ぼくは笑顔で手を振った
その日、ぼくは近くで一番高い木の天辺に登ってた。
ここなら街道が見渡せて、お父さん達の隊商を真っ先に見つけることが出来る。
何回か上ったり降りたりを繰り返したあと、お昼前に4台の馬車と馬に乗った人たちが街道を野端に見えた。
ハムに仕上げる時間が無かったけど、ぼくが獲った猪を食べてもらうんだ。
ぼくはシチューの大なべに火を入れた。
やがて、ここからの視界に入った隊商から2頭の馬が飛び出してくる。
白と黒の2頭の馬は、競い合うようにようにぼくの前に来て、ふわっと飛び降りた塊がぼくを抱きしめた。
「クリス元気にしてた?」
お母さん、くるしぃょ。
「そんなに抱きしめたらクリスが苦しがってるじゃないか。」
馬をつないでいたお父さんに言われてやっと腕の力が緩んだ。
「おかえりなさい。」
「ただいま。」「ただいまクリス。」
「おじいちゃんはどこ?」
お母さんがぼくを抱きしめたまま聞いた。
ぼくは下を向いてお墓を指差した。
おじいちゃんのためにお祈りしてたら、隣の空き地に隊商の人たちが着いたので、湿っぽいことにはならなかった。
馬達の世話とか、することがいっぱいあるから。
お昼ごはんも食べなくっちゃね。
猪のシチューは大評判で、隊商のグレンさんに猪の狩りについていろいろ聞かれた。
その日、初めてお父さんに剣の稽古をつけてもらったんだ。
次の日の朝はもう出発の準備でみんな早かった。
お母さんに、「何か、言い残したことある?」って聞かれたけど、
「ぼくも一緒に連れて行って。」は、どうしても言えなかった。
みんなが出発したとき、ぼくは当たり前のように笑顔で手を振っていた。
また次の日、お昼まで寝ていたぼくは、わざわざ手紙を持ってきてくれた村長さんにたたき起こされた。
【フェアネス皇国立魔法学院入学案内書】
入学試験は8月25日、大変だ急がなくっちゃ。
おじいちゃんが最期に、知り合いの学院長に手紙を出してくれたらしい。
別のある場所
「陛下、殿下を我がユスラエル公爵家にお迎えしたいのですが。」
「グレンジャー、あれには聖痕が無い。魔法が使えなくていいのか?王家の者として何も持っていなくてよいのか?」
「猪型の魔獣ダイナストボアを屠る力があれば充分でございます。我が家は尚武の家系でございますから。」
「なんと・・・・」
お父さん
黒い眼、黒い髪
スマートだけど意外とがっちり型。
隊商の長、剣の名手
お母さん
着やせするタイプ
栗色の髪、ブラウンの眼
お父さんと同じ隊商、治癒魔法と馬術の名手
ぼく
顔はお母さん似でよく女の子と間違えられる。
お父さんと同じ黒い眼黒い髪
狩りの名手と本人は思ってる