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フラマンタスの刃77

 東の町に入ると、そこは人通りが多く、活気に溢れていた。

 船に海、マリアンヌ姫に、アネーリオ、ダニエルは初めて見たらしく驚いていた。

「これが潮の香りなのですね」

 マリアンヌ姫がしみじみと言った。

 馬車を厩に預け、大手居酒屋チェーン店猛牛の里で、昼食を取りながら、それぞれが幻の城に乗り込むことを決意しているようで、無言で食事が続いた。

 席を空けていたコモドが戻って来た。

「森の中を北へ三十分だとさ」

「やっぱり中に入った人は戻って来れないの?」

 ギュネが問う。

「ああ、そうらしいね。この町の人達もずいぶん戻って来ないってことだ。城は突然現れたんだって」

 無言の重圧がフラマンタスを襲う。隊長として本当に皆を連れて行って良いものか、決起会までしたのに、また不安が過ぎった。

「本当に行くのか? 残りたい者を責めはしない。よく考えてくれ」

 フラマンタスは気弱に言うと、一同はかぶりを振った。

 決まった。

「ならば、イシュタルさんとウルフさんが心配だ。行こう」



 2



 案内を雇う必要はなかった。誰かが作ったのか、あるいは邪悪な城の出現とともに現れたのか、細い道が北へ切り開かれていた。

 ペケには呪われた剣と王冠を背負って貰っている。馬車と他の馬は置いてきた。

 ふと、秋の深い枯れた草葉を揺らし何者かが正面に現れた。

 最初は黒の乗り手かと思ったが違う。フードに薄い外套、顔は中年の男だった。それが三人、行く手を遮った。だが、賊というわけでもなさそうだ。不思議と殺気は感じない。しかし、熟練したフラマンタスの感知する力でも気配は悟れなかった。それなりに修練を積んだ者だということだ。

「ご苦労さん、レンジャーさん達」

 コモドが進み出て言った。

 レンジャー。王国にもレンジャー部隊はあるが、初めて見た。彼らは自然と共に生きる大自然の達人だった。

「我々は町に雇われたレンジャー隊だ。ここから先は行かない方が良い。何があるのか、知らないわけでもあるまい?」

 レンジャーの頭目と思われる男が言った。

「我々は幻の城に用がある」

 フラマンタスは応じた。

 三人のレンジャーは顔を見合わせて頷いた。

「あなた方の前に二人連れが行ったが一日経っても帰って来ない。それ以前にもう百人近く戻って来ないのだ。その中には興味本位の探求者や屈強な戦士もいたし、様子を見に行った我らの同胞でさえも未だに戻らない」

「二人連れは緑色の髪の女性と、鉄仮面をかぶった戦士か?」

 フラマンタスは問う。

「知り合いか?」

「そのようなものだ」

「止めて置け、あの城は呪われている。お前達は準備が良いようだが、それでも戻って来られない可能性だってある」

「そうだ、命を粗末にするな」

 レンジャー達が口々に止めようとしたが、フラマンタスはかぶりを振った。

「その幻の城の主に用がある。これを見たことがあるか?」

 フラマンタスは剣を見せた。

「王都の教会戦士だったか。よくこんなところまで」

 レンジャーらは驚いた様子だった。

「王命により、この城の主を討伐に来た。道を譲ってくれ」

 レンジャーらは頷き合い、サッと前を空けた。

「一週間経っても我々が戻らなかったら、王都にこれを届けてくれないか?」

 それはフラマンタスが前夜、したためた書状だった。内容は簡潔に任務に失敗したことを記している。ギルバート神官長宛てだ。

「幸運を祈る」

 書状を受け取ったレンジャーらはそう言って一同を見送った。

 レンジャーらの忠告を受けて、一行の間に緊張感が生まれるのをフラマンタスは感じていた。やはりマリアンヌ姫やアネーリオには残ってもらった方が良いのか? そのような惑いがあったが、二人の決意に満ちた顔と宣言を思い出し、口にするのは止めた。

 そのまま細い道を歩んで行くと、前方に蔦とコケにまみれた城壁と開け放たれた重々しい門扉が見えた。

 不穏な気配が濃くなるが、門扉の向こうには上に続く石造りの階段が確認できた。

「みんな、覚悟は良いか?」

 フラマンタスは仲間達を振り返る。彼らは頷き、ペケは鳴いて応じた。

「戻れなくて元々だと俺は思う。先ほどのレンジャーらも百人近くが戻って来ないと言っていた。何らかの妖術が掛かっているのかもしれない」

「だけど、フラちゃん、俺達は運命共同体だ。それにここの家主に皆さん御用があるんだから行くっきゃ無いでしょう。それ、俺っち一番乗り!」

 コモドが中に入った。

「コモド!」

 フラマンタスは驚いて名を呼んだが、コモドは周囲を見回し、こちらに向かって壁を探るような手つきになったが、その手は前には一度も出なかった。まるでパントマイムを見ているようだったが、この場面でコモドもさすがにふざけたりはしないだろう。

「私達が見えていないみたいですね」

 マリアンヌ姫が言った。

「こうやって出られなくなるわけか」

 フラマンタスは納得した。

「私達も行きましょう!」

 マリアンヌ姫が言い、入り口に飛び込む。アネーリオとヒューが続いて潜り、ダニエルに引かれてペケが後に続いた。

 皆、大した度胸だ。

 フラマンタスは感心した。

「フラマンタス」

 ギュネが彼の手を握った。

「ええ。行きましょう、ギュネさん」

 二人は並んで入口を潜ったのだった。

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