第1話 救われた命の代償
“ガキンッ!!”
最後の力を振り絞って剣を振る。ギリギリで何とか凌いだ。
「キィー、グワーッ」
再びコカトリスの巨大な嘴が目の前に迫る。
でも・・・
(さすがにもう無理ね)
体が動かない。気力もそして体力も限界だ。
まさに精も根も尽きた。
Bランク上位の魔獣コカトリスに追い詰められている。
もう後は壁で下がれない。
(あーあ、ホントに短い人生だったな)
観念して目をつぶった。
(いい男に一度も出会えずじまい、か)
「ふふっ」
あと数秒で死ぬ時に思うことがこれ、情けなくて涙を流しながら笑ってしまった。
「オーバーブースト!!」
(ほえ?)
気持ちと体の疲れが明らかに回復していく。いや、力があふれ出してきている。
行けるか!
「とわーあ」
迫りくるコカトリスをかわし一気に剣で切りかかる。
体が異常に軽い。
“ずばっ!”
あれだけやってダメだったコカトリスの首を一振りで切り落とした。
「はあはあ。やったわ。でも何が起きたの?」
体から力が抜けていく。
それと同時にすさまじい満足感と、突き抜けるような快感が体を支配する。
もう自分の足だけでは身体を支えられない。
ひざまずいて剣で体を支えていると、見知らぬ男が近づいてきた。
「危なかったな。コカトリスか、よくやったな」
ちょっと渋めのおじさん。だれ?
「あなたが助けてくれたの?」
「通りがかりの魔術師だ。まあ、俺1人だけでは戦闘はできんがな」
魔術師?
「さっき、急に力が湧いてきたわ。それもすごい勢いで」
「ああ、ブーストしたからな。俺は女限定だが他人の力を限界まで引き出せる。今回は限界を超えさせたんだ」
限界を“超える”?
私は勇者にあこがれて、子供のころから体を鍛え、剣の鍛錬をしてきた。
毎日、朝から晩までだったと思う。
愛するこの王国の人々のため、自分を限界まで鍛え魔獣と対峙してきた。
でも最近はいくら鍛えてもあまり成長を感じられなくなっていた。
「ねえ、私と組まない?」
「はあ?俺にメリットないだろうが」
「自分じゃ戦えないんでしょ。私を好きに使っていいわ。ただし人々のためよ。魔獣狩りでもダンジョンでもどこでも行くわ。得られた報酬はあなたが好きに配分していい。その代わり危ないときはさっきのブーストで助けてね」
「なるほど。それならメリットは確かにある…か」
腕を組んで考える。
「おまえ、男と組むんだ。その面でも覚悟はあるのか」
「え?」
一瞬沈黙する。
「も、もちろん。私でいいのならね」
動揺を隠すように視線を逸らす。
「そうか、なら組んでもいいぞ。俺はバインディウスだ。バインでいい」
「クリスアーニャよ。クリスと呼んで」
この時私はバインにそしてバインの魔法にあそこまで依存することになるとは想像すらしていなかった。
もう1話投稿します。




