


 「よし、今日は初日だし神楽屋君の顔も覚えられてないだろうから――風香、彼に付き添ってあげてくれ」


 「ええ、わかりましたわ。それじゃあ神楽屋君行きましょうか」


 「ああ、副会長、よろしく」


 「神楽屋君、これを付けてください」


 風香から緑色の腕章を渡される。

 腕章には<生徒会執行部>と書かれていた。

 生徒会役員をよく見てみると、皆右腕にその腕章をはめている。


 「一時的とはいえ君も生徒会の一員だからな。つけていてくれ」


 奈月が自分のはめている腕章を恭一に見せてながら言う。

 恭一は言われたとおり腕章をつけて、風香と共に生徒会室を出た。



 目的のクラスに向かう途中、「風香が男子生徒と連れ立って歩いている」と周囲から好奇の視線を向けられたが、腕章を見ると「なんだ助っ人か」と納得したのか好奇の視線がいくらかマシになった。

 それでも一部の男子生徒に嫉妬の視線を向けられていたが。

 未提出の申請書も回収し、生徒会室へ戻る途中、


 「ほら、恭一さん、何か話さないと」


  ルキエナに言われて恭一はなにか話題がないかと必死に頭を回転させる。


 「そういえば副会長、公園で会った時、調子が悪いって言ってたけど、その後どう? 回復した?」


 宝玉の影響が進行していないか風香に探りを入れた。


 「ええ、大丈夫ですわ。少しぼーっとする時もありますけど、ご心配をおかけしました」


 「そっか、無理はしないでね。こうして助っ人として来ている以上は俺に出来る事なら手伝うからさ」


 「はい、ありがとうございます。お優しいのですね。神楽屋君って」


 風香は微笑んで答えた。

 恭一はそれを見ながら、


 「宝玉の影響はどうだ? ひどくなってるのか?」


 小声でルキエナに風香の状態を尋ねる。


 「今のところは大丈夫みたいですね。ただ宝玉の反応が近いですから、今も肌身離さずに宝玉を持ってるみたいですね」


 「宝玉を持ち歩いてるってことか」


 「そうなりますね。ただほんのわずかずつですが力が漏れ出ているので油断はできません。できれば早く回収したいですね」


 「それができればこんなまどろっこしいことしてないしな」


 「そうですよね」


 恭一とルキエナは一度風香の後ろ姿を見てから、風香に見つからないに見つめ合ってうなずいた。


 「まあ地道にやっていこう。こうしてチャンスも掴んだし」


 「そうですね」


 先を歩いていた風香が振り返る。


 「神楽屋君どうかしましたの? 何か落としました?」


 「いや、大丈夫。今行くよ」


 恭一は早足で風香に追いつき、再び連れ立って歩き出した。


 

 「ただいま戻りました」


 風香と共に生徒会室に戻ってきた。


 そのまま奈月のもとへいって回収してきた申請書を渡す。


 「お帰り。うん、確かに受け取ったよ。お疲れ様」


 奈月が書類を箱にしまいながら時計をみる。


 「ふむ、少し時間が空いたようだし、交流会の出し物のの練習でもするか。みんな楽器は持ってきているな?」


 「ええ」


 「はい、会長」


 「もちろんです」


 生徒会役員の四人が、生徒会室の隅に置いてあったケースから楽器を取り出す。

 奈月がチェロ、それ以外の三人はバイオリンを持っている。


 「神楽屋君、少し退屈させるかもしれないがそこで聞いていてくれるか?」


 「いえ、退屈なんてとんでもないです」


 「フフ、そんな大層なものじゃないから。それじゃあ……」


 奈月の合図と共に演奏が始まる。

 美しいハーモニーが奏でられ、心が揺さぶられる。

 恭一は思わず涙が出そうになるのをこらえた。


 「素敵な曲ですね」


 ルキエナもうっとりした顔で聞き惚れている。


 「ああ全くその通りだな」


 恭一はルキエナに同意すると目を閉じて静かに聞き入っていた

 やがて演奏が終わると、恭一は4人に対して心から拍手した。


 「素晴らしい演奏でした! これなら本番もバッチリですね」


 「ありがとう、それを聞いて少しだけ安心した」


 奈月は恭一に笑みを浮かべた。

 風香も微笑んでいたが、残りの二人はさも当然という顔をしていた。


 「よし、少し練習もできたし、今日の分の残りの仕事をさっさと片付けてしまおう」


 奈月の号令の元、作業が再開され、日も暮れて暗くなった頃、その日の活動が終わった。


 「はあ、疲れた、生徒会の仕事って大変なんだな」


 「お疲れさまでした。恭一さん」


 ルキエナに労われながら、恭一は校門を出る。


 「ちょっと!」


 後ろから声をかけられ振り向くと、桃花が立っている。


 「あれ? 会計の後藤さんだっけ? 何か用?」


 「ふん! 会長と副会長に認められたからっていい気にならないで下さいよ! 私はアナタの事、認めてませんから!」


 「えーと……」


 桃花の剣幕に恭一がどう返事しようかと迷っていると、


 「とにかく!奈月お姉さまと風香お姉さまには近づかないで下さい!」


 捨て台詞のようにそう言うと桃花は立ち去ってしまった。


 「お、お姉さまって……」

 

 恭一が桃花の後ろ姿を見て呆然としていると、


 「私も……」


 「ひっ!」


 突然後ろからボソっと声をかけられて思わず悲鳴を上げて振り向くと、千絵の顔が恭一の間近にあった。

 「び、びっくりした。書記の鳥居さんか」


 「私も……貴方の事認めてない……会長に近づくならよう容赦しないから……」


 千絵はボソっとそう言うと、そそくさと恭一の元を離れた。


 「はあ……前途多難だなこりゃあ」


 「が、頑張りましょう!私の加護もありますから」


 恭一はルキエナに励まされながらトボトボと家に帰った。


お読みいただきありがとうございます。

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