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野暮な話はよそうじゃないか

俺がランデルを撫でていると、イヅナたちも紛れて撫でようと、こっそりと手を伸ばした。


しかし、ランデルは容赦なくその手をも振り払った。


「ぬぅ!隙がない!」


「ちぃ!やるなぁ……ここまでとは!」


イヅナとレイシーは本気で悔しがって、俺のことを睨んでいた。


俺は苦笑いしながら言った。


「ま、そのうち認められるさ」


「泥臭くなるのは嫌です!」


「ほんまやで!」


「それじゃあ……触れないかもな」


「それも嫌です!美しく、かわいく、いい匂いのまま触りたいです!」


「わがままだなぁ……じゃ、せいぜい頑張ってくれ」


俺がため息を交じりにそう言うと、二人は歯ぎしりしていた。



「さ、そろそろ行きましょうか」


ポッポがそう言った。


そうだな、いつまでも遊んでいるわけにはいかない。


俺たちは病院に別れを告げ、馬車に乗り込んだ。


「中央でいいですか?」


ブロンソンがそう言うと、ポッポがみんなの顔を見て言った。


「あの……みなさん、この後お時間はありますか?」


「え?何かあるのか?」


俺がそう訊ねると、ポッポは頷いた。


「ええ!せっかく集まったので、このままお昼でもどうかと思いまして……」


「ああ、そういう……」


「はい!行きます!ごちそうさまです!」


俺が返事するより速く、イヅナが前のめりでそう答えた。


元気で、明快で、いい返事だった。


なので、俺は無言で頷くことにした。


ポッポは返事を聞いて、ほっとため息を吐いたように見えた。


俺たちが参加を表明すると、ステラとルビィさんもせっかくなのでってことになった。


みんなの返事を聞いて、ポッポはにっこりと笑っていた。


「いやぁ!よかった!断られたらどうしようかと思いました!」


「ふふふ……それはよいけども、ポッポ屋さん?肝心のお店はもう決まっていますのよね?」


ルビィさんがそう言うと、ポッポは自信の満ちた表情で言った。


「そうですねぇ……予約などはしてませんが、行きつけが何件かありますので、皆さんの気分に合わせようかと……」


「あら……お店の心配はしなくてよさそう。流石、駅員さん」


「物知りな利用者さんたちが教えてくれるのですよ。いつも助かっています」


「そう……あの、もしも迷惑でないなら私の連れもいいかしら?」


「おや?お連れさんがいるのですか?」


「ええ、この後、合流するの。ちょうど、中央で行きたいお店があったから……そこでね」


「おや!そうでしたか!そのお店のお名前は?」


「名前?そうねぇ……ねぇ、イヅナちゃん?」


「はい!なんでしょうか!」


「行きつけのお店の名前、なんといったかしら?」


「行きつけ?ああ!アル・モーロです!」


「ふふ、ありがとう。そこよ!」


ルビィさんはそう言った。


「おお!そのお店なら知っています!私も行ってみたかった」


ポッポがそう言うと、ルビィさんは頷いた。


「では、決まりですわね?」


「しかし、そのお店は小さいのですよね?この人数で入れるものでしょうか?」


ポッポは心配そうにしていたが、俺は言った。


「きっと大丈夫だ」


「本当ですか?」


「ああ、行きつけだしな。俺たちがいれば入れてくれるさ」


「おお!やはり一流の冒険者様だ!言うことが違いますね!」


「ははは……いや、そん……」


「はい!それほどですとも!ええ、私たち一流ですから!」


俺が謙遜しようとしたら、イヅナが身を乗り出してそう言った。


とても嬉しそうで、誇らしげだった。


俺はため息を吐いた。


それを見て、みんな笑っていた。



中央に向かって、ランデルが歩き始めた。


みんなは和気藹々と話を始めた。


店のおすすめメニューだとか、今は何の料理の気分だとか、そういう話だった。


俺はその話の輪にはいらずに、ひとりぼんやりとランデルが馬車をひく姿を見ていた。


この人数が乗ってるってのに、ランデルは一頭で軽々と馬車をひいている。


これが竜骨種の力なのか……。


いや、ポッポの話が真実なら……こんなもんじゃないよな。


今も相当な重さなはずなのに、全然負担に感じて無さそうな雰囲気だし……。


初めてランデルとブロンソンの二人に会った時、ランデルは荷物に足を挟まれていた。


確かに、あれは相当でかい荷物だったわけだけども……。


もしかして、ランデルにとってはあんなの何の障害でもなかったんじゃないか?


なら、どうして……?


なんて、考えすぎか。


馬は馬だ。


足が折れたら大変だしな。


まぁなんかそういうのもあるのだろう。


そんなことをぽかんと考えていると、あっという間に馬車は中央に到着した。




「そんじゃ、旦那……あっしらはこれで失礼しますよ」


「ええ、本日はありがとうございます。ブロンソンさん」


ポッポがそう言って、ブロンソンにお辞儀をした。


「礼には及びません。そんじゃあ、またなにかあったら、いつでも声かけてください」


ブロンソンはそう言うと手を振って、こっちを向いて言った。


「そんじゃ、お嬢さん方に、モリーも、元気でな」


「ああ、そっちも元気で」


俺がそう言うと、ブロンソンはへっと笑って、そのまま去って行った。


「さようなら!ブロンソンさん!それにランデルも!」


「帰ったらにんじん貰うんやで~!」


「あ、あ、ありがとうございました!お、お元気で~!」


三人は去って行くブロンソンの背中にそう叫んだ。


ブロンソンは振り向きはしなかったが、後ろ手に大きく手を振っていた。



「……なぁ、ポッポ?」


「はい?どうしました、モリーさん」


「疑問なんだけどさ、あの二人はどうしてお前にあんなによくしてくれるんだ?」


「私が駅員で、彼らは駅の仕事を請け負っている人だからですよ?」


「まぁ、そうなんだろうけども……でもさ、竜骨種ってさ、聞いた感じかなり保護されてるっていうか……そんな気楽に普段使いしていいものなの?」


「ふふふ……流石、鋭いですね。実を言うとですね、彼らには貸しがあるのですよ」


「貸し?」


「ええ、ごろつき同然のブロンソンさんをお役人に口ききしたのは私なんですよ」


「それで……だから、あの二人は駅の仕事を?」


「そうですね。そうじゃなかったら……彼は今頃どうなっていたでしょうね?」


「どうなってたと思うんだ?」


「そうですねぇ……当時のブロンソンさんは……ひどい有様でしたからね。あの当時の彼にランデルを任せるわけにはいかなかったでしょうね」


「と、いうことは……?」


「さぁ?それはランデルを管理していたお役人さんが決めることなので……しかし、そうですね……どうなっていたでしょうね?まぁ、どうにでもなっていたかもしれませんね」


「はは……怖いな。じゃあ、ポッポはブロンソンの命の恩人ってことか」


「そんな大袈裟なものではないですよ……まぁ、でも、大きな恩には感じてくれているようですね」


ポッポはそう言って、はははと笑っていた。


この男……案外、いや、かなり……重要人物なんじゃないのか?


なんて、今更ながらそう思った。



「ポールが来るまで……もう少しあるわね」


ルビィさんが言った。


「正午にここで待ち合わせなの」


だ、そうなので、俺たちは近くの噴水に腰かけて待つことにした。



「あ、あの……正午まで……まだすこしありますよね?」


ドクダミちゃんが言った。


「そ、それまでには戻りますから……すこし屋台を見てきてもいいですか?」


「屋台?それはいいけども……飯食えなくなるよ?」


俺がそう言うと、ドクダミちゃんは首を横に振った。


「そ、そ、そうじゃなくて……えっと……魔法薬の研究中で……あ、いや授業で使うので、その……材料を買いたいなって……」


ドクダミちゃんがそう言った。


なんだか……しどろもどろじゃないか?


まぁ、いつものことと言えばそうなのだけども……。


「ああ、そっか……それならいいんじゃないか?」


俺は若干の違和感を持ちつつも、断る理由も無いのでそう答えた。


ルビィさんも頷いていた。


「あ、あ、ありがとうございます!じゃ、じゃあ……」


ドクダミちゃんはちらりとポッポの方を見た。


「ええ。では……私も同行します。レイシーも行きましょうか?」


「ういうい!わかりましたよ!ほんじゃいきましょか!」


そう言って三人はまるで示し合わせたかのように、俺たちから離れて行った。


俺はどこかへ向かって行く三人を見て、首を傾げた。


なんか……怪しいな?


気のせいかな?まるで事前に話し合っていたかのような動きのような……?


なんだか、ドクダミちゃん……妙におどおどしていたし……。


それはいつものことだけど……でも、今日のは、なんか変……な気がする……。


何かを隠しているかのような……。


何か企んでいる?


なんて、俺の気のせいかな?


そんなことを考えていると、イヅナが俺の脇腹を突いた。


「ねぇ?モリー様!こうしてると思い出しませんか?!」


唐突にイヅナがそう言った。


「あ?何をだ?」


「ほら!私たち、初めて会ったのもここだったじゃないですか!なんだか懐かしくないですか?!」


「あら?そうなの?」


イヅナの言葉を聞いて、ルビィさんがそう言った。


「ええ!そうなんです!無職になって、うなだれているモリー様を私がここで拾ったのです!」


「言い方が悪いな……まぁ、無職でうなだれてたのはそうだけどさ……」


俺はそう言って、ため息を吐いた。


あの時は……そうだな、今思えば、平気な振りしてたけども結構つらかったな。


なんて思いながら、ちらりと隣にいるステラの方を見た。


ステラはまっすぐに前を向いて、何か考え事をしているようだった。


……ま、こんな話聞いても何も感じないよな、こいつは。



「どんな出会いだったの?」


ルビィさんが興味深そうにそう訊ねた。


「あの時は……一日中モリー様を探してたんです!どんなお顔かも知らなかったのですが、大きな人だって聞いていたので大きい人を探してました!」


「誰に聞いたんだよ、そんなこと」


「有名でしたよ?あの時は」


「そうなの?」


「シャリオン校きっての天才と、地上最強の男、そして寡黙な巨人!その三人がアル様の最強の仲間だ!って、みんな噂してました!」


「はぁ……そうなのか?」


そんなの聞いたことないけどな……なんて、思いながらちらりとステラの方を見てみた。


ステラはさっきと変わらない風を装っていたが、表情が少し緩んでいるように見えた。


学校きっての天才と言われ、嬉しいんだろうな。



「で、その巨人を探して俺を見つけたのか?」


「そうです!一目見て分かりました!あの人がそうだって!だから、声をかけたんですよ!」


「なるほどね……」


「懐かしいですねぇ……もうずいぶん前のように思います」


「そうだな……あれは夏のことだったんだよな。信じられんな……」


俺の脳裏に……これまでのことが浮かんだ。


大変だったな……。


あの冒険がこいつと出会ってたった数カ月間のことだったんだもんな。


生き急ぎすぎだよな。


それがイヅナの速度感なのかもしれないけども……マジでよくついてけたな、俺。


そんで、よく生き残れたもんだ……。


自分のしぶとさにはびっくりだ。


俺はそう思って深く息を吐いた。


「あの時……無視してればよかったなぁ……」


思わずそう言ってしまった。


やべっと思った時にはもう遅かった。


「なんでですか?!ひどいです!そんなこというなんて!」


イヅナがそう言ってぽかぽか俺を殴った。


「いてーな……やめろよ」


「モリー様がひどいこと言うからじゃないですか!無視だなんて!」


「そりゃあ……お前があの時、自分はライセンス持ってるとか嘘ついたから、俺はマジもんの無職になっちまったわけでだな……それに体も壊すし、子供の世話を焼かされるし……苦労ばっかでいいことないしなぁ……」


「何を言うんですか!いろんな冒険できたじゃないですか!それに、私のお世話できるのは光栄なことでしょう?!」


「そんなわけあるか。世話焼かせるな馬鹿」


「馬鹿っていいましたね!この!馬鹿って言う方が馬鹿なんですからね!このバカバカバカ!」


「はいはい。何とでも言ってくれ」


俺はそう言ってため息を吐いた。


世話をするのが光栄なわけないだろ。


こいつ、自分の事お姫様かなんかだと思ってんだろうな。


ほんと、厄介な奴だよ。


それに……冒険ってなぁ……。


俺は……冒険なんか……。


冒険……なんか?


俺は何かに気が付きかけた。


その瞬間……。


「お、お、お待たせしました!」


ドクダミちゃんの声が聞こえた。


はっとして顔を上げてみると、大きな袋を抱えたポッポと、ドクダミちゃんとレイシーが立っていた。


「あっ!ドクダミちゃん!おかえり!」


「た、ただいま!お、お待たせしました……」


「ううん!大丈夫だよ!それより……おじさんの持ってるそれなに?!」


イヅナがそう言うと、ポッポは言った。


「ふふふ、これは……まだ秘密です」


ポッポはそう言って微笑んだ。


「ええ~!気になる!」


イヅナがそう言うと、今度はルビィさんが立ち上がった。


「あっ!来たわ!」


ルビィさんはそう言うと、おーいと言って大きく手を振った。


それに気が付いて二人の男がこっちにやってきた。


「ルビィ!」


「兄さん!」


こっちにやってきたのは、待ち人のポールとサフィ君だった。


二人の姿を見て、ルビィさんは首をかしげていた。


「すまない、ルビィ、遅くなった」


そう言ったのはポールだった。


サフィ君の船の副船長だ。


「いいえ!今来たところよ。それより……」


「やぁ!どうも、兄さん」


「ブルー!あなたも来たの?」


「もちろん。兄さんだけに任せるわけにはいきませんから!」


「あら?私じゃあ力不足だったかしら?」


「いやいや、そうじゃなく……厄介な仕事ですからね。僕が持ってきたことですし、兄さんに全部背負わせるわけにはいかないからね」


「そう……それならそういうことにしておくわ」


ルビィさんはそう言って微笑んだ。


サフィ君は、困ったように笑っていた。



「サフィ君!お久しぶり!」


「イヅナさん!それにみなさんも!お久しぶりです!」


サフィ君はそう言うと、みんなに挨拶していた。


「お元気そうで何よりです!」


「サフィ君こそ!」


子供たちはサフィ君と抱き合って再開を喜んでいた。


その姿をステラがきょとんとした顔で見ていた。


「ああ、ステラ……紹介するよ、この子がブルーサファイア・ドーソン君」


俺がそう言うと、ステラは驚いていた。


「え?この方が……あの?」


「ああ、そうさ。スピネリの漁師の頭領、ジョナサン・ジョーンズだ」


俺がそう言うとステラは目を丸くしていた。


サフィ君のことは何度か話で出しているのだけども……。


商売上手でしたたかな美少年の船長ぐらいでしか言ってなかったからな。


本物を見て思ったより幼いし、美少年で驚いたのだろうと思った。


「はじめまして!ブルー・サファイアドーソンと申します」


サフィ君はこっちに気が付いたようで、ステラにお辞儀をして、自己紹介をした。


「あっ……は、初めまして……私はステラと申します」


ステラも挨拶を返し、お辞儀をしていた。


「ステラ?!まさか、リカオンの?」


ステラの名前を聞いて、サフィ君の表情がぱっと明るくなった。


「え、ええ……そうですが……」


予想外の反応が返って来たからなのか、ステラは若干困惑しているように見えた。


「おお!まさかこんなところであなたにお会いできるとは!」


サフィ君はそう言うと、困惑しているステラの手を握った。


「私はリカオンの一員に縁があるようです」


「あ、あら、そうなのですか?」


「ええ、不思議とみなさんと面識を得るんです。ちなみに、あなたで三人目です。モリーさんとウーティさんにはお世話になりました」


「え?う……ウーティ……さん?」


ステラはあからさまに嫌そうな顔をした。


「おい……そんな顔するなよ」


俺はステラにこそっと耳打ちした。


ステラは、はっとして、笑顔を作った。


「ああ……その話は聞いています。ウーティさんが南部魔界に渡った時……モリーさんたちと一緒の船だったとか?」


「ええ、そうです。私の船で一緒に渡り、ウーティさんとは船の中でたくさんお話しました。よく気がつく良い人でした」


「そう……ですね。あの人は気遣いができる人ではあります……ね……」


ステラはそう言うと、ちいさくため息を吐いた。


「まぁ、少し配慮に欠きますが……」


ステラが小声でそう言った。


サフィ君には聞こえていないようだが、俺にはばっちりと聞こえた。


「ウーティさんはお元気ですか?」


「ええ、この間お会いした時はお元気でしたよ」


「そうですか!それはよかった!今度お会いした時、ブルーサファイアが会いたがっていたとお伝えください」


「ええ、よろしく言っておきます」


「ありがとうございます!そう言えば、ステラさんはドクダミさんと一緒でシャリオン校の方なんですよね?」


「ええ、そうです。私はもう卒業しておりますが……」


「そうですよね!では、もう一方のほうも面識はおありですよね?」


「え?もうひとかた?」


「ええ、南部魔界に同行していた先生です。名前は確か……そう!ドルビレイさん。ドルビレイ・マーマロン先生!」


サフィ君がそう言った。


おお、懐かしい名前だ。


ドルビレイ先生。


ドクダミちゃんの学校の魔物を研究している先生だ。


寡黙で思慮深く、底の知れない感じがする先生だ。


研究熱心で……というか研究以外は興味ないって感じの人で、見た目も気にしないようで、だらしない感じが俺に似ていた。


だけど、俺とは違い、時と場合できちんとできるしっかりした大人って感じの人だった。


そして何よりも、船の上で高熱でうなされるドクダミちゃんを助けてくれたいい人だ。


ドルビレイ先生にも恩がある。


あの先生、元気なのだろうか。


元気であるなら……いろいろ話がしたいなって思った。


なにせ、あの人は……ジョン・スミスの知り合いでもあるはずだからな。


「ドル……ビレイ……先生?」


ステラがぽつりとそう言った。


ん?なんだ?なんか……様子が変だ。


なんか気まずそうな感じだ。


「おや?もしかして、ご存じありませんか?」


「え?い、いえ!そういうことではありませんが……」


「はぁ……?」


「あ、あの……ドルビレイ先生は……」


ステラはそこまで言うと、言葉を飲み込んだ。


「どうかしましたか?」


「あっ……いえ!すみません。お名前は存じ上げているのですが……あまりかかわりの無い方なので……」


「ああ、そうでしたか。これは申し訳ございません」


「いえ……今度学校に行く予定もあるので、もし、お会いしたらよろしく言っておきます」


ステラはそう言うと、にっこりと笑って、握られた手を振ってサフィ君と握手をした。


「おお!ありがとうございます!」


サフィ君は嬉しそうにそう言った。


その時……広場の鐘が鳴った。



「おお!正午ですね!」


ポッポが言った。


「ジョナサンさん、ポールさん、積もる話はあるかと思いますが……今から私たちは一緒にお昼に行く予定なのです」


「おお!そうでしたか……では、私たちもご一緒してもよろしいですか?」


「ええ、もちろんです。お店も決まっていますから、お話はそちらで」


「ええ、そうしましょう。では、案内をお願いしても?」


サフィ君がそう言うと、イヅナが手を上げた。


「はい!では、ご案内いたします!とってもいいお店ですよ!なにせ、わたしたちイナホの行きつけですから!」


イヅナがそう言うと、サフィ君はどこの店なのか分かったようだった。


「おお!それは……楽しみです!」


「へへへ!僭越ながら私、イヅナ・ヴィクトーリアがみなさまをご案内いたしま~す!では、しゅっぱーつ!」


イヅナはそう言うと、意気揚々と歩き始めた。


レイシーとドクダミちゃんが、おー!と声を上げてそれについて行った。


その姿を見て、みんなは微笑みながら歩き始めた。



その場に残ったのは俺とステラだけだった。


「……元気だね」


俺はポツリとそう言った。


「ええ……そうですね」


「行くか?」


「ええ……そうですね」


「なぁ、どうしたんだ?」


「え?なにがですか?」


「ぼんやりして……様子が変だぜ?」


「そう……ですか?」


「ああ、そうだよ。何かあった?」


「あの……いえ、何もありません。大丈夫です」


ステラはそう言うと、歩き始めた。


だが、その表情は暗く、俯いたままだった。


「ん?まぁ……大丈夫か?」


まぁ、深く考えるのはやめようか。


なにせ、これから楽しい昼食会なんだ。


野暮な話はよそうじゃないか。


と、そう思った。


そして、俺も置いていかれないように、歩き始めた。



ステラの暗い表情の理由はまた後に分かることだった。


野暮な話はよそう。


まさか、ステラも……同じことを思っていただなんて……。


俺には全然わからなかった。

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