光りの矢
ユリシア視点
ユリシアは絶望した。
友が愛した姫そっくりの少年には魔力の気配が全く無かった。
フェアネス皇国立魔法学院の入学試験は魔力を出せるかどうかのみ。
かつて大陸最強を誇ったフェアネス皇国は今は王宮と学院を残すだけ。
それでも国として存続できるのは、大国たちに挟まれた交通の中心にあり、留学の名を借りた、王家の人質を預かり、きわめて危ない国々のパワーバランスを保っているという一点にある。
他国に侵攻するにはフェアネス皇国を通らねばならず、そんなことをすれば、そこに留学生を出している国々が黙っていない、という単純な理屈で出来ている。
そのようなわけで、しかるべき人間の推薦があれば誰でも入学は許可され、入学後の費用その他一切は、周辺各国が負担金として出しているので無料である。
今年の入学試験は、偉大なる魔道師マーリンの名を継ぐものが受けるということで、ほぼ全ての講師陣が集まってきており、学院長であるユリシアが列席していても誰もが不自然に思わなかった。
何人かの試技のあと、クリスが的の前に進み出た。
他の受験生よりかなり距離をとっている。
同じく魔法の気配を探っていた講師たちがざわめきだす。
ユリシアは神に祈った ”奇跡を!”
そしてそれが起こった。
クリスがすっと左足を前にして構えると、丹田に魔力の炎が点火した。
いつの間に左手に弓を持ったのだろうか、いやあれは魔力で創りだされている。
両手が高く掲げられると弓と右手の間に光りの矢が現れた。
そしてそれはいっぱいに引き絞られ、放たれる。
少年がすっと足を閉じると、立ち上っていた美しい魔力の炎は余韻を残してふっと消えた。
的が消滅したことには誰も気が付かなかった。
みんなただ一礼した少年のみを見ていた。
静まり返った講師席から一人の男が飛び降りた。
「俺が試してやる。」
クリスの弓の長さは半弓より短いショートボウです。
いずれ和弓を持たせたい。
弓道8節、きちんと描ききれないこと、ご容赦ください。




