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【第326話:まさかの介護】

ギルドのカウンターに書類を提出したロイとミリエル。

受付嬢が真顔で内容を確認すると、ふっと微妙な表情になった。


「なるほど……四十肩と……天使……ですね……?」


「そこを読み上げる必要ある!?」

ロイが叫ぶ。


「いえ、確認です。では、お二人にぴったりのお仕事があります」


「お? 魔物退治か、人助けか……?」


「介護です」


「なんでだよ!!!」


「天使さんは癒やし系のステータスがありますし、四十肩さんは……あの……落ち着いた年齢層というか……」


「職業が関係してるのかそれ!?」


「はい。適正バッチリです!」


 こうして二人は半ば強制的に、老人施設へ派遣されることになった。



 施設の名前は 《陽だまりシルバーケア》。

中に入ると、職員らしき人が慌てて駆け寄る。


「助かりました! 介護士が足りなくて困ってたんです!」


「いや、俺たち戦闘で稼ぎたいんだけど……」


「戦闘? 何言ってるんですか。ほら、あちらに利用者さんが」


 案内された先には、車椅子の老人たちがのんびりと日向ぼっこしていた。


 ミリエルは目を輝かせて走っていく。


「わぁぁ! かわいいおじいちゃんおばあちゃんがいっぱい!!」


「“かわいい”か……?」


「天使さん、まずは声をかけてみてください」

と職員が言った。


 ミリエルは老人にしゃがみこみ、満面の笑みで言った。


「こんにちは! お年寄りさん!」


「呼び方が雑!!」


 案の定、おじいちゃんがムッとする。


「わしは“おじいちゃん”ではなく名前で呼んでくれんか」


「名前? ……じゃあ“おじいちゃん”ね!」


「話聞いとらん!!」


 横でロイがツッコむ。



 ロイはロイで、重い荷物を持つ役目を頼まれた。


「ロイさん、この荷物を二階まで運んでください」


「任せろ! ……うぐっ!?」


 肩がビキッと悲鳴をあげた。


「あ、四十肩の方でしたね。じゃあ軽い荷物で」


「いや軽いのって……この枕一つか!?」


「はい。無理は禁物です」


「俺の職業、本当に邪魔してくるな……!」



 しかし、意外にも老人にはミリエルが大人気だった。


「天使さん、わしの肩をさすってくれ」


「はい! こうかな?」


 ミリエルの手が光を帯びる。


「おお……痛みが消えた。さすが天使……!」


「すごいじゃないかミリエル!」

ロイが感心して言う。


「うん! 私、光のステータスだけは得意だから!」


「“だけ”って言うな!」


 老人たちはもうミリエルに夢中だ。


「天使さん、こっちも頼む」


「天使さん、わしも!」


「天使さん、腰が痛い!」


 ミリエルは嬉しそうにあちこち走り回り、光をふりまく。


 ロイはロイで、スタッフに言われた。


「ロイさんは……その……話し相手でもしていただければ」


「肩がひどいからって理由雑じゃね!?」


 しかし、話し相手を始めてみると――


「若いの、あんた四十肩なんじゃろ? わしと同じや」


「いや、あの……職業でして……」


「職業で四十肩!? そりゃわしよりひどいわ!」


「慰められてる!?」


 なぜか老人たちと妙に意気投合するロイ。


◆ 


休憩時間になると、ミリエルが汗だくで戻ってきた。


「ロイ、すっごく大変ね……天使って、こんなに重労働なの?」


「いや、たぶんお前が勝手に癒やしすぎてるだけだと思うぞ」


「そうなの? なんか、頼まれると断れなくて……」


「それな、“知が弱い”ってステータスのせいじゃね?」


「そこ言わないで……」


 ロイはため息をつきながらも、少しだけ笑った。


「まあ……助けられるんなら悪くはねぇか」


「うん! ロイ、今日のお仕事、楽しいわ!」


「……俺は肩痛えけどな!」


 こうして、

四十肩のロイと

知が弱いけど光MAXのミリエルの


異世界ほのぼの介護初任務は、

なぜか施設中を大喜びさせて幕を閉じた。



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