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フラマンタスの刃33

 斜面より上に上げる気は無かった。ヨロヨロと不安定なゾンビ達はおぼつかない足取りを急斜面に取られ上がって来るのは遅かった。

 一方、フラマンタスが一瞥したところ、コモドとマグナスは滝の裏側を来たゾンビ達を切り裂いている。後方には護衛のダニエルと要人マリアンヌ姫がいる。だからこそ、平坦な地でゾンビ達を合流させてはいけない。急斜面に足が取られ、動きが鈍く乱れが生じている今こそが好機だ。

 アネーリオ少年とギュネを鼓舞すべく、まずは自分がゾンビの眼前まで下りて十字剣を薙ぎ払う。

 首が吹き飛び、胴体が倒れる。まだまだ新鮮なゾンビだ。近くに村でもあるのかもしれない。

 アネーリオ少年は斜面故、迂闊に必殺の飛び膝蹴りを放てず、十字短剣とバックラーで勇敢にゾンビに捕まるまいと反撃していた。そしてギュネの方は、ゾンビの顔面を短い槍が突き破る。が、鼻面をやっただけで脳をやられてい無いゾンビはそのまま近づき始めた。

「ギュネさん!」

 フラマンタスはすかさず、飛び出し、剣を振るう。ゾンビの首は分断された。

「ありがとう、フラマンタス」

「首を分断するか脳にダメージを与えて下さい」

「分かった!」

 ギュネは応じ、すかさず新たに挑みかかる。

「そらあっ!」

 アネーリオ少年の一撃はゾンビの首を半分だけ裂いていた。ゾンビは血を噴き上げるが、前進してくる。

 フラマンタスは助勢に入り、脳髄を縦に割った。

 だが、血と臓物の中、ゾンビはまだ動く。アネーリオ少年の足に噛み付こうと動く。

「こうだったよね!」

 アネーリオ少年は二つに分かれた脳をそれぞれ踏み潰した。

「無理をしないようにな。ギュネさんも!」

 と、言った側からフラマンタスは驚いた。

 ギュネの突きがゾンビの脳を間違いなく貫いていた。ゾンビは痙攣し、槍を引き抜くと倒れる。

「こんな感じ?」

「ええ、お見事」

 フラマンタスも自分の戦いに入った。

 ゾンビは後、五十体はいる。だが、森の切れ目から来る列は途絶えない。まだまだいるかもしれない。

 フラマンタスは次々先頭に立ってゾンビを切り裂いて道を阻んだ。

 するとダニエルの声が聴こえた。

「フラマンタスさん! 加勢を送ってください!」

「何だって?」

 どういう状況か確認する。斜面の上では大量のゾンビがマグナスとコモドを半包囲していた。

「アネーリオ君、マグナス隊長の加勢に行ってくれるかい? あそこなら得意の飛び膝蹴りを幾らでも撃てるぞ」

「分かった!」

 少年は軽やかな足取りで斜面を駆け上って行った。

「頑張って!」

 ギュネが言う。

「お姉ちゃんもね!」

 少年は応じた。

「え? 今、何て言った?」

 ギュネは驚いたようにフラマンタスを見る。

「ギュネさん、アネーリオ君はあなたを認めてくれたようですよ。おめでとう」

 フラマンタスが言うとギュネはニヤリと笑い、槍を頭上で回転させた。

「ここから先へは行かせない!」

 ギュネの鬼気迫る奮闘が始まった。フラマンタスは驚いた。達人とまではいかないが、腕は確かだ。

 薙ぎ払い、脳を貫き、ギュネは打って変わって遠慮なしにゾンビを駆逐する。

 そうか、アネーリオ君に認められて、よほど嬉しかったんだな。仲間意識が彼女の中で芽生えたのだろう。

 フラマンタスも負けじと十字剣を朱に染めた。

「上は大丈夫だ」

 マグナスが合流した。

 戦闘がより楽になる。

「真打ち登場!」

 やがてコモドも加勢に出て来た。

 ゾンビ達の亡骸はそこら中の地を埋め尽くした。血が斜面を赤く染め上げ流れていく。

 群れにも終わりが見えて来た。

 四人は斜面で待機し、ゆっくり上がって来るゾンビを迎え撃ち全滅させた。

 気付けば二時間以上も戦っていたようだ。脳内麻薬のおかげで感じなかった疲労が、ようやく追いついてきた。

「皆、御苦労。だが、もうひと働きしてもらおう。ゾンビを火葬にしなければ」

 マグナスが言った。上では既に煙が上がっていた。アネーリオ少年かダニエルか、それともマリアンヌ姫を含めた全員が作業に勤しんでいるのだろう。

「油を取ってきます」

「あたしも」

 フラマンタスとギュネは斜面を駆け上がった。

「どうだった、あたし?」

 ダニエルら三人が作業に勤しんでいる中、油の缶を取って背負っているとギュネが尋ねて来た。

 目が真剣だった。

「驚きました。どこであれだけの槍術を学ばれたのですか?」

「祖父に習ったのよ。この槍もその形見なの」

「そうでしたか。大切な物なのですね」

「うん」

 ギュネはフラマンタスを見続けたままだった。言葉が足りなかっただろうか。フラマンタスは焦りを覚えた。

「ギュネさん?」

「ううん、行きましょう」

 そう言って片手に二つずつ缶を持ってギュネは先に斜面を下り始めた。

 火葬が終わった時には昼もとっくに過ぎていた。

 一同は見晴らしの良いここをしばしの休息の拠点とした。

 フラマンタスが見張り、他の者達は各々眠ったりしていた。

「それにしても先回りするゾンビか。驚いたな」

 マグナスが隣に並んだ。

「これからも驚かされる旅になるのでしょうか」

「真紅の屍術師の機嫌次第だろうな。フラマンタス、やはり人里へ戻ろう。どの道、犠牲は出る。物資の補給もしなければならない。我々だけが希望の光りなのだ」

 フラマンタスは思案した。確かに先ほど戦ったゾンビ達もいずれかの人里の者達なのだろう。どの道、犠牲は出てしまうなら、自分達が斃れない道を選ぶ方が賢明だ。

「分かりました、そうしましょう」

「あまり責任を背負い込むなよ。悪いのはお前ではない。そこだけは胸に刻んでおけ」

「ありがとうございます」

 マグナスはフラマンタスの隣から去ると、アネーリオ少年の武芸の相手をした。

 ダニエルが応援し、マリアンヌ姫とコモドとギュネは横になって眠っていた。

 思わず笑みが漏れる。

 フラマンタスはまさか自分がこれほど仲間という存在に癒される日が来るとは思わなかった。だからこそ、真紅の屍術師の魔の手から仲間達を守るのも己の使命だと彼は深く思ったのだった。

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