ー31ー
【サユリ】を振り抜いた………その瞬間、赤黒い槍状の炎がスノードラゴンへ放たれた。
真っ直ぐにスノードラゴン向かい、腹に着弾。
ードガガガガガガガッ
ーキュオオオオオオッ
まるでドリルで掘削するかの様な音とスノードラゴンの悲鳴の様な鳴き声。
「あれは………何だ!?。あやつは火魔法しか使えんはず……しかも[ファイア]しか教えておらん!!。」
ダグラスは大助が放った一撃を見て驚くしかなかった。
異世界から来て、魔法はおろか、剣さえ使った事のない大助が、まさか魔法剣を………しかも自分の知らない魔法を使うとは思いもしなかったのだ。
「あれは……[コクエン]。あの魔法はもう使える者が絶え、失われたはず……それをどうしてダイが……。」
マルタの治癒魔法で、どうにか回復したクロウは大助を見ながら呟くように言った。
「マルタ、[サンクチュアリ]でクロウさんを守って。スノードラゴンは、俺と師匠でどうにかするから……いいですよね?、師匠。」
大助はスノードラゴンを睨み付けたまま、マルタに指示を出し、ダグラスを誘った。
「……ふん。お主に言われるまでもないわ。」
ダグラスは大助の右に立ち言った。
「あっ……そうだ。終わったら、その身体の秘密、教えて下さいよ?。」
「……いいだろう。では、そろそろ行くかねぇ。」
ーギァオオオオオオオオッ
目の前ではスノードラゴンが、先程の攻撃を受け、怒り狂っている。
両目でしっかりと大助を見据えると、勢いよく突っ込んできた。
「………[ウォーター・ウォール]。」
ダグラスの放った水の壁に激突。
突き破りはしたが、勢いは落ちている。
「もっと、攻撃力高い魔法使ってよ。」
「相性が悪いんだから仕方ない。お主の番だぞ。」
大助がそう言うと、ダグラスは黒い棒を構えで答えた。
「番て……、じゃ、行ってきます。」
大助は体勢を低くすると、スノードラゴンに向かって行った。
スノードラゴンが口を開け大助に噛みつこうとした……が、大助は必死に横に避け、スノードラゴンの首に切りかかった。
ーザシュッ
ーギァオオオオオッ
スライムを切った時とは感触が違い、大助は思わず顔をしかめた。
しかし、直ぐにその場から離れた。
スノードラゴンは首から血を流し、暴れている。
傷は深くはないが、大量に血が吹き出でいる。
(ドラゴンにも頸動脈ってあるんだなぁ)
大助はそんな事を思いながら、スノードラゴンを見た。
「うむ……、じゃあわしも行くかねぇ。」
ダグラスはそう呟き、暴れているスノードラゴンに跳躍した。
「……[ウォーター・スラッシュ]!!。」
黒い棒を振り抜き、スノードラゴンの首………大助が切り裂いた傷に向けて無数の水の刃を打つダグラス。
傷はより深くなり、出血量は目に見えて増えた。
ーグォオオオオオオオオッ
スノードラゴンは堪らず、上空に逃げる。
「逃げんじゃねぇよ。」
【サユリ】を鞘に仕舞い、またも居合いの構えでスノードラゴンを睨む大助は、低い声でそう言うと空に向けて【サユリ】を振り抜いた。
スノードラゴンの翼に巨大な[コクエン]が襲いかかる。
ードドドドドドドドッ
ーギャアアアアアアアアッ………ドシィィィィィン
[コクエン]は大きな音をたて翼を貫き、スノードラゴンは悲鳴のような鳴き声をあげ、落下した。
地に倒れ、血を撒き散らしながらもがくスノードラゴン。
「今、楽にして……あれっ?。」
スノードラゴンに止めを刺そうと近寄ろうとした大助は、不意に立ち眩みを起こし、その場に座り込んでしまった。
「あれっ?、何か……クラクラする……。」
大助は、一生懸命立とうとしたが、身体に力が入らない。
「魔力切れだねぇ……。」
大助の傍まで来たダグラスはそう言って大助を引き上げると自分の肩を貸して立たせた。
「慣れもしない魔法を立て続けに使ったんだから、仕方がないねぇ。」
ダグラスは言葉を続けながらスノードラゴンの方を見た。
辺りを血で染めて、もがいていたスノードラゴンだったが、徐々に動きが悪くなってきている。
「この分じゃ、そのうち死ぬ。………どうするかねぇ?。」
ダグラスはそう言いながら、意地悪そうな目で大助を見た。
「………………。」
大助はスノードラゴンを見た。
最早もがく事も出来ないのか、荒く呼吸している事しかわからない。
「……師匠。俺を近くまで連れてってくれ。」
ダグラスは大助の言葉にニヤリとしながら、何も言わずに大助をスノードラゴンの傍まで連れて行った。
ーギャァ………ギャァ………
弱々しい鳴き声で地に伏せているスノードラゴン。
自らの血で身体を真っ赤に染め、目を閉じたまま最期の時を待っていた。
「師匠……ちょっとだけ離れて下さい。………【サユリ】、頼むよ?。」
【任せてよ♪】
目の前に自分を殺そうとした者がいる………声と気配でわかった。
しかし、もう目を開ける力も残ってない。
スノードラゴンは覚悟した。
目をキツく閉じ、最期の衝撃に備えた。
ーシュッ
ーパリンッ
しかし、その衝撃は小さく、痛みもなかった。
「マルタ!!、急いで回復魔法を!!!………頼むよぉ………。」
ードサッ
「ダイ様ッ!!。………仕方ないッスね!!………[ヒール・オール]ッ!!。」
暖かく心地よい何かが身体中を包み込む感覚がした。
首の痛みがゆっくりと消えていく。
何が起きたのかわからなかった。
ただ、先程までの怠さが軽減され、少しだが力が戻ったようだ。
ゆっくりと目を開けたスノードラゴンが最初に見たのは、自分を殺そうとした者が倒れている姿だった。
そして、その者の手には自分の額に有った物………月石が握られていたのだった。




