ー30ー
あれから2時間位経過した。
大助達は中腹の、少し拓けた場所にたどり着いた。
道中は静かだっだ。
スノースライムや額に角がある一角ウサギ、白い狼……ホワイトウルフなどが襲っては来たが、クロウ1人で全て倒し、大助は離れた場所からマルタとダグラスと一緒に見ているだけだった。
太刀はあれから何の音もたてず、静かに大助の腰に下がっていた。
「………そろそろスノードラゴンが現れても良さそうなのですが…。」
クロウは剣に付いた一角ウサギの血を振り払いながら言った。
「ここらで少し休憩しようかのう。」
「それがいいッス!!。腹が減っては何とやらって言うッス!!。早速準備するッス!!。」
ダグラスの言葉にマルタはピョンピョン跳ねながら同意し、背中のリュックを下ろし準備を始めた。
サンドイッチとお茶。
それが大助の手にも渡される。
「ダイ様!!、マルタ特製サンドイッチとお茶ッス!!。どうぞッス!!。」
「………ありがとう。」
大助は下を向いたまま受け取ると、3人から離れて丁度いいサイズの石に座った。
腰から太刀を下ろし傍らに置く。
相変わらず太刀は静かなままだ。
(………なんだよ………そんなトコまで似なくていいのに………)
大助はそう思いながらサンドイッチを食べ始めた。
キュウリ、レタス、ニンジンに似たものが挟んである。
味はそのものの味だった。
「何じゃ、ニンジンが入っとるじゃないか!!。」
ダグラスは一口食べて吐き出した。
「当たり前ッス!!。ニンジン無しのサンドイッチなんて有り得ないッス!!。」
マルタはそう言って、ピョンピョン跳ねながらパクパクとサンドイッチを食べている。
「ダグラス、行儀が悪いですよ。ちゃんと食べなさい。マルタは、食べる時は跳ねるのを止めなさい。」
クロウはそう言いながらお茶を飲んでいた。
(………皆……何で何も言わないんだろ……)
大助は3人を見ながら思った。
武器があるのに戦わない自分。
あの時、3人に聞こえたはずの言葉。
しかし、何も言って来なかった。
クロウでさえ。
「………あ、あのっ!!。」
大助は耐えられなくなって、立ち上がり、3人に話しかけた。
「………何じゃ?。」
ダグラスが答える。
「……あの、皆、何で………「しょうがないからです。」、えっ?。」
大助の言葉を遮るようにクロウは言った。
「貴方は違う世界から来た。貴方の世界では戦う事が無いのでしょう?。いつも何かに守られていたのでしょうね。」
クロウは言った。
「急に覚悟出来る訳がない。だから、何か言った所で、しょうがないのです。」
「あ………。」
大助は絶句した。
3人は、自分の事を分かってくれて、何も言わないでいてくれたのだと理解した。
「それに………じゃ。」
ダグラスはそう言いながら毛布を脱ぎ、何処から出したのか2メートル位の長さの黒い棒を右手に構えた。
「えっ???。」
驚く大助にマルタが杖を構えながら続けた。
「覚悟がない奴が戦っても死ぬだけッス!!。巻き添えはゴメンッス!!。」
「だから、この場から離れなさい………行きますっ!!。」
クロウはそう言うと、いつの間にか抜いた剣を構えたまま、大助の横を駆け抜けた。
ダグラスとマルタも続く。
「えっ!?、あのっ???。」
ーギャオオオオオッ
慌てる大助の背後で聞いた事もない声がした。
恐る恐る大助が振り替えると、そこには………。
ーギャオオオオオオオオッ
宙に浮かんでいる魔物………スノードラゴンがいたのだった。
「………う、うわぁぁぁぁっ!!。」
大助はその場で腰を抜かした。
体長凡そ4メートル。
大きな翼と長い尾。
青白い皮膚に鋭そうな牙と爪。
黄色い両目の間に白い塊がある。
………スノードラゴンだ。
「無理だよっ!!、こんなの!!!。」
大助は、スノードラゴンに向かって行く3人に叫んだ。
「無理だと思うなら引っ込んどれっ!!。」
ダグラスはそう言うと何か呪文のようなものを唱えた。
すると、ダグラスの全身が眩しく光り、ムクムクと大きくなった。
身長2メートル程、手足が伸び、頭には青い髪が………もう人間にしか見えない。
が、背中の甲羅がダグラスである事を示していた。
「変わり過ぎだろっ!!。」
大助が思わずツッコんでしまった程の変わりようだ。
「うっさいわっ!!。黙っとれっ!!。チェストォォォッ!!!。」
ダグラスは大助に顔を向けずに叫ぶと、スノードラゴンに向かって跳躍した。
真っ直ぐにスノードラゴンの腹に向かい黒い棒を突き出す。
スノードラゴンに刺さる瞬間、 黒い棒から水色の刃が出て、スノードラゴンの腹に刺さった。
ーギャオオオオオオオオッ
スノードラゴンは腹に刺さった棒を気にも留めず、口から白いブレスを吐き出した。
ダグラスをブレスが襲う。
「[ライト・ウォール]!!。」
寸前で光の壁がブレスを防いだ。
マルタの光魔法だ。
「ダイ様ッ!!、邪魔だからサッサと退くッス!!。」
「こ、腰が抜けて動けないよっ!!。」
「チッ!!。」
マルタは、大助の悲鳴のような声に舌打ちすると、大助に向けて呪文を放った。
「[サンクチュアリ]ッ!!。」
大助を中心に直径1メートル程の光の半球が現れた。
「そこから1歩も出ないでくれッス!!。」
マルタは怒鳴りながら次の呪文を唱え始めた。
その間も、クロウとダグラスはスノードラゴンに攻撃を繰り返している。
スノードラゴンは奇声をあげながら長い尾を振るい、ブレスを吐き続けている。
2人はスノードラゴンの攻撃を掻い潜り、時に掠りながら、それでも剣を振るい、黒い棒で突きながら攻撃の手を緩めない。
「何で………「死にたくないからですっ!!。」……えっ。」
大助の呟きにクロウが答えた。
「私は死にたくありません!!。生きて魔王様の元へ帰るんです!!。その為に必要なら、何人でも殺しますっ!!。」
クロウはそう吐き出すと、剣に魔力を流した。
剣がスパークし始める。
「ダグラスっ!!、退きなさいっ!!。……[ブラストソード]っ!!。」
クロウは剣を大きく振りかぶると、一気に立てに振り切った。
その瞬間、雷にも似た身長の倍の大きさの光が弓形にスノードラゴンへ向かっていく。
ーズドドドドドドドドドッ
爆音をあげスノードラゴンに直撃した。
ーグォオオオオオオオオオオッ
スノードラゴンの悲鳴のような声。
が、まだ宙を舞いながらブレスを吐いてくる。
「ダメージが少ないッス!!。」
「わかっとるわっ!!、そんな事はっ!!。」
マルタの悲鳴にダグラスが怒鳴る。
クロウは一旦距離を置くと、再度スノードラゴンに飛びかかる。
「生きて……帰る為……。」
「お主もそうだろうがっ!!、ダイっ!!。」
ダグラスの叫びに大助はハッとした。
(生きて……帰る……家族の所へ……その為に死ねない……だから……)
大助は震える足を叩いた。
そして俯きながらゆっくりと立ち上がる 。
「ぎゃあっ!!。」
「クロウ様ッ!!、[ヒール]ッ!!。」
スノードラゴンの尾が腕に当たり、飛ばされたクロウにマルタが駆け寄り回復魔法をかける。
スノードラゴンから2人を庇うようにダグラスが立ち塞がる。
(……帰りたい……帰りたい……絶対に死にたくない……皆……そうなんだ……)
ゆっくりと1歩ずつ歩き始める大助。
「[ウォータ・ジャベリン]っ!!。」
ダグラスが水の槍をスノードラゴンへ突き出す。
が、左右の翼で防がれる。
「チッ!!まだかっ!!マルタっ!!。」
「今やってるッス!!。!?、ダイ様ッ!!、何してるッス!!。」
ダグラスの問いに答えたマルタの目の端に大助が見えた。
(………生きて……帰るんだ………皆で………だから……)
大助はダグラスの前に立つと、顔をあげスノードラゴンを睨んで右手を横に伸ばした。。
「だから、【サユリ】………力を貸せっ!!。来いっ!!。」
【了解っ!!】
大助の声と共に右手に太刀【サユリ】が現れた。
「お主………良いのか?。」
ダグラスの声に大助は振り向かずに答えた。
「俺は生きて家族の所へ帰りたい。皆も帰りたい。それを邪魔する奴がいるなら………。」
大助は【サユリ】を腰に下げ構えた………居合いの構えだ。
「そんな奴、ぶっ殺してやるっ!!。」
そう叫ぶと、一気に【サユリ】を振り抜いた。




