副会長に近づく方法
ロリ女神ことウアルフェ様が久々に御登場です。
公園で風香を見送った恭一とルキエナは噴水広場から少し離れた場所にある東屋で、設置されている椅子に腰掛けて、今後の方針を話し合っていた。
「つまり……副会長が宝玉を拾ってたってことか?」
「ええ、そういうことですね。しかし宝玉を拾われてしまっている以上、その人から強引な手段を使って奪うことはできません……こちらの世界の神様との約束ですし」
「じゃあ、涼原さんの前に出てって『君が持ってる宝玉をこちらに渡してくれ』って言うのか? でもなあ……いきなりそんなこと頼めるほど彼女と親しいわけじゃないからな。まともに話を聞いてくれるかどうか。むしろ警戒されるんじゃないか?」
恭一はそう言い放つと、両手を頭の後ろに組んで東屋の柱に寄りかかる。
「そうでしょうね。少なくとも恭一さんの話を聞いてもらえるくらいに、風香さんと親しくなってもらうしかないんじゃないですか?」
「とは言ってもなあ……というかそんな悠長にやってて大丈夫なのか? 危険なんだよな?その宝玉持ってると」
「ええ……でも昨晩ウアルフェ様がおっしゃってましたが、私とウアルフェ様で一度力を抑えてますし、私を無気力化させることで宝玉自体かなりの力を消費してるはずですから、すぐに事態が悪化するということはないでしょう。いつまでもそのままというわけにはいきませんけれど」
「そうか、まあ、焦っても強引な手段に出れないんだしな」
「ええ、どうしましょうか……」
恭一が腕を組んで考え込む。
「んー……クラスが違うからなかなか会える機会がないんだよな……涼原さんは副会長……生徒会か……生徒会の仕事を手伝えば――ああ! 交流会!」
「交流会……ですか?」
「ああ! 交流会の準備の助っ人を生徒会が募集してたはずだ」
交流会。それは明涼高校で五月に催される行事だ。
一年生と二年生は二クラスずつ合同、三年生は有志を募って集まり、出し物を披露し合う。出し物の内容は、合唱、合奏、演劇など開催される体育館の舞台でできるものであれば、何でもいいとされている。
とは言っても合唱や演劇といった無難なものが選ばれるのがほとんどで、たまに三年生の有志のお調子者たちがコントや漫才をやるくらいのものだ。
ちなみに恭一のクラスである四組と三組の合同は、演劇をやることになっている。
学年が変わり、クラス替えをしたクラスで出し物の準備をし行事を乗り切らせることでクラスの結束を深めさせる事、また、上級生の出し物を見せることで、新入生に、より高校に親しみを持ってもらう事を目的とした行事である。
この行事を率先して盛り上げるために学年とは別に、生徒会枠が用意されていて生徒会役員で出し物をするのが出し物をするのが恒例となっている。
そうすると交流会の準備を含めた生徒会の業務の他に、交流会の出し物の準備や練習をしなければならず、そのためこの時期生徒会は非常に忙しい。
それを軽減させるため、交流会前の準備期間中、生徒会はクラス合同の出し物の準備で比較的手の空いている生徒を助っ人に呼んでもいいことになっているのだ。
「なるほど、生徒会の助っ人に立候補するんですね?」
「ああ、その通りだ」
「それなら副会長さんとも仲良くなるチャンスも増えるかもしれませんね」
ルキエナの表情が少し明るくなった。
それに対し、恭一の方は心配そうな顔をしている。
「ただなあ……助っ人に参加する人が増えて過ぎて、肝心の出し物の準備がおろそかになるといけないから、募集枠に上限がかかってるはずだ。しかも今の生徒会の会長と副会長って人気が絶大だからな。ライバルも多いだろうし、うまく助っ人に選ばれるかどうか……」
恭一が弱音を吐いてうつむいていると、ルキエナの持っているキューブが点滅し始める。ウアルフェからの交信のようだ。
「おお、少し手が空いたから様子を見に来たぞ。どうじゃ、うまくいってるかの?」
ウアルフェに二人がこれまでの経緯を説明する。
「なんと! 誰かに拾われておったとは!! むう、そうなると無理やり奪うわけにはいかんからのう。それで? その者との交渉に勝算はあるのか?」
恭一は副会長に接近するために、生徒会の助っ人に応募しようとしている事を話す。
「ふむ、しかしライバルが多かった場合落とされることもあるのじゃろう?」
「ああ、しかもその年の生徒会の方針によっては上限が減らされることもあるしな。なるべく出し物の準備に専念させたいとかそんな理由で」
「うーむ、そうなるとますます狭き門じゃのう……本当に大丈夫か?」
「まあ、やるだけやってみるけど結果はそれこそ『神のみぞ知る』って感じか?」
「フハハ、神の前でよくもまあそのようなことを言えたものじゃな!」
ウアルフェは両手を腰に当てて高笑いした。
「フム、そうじゃのう……」
ウアルフェがなにか考え込んでいる。
「ルキエナよ」
「はい、ウアルフェ様」
ウアルフェとルキエナがじっと黙って見つめ合っている。
不審に思った恭一が二人に声をかけた。
「おい、どうしたんだよさっきから二人で見つめ合って」
「ん? いやちょっと思いついた事があってな」
「なにを思いついたんだ?」
「内緒じゃ、内緒テレパシーというやつじゃ」
「なんだよ! 内緒テレパシーって! 内緒話なら聞いたことあるけど!」
「フフフ……」
「なんだよ! 教えてくれよ! てか神様の悪巧みって洒落にならなさそうで超不安なんだが!?」
「安心せい。悪いことになならん。そもそもわしらはこちらの世界の人間には危害を加えん約束なんじゃぞ?」
「そ、そうだけどさ……」
恭一が探るようにウアルフェを見つめるが、ウアルフェはニヤニヤと笑って答えてくれそうにない。
「ふむ、それじゃあワシはこれで交信を切るぞ。二人共、無理をせん程度に励めよ」
「はい、ウアルフェ様」
「あ、おい! 待てって!」
キューブの光が消え、交信が終わった。
「全く、何を企んでるんだか。とりあえず目標も決まったし家に帰るか」
「そうですね」
恭一が東屋にある椅子から立ち上がって周りをみると、近くにいた人たちが恭一を見てヒソヒソ話している。
「ああ、やばい。ケータイ耳にあてて話すの忘れてた。また独り言を喋ってるように思われてるのか?」
恭一は逃げるように公園を出た。
公園からの帰り、コンビニへ昼食の弁当を買いに立ち寄ると、
「げっ! 見晴!」
店内に見晴がいた。
「あっ、キョー」
「な、なあ……本当に俺のこと尾行してないよな?」
「違うって! ランニングして喉が渇いたから飲み物かいに立ち寄っただけよ! アンタこそ自意識過剰なんじゃないの!?」
凄い剣幕で見晴が怒る。
「そっか、悪かった」
恭一は気圧されて謝罪する。
「ふん、それじゃアタシ帰るけどアンタこそついてこないでよね!」
見晴が肩を怒らせて早歩きで立ち去る。
「ほ、ほんとにつきまとわれてないよな?」
「さ、さあ?」
公園に来たとき同様、二人は言い知れぬ不安を感じながら見晴を見送った後、自分たちの昼食を買って帰路についた。
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