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銀翼の加護があらんことを・・・

飲み会が続きまして、大幅に遅れた上に短めです。

申し訳ございません。

ノックをする音がする。


とたんに眼下の会場が静まり返る。


しんと会場が静まると、照明が落とされた。


灯りと言えるものは、参列者たちが持つランタンだけになる。


ぼんやりと浮かび上がる灯を上から見ていると……幻想的な光景に目を奪われる。


まるで深海に浮かぶクラゲの大群を見ているかのような気分だ。


門を……ノックする音が止んだ。


それと同時に王座の間の門が動いた。


地鳴りのような音が響き、門がゆっくりと開き始める。


門が開き、大男が姿を現す。


横も縦も俺よりでかい大男。


彼こそはこの王城の番人で、最強の七星であるユーミィルだ。


ユーミィルはその両手で小さな椅子を宝物を持つかのように持っていた。


椅子は色が濃く、四角く、背もたれの先端がとがった妙な形をしていた。


ユーミィルが持っているから小さく見えるけども、結構大きめの椅子だと思う。


ユーミィルはゆっくりと王座までの通路を進み、祭壇の前まで来ると、その椅子を置いた。


椅子を置くと、ユーミィルは振り返り、招待客たちにお辞儀をした。


そして、そのまま来た道を戻り、門の前に立った。


ユーミィルがゆっくりと両手を上げる。


大きな門番はぐっと拳を握り、呼吸を整える。


すると、すぐにその巨体が薄い赤い光で包まれた。


門番が赤い光で包まれると、彼は拳をゆっくり解いた。


そして、広げた手のひらを勢いよく合わせた。


大きな破裂音が響き、空気を揺らす。


それと同時に門番を包んでいた光は粒子になって、王座の間中に広がって行った。


ユーミィルが放った赤い粒子は、俺のところまで飛んできた。


まるで蛍みたいに飛ぶ、その赤い粒子を俺は掴んでみた。


すると、俺の身体に火が付いた。


やばい!見つかる!


俺は慌てて身を引いて、自分の身体の火を消した。


なんで急に火が付いた?!火の魔力が宿っていたからか?


いや、そんなことよりも……バレた……?


俺は恐る恐る下の様子をうかがう。


だが、こっちを見てる者はいないようだった。


不幸中の幸いというのか……ユーミィルが放った粒子は招待客の持つランタンをさらに灯していた。


魔力を受けたランタンは、灯りを少しだけ強くし、みなの手からふわりと宙に浮かび上がっていた。


招待客たちはみな、ふわりと浮かんだランタンの灯りに目を奪われていた。


誰も、俺の方なんて見ていない。


俺は、ほっとため息をはいた。


あの粒子……火の魔力が込められてたのか……。


肝を冷やしたな……いやまったく。


まずいね。


こんなとこ誰も見ないだろうと思って、完全に油断していた。


もしも、こんなとこに、でかいなんかがいるなんてバレたら……。


下の会場にこっそり紛れているよりも話題になったかもしれない。


いや、もしかしてあれか?見つかった場合、俺は侵入した賊として処理されるのか?


だから、終の住処とかなんとか言われたのだろうか。


そう思うと背筋に悪寒が走った。


いやまったく……何をするにも命がけだね……最近は……。


一応念のために……本当にばれてないか……もう一度だけ……。


そう思って、俺はもう一度こっそりと下を覗く。


誰も見てない……な。


それを確認してほっとため息を吐いていたら、視界の端に誰かが俺の方を指さしたのが見えた。


うっ……!?ばれた?!


と、思って見てみたら、こっちを指さしてるのはイヅナだった。


イヅナが俺の存在に気が付き、レイシーとドクダミちゃんも気が付いたようだ。


上の通路にいる俺を見て、イヅナとレイシーはにやにやしていた。


ドクダミちゃんはぽかんと口を開けて、目を丸くしていた。


まさか、こんなとこにいるとは思ってなかったようだ。


俺はイヅナを睨みつけて、こっちを見るなと伝えた。


できるだけ必死さを出してみたら、イヅナはいろいろ察したようで、こっちを見るのを辞めた。


よかった……だが、あの馬鹿のせいで、他の人に気が付かれちゃいないだろうか……。


そう心配したけども、他にこっちを見ている人はいなかった。


よかった……とりあえず首の皮一枚つながった。


まぁ、気が付くわけないか。


だれも、こんなすみっこの方を見るはずがない。


逆に……なんで気が付いたんだ?あいつらは……。


そんなことを思っていると王座の横の方にある扉が開き、誰かが出て来た。


その人は手に結晶のような輝きを放つ王冠を持っていた。


恐らくは銀と宝石で出来ているのだろうと思うのだけども、遠すぎてよくは見えなかった。


その王冠を持つ人は遠くてよく見えないとはいえ……間違いない。


あれはサンルーター様だ。


真っ白な礼装に身を包み、赤いマントを付けている。


頭には小振りながらも立派な冠を被られていた。


そんなことが許されるのはこの国であの人だけだろう。



サンルーター様は、前王様の弟君で、俺の主治医だ。


主治医だなんて……おこがましいのだけども……。


なにせ、この国一番の大病院の院長先生だ。


頭がよくて、血統もよくて、人柄も良い。


どこをとっても俺には勝ち目のない最強の人物だ。


サンルーター様は実質、この国の現王様であると言ってもいいだろう。


戴冠こそはしていないが、幼いルーナノヴァ様に代わって長年、実務を担当していた。


院長やりながら影でこの国を支え続けていたのだ。


想像もできないほどの苦労人なのだろう。


本人はそんなことをおくびにも出さないが……。


それが徳が高いということなのだろう。


俺には生まれ変わっても真似できそうにない。


そういう人だ。


だけども……俺たちにとっては疑惑の人ではある。


院長先生は研究所と繋がっている可能性がある。


研究所の所長は……あのジョン・スミスだ。


そう言えば……あいつは、今、ここにはいないのだろうか?


俺から見える範囲にはいないし、イヅナの反応を見るに……いる感じはしないな。


一瞬火のついた俺に気が付くくらいだ。


宿敵がいるなら一瞬で気が付くだろう。


まぁ、今はそんな場合じゃない。


俺はサンルーター様を見る。


サンルーター様は王冠を持って、うやうやしく歩いている。


そして、サンルーター様は祭壇に立ち、王冠を置いた。


サンルーター様はキラキラした瞳で、微笑みながら立っている。


その場に立っているのが、この上なく誇らしく、嬉しいって感じの顔だ。


その視線の先には……大きな門番が立っている。


門番はサンルーター様を前にして、膝を付いて、頭を下げた。


それに従い、他の七星たちも膝を付いた。


会場が静まり返る。


やがて、音が聞こえて来る。


かつんかつんと……靴を鳴らす音だ。


だんだんとその音が……門に近づいてくる。


そして……一番大きく音が聞こえたかと思うと……足音が止まった。


膝を付いていた門番がゆっくりと立ち上がり……道を開けた。


門の傍らに立ちユーミィルが叫んだ。


「我らが王に銀翼の加護があらんことを!」


その場にいた全員が姿勢を正した。


「新たなる国王!ルーナ・ノヴァ様!」


その声と共に、女王様が王座に姿を現した。

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