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僕の義妹(マイシスターインロー)は一親等。【長編小説】  作者: 金森 亮
第三章 アバンチュールと再会

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第9話 義兄弟でいたい。

「やっぱり義兄と義妹の関係が、都合一番いいんですよ」


 観覧車に腰掛けた彼女は、一言そう呟いた。


「それに、親子が三ヶ月間疑似恋愛したからって、罰が当たるとは思いません」

「ば、暴露しておいてまだ疑似恋愛する可能性があるのかよ……!?」

「えぇ、全ては駿さん次第です」


 彼女は僕らの関係を本物の義兄弟と設定して、今の生活に心身を捧げていた。


「……いいのか、小雪……お母さんはそれで」

「それで……とは?」

「あくまでも義兄弟でいるんだろ? それって、つまり元の家族関係に拘らないってことだろ……?」


「えぇ、もちろん拘ることはありませんよ」

「……なんでだよ」


「お父さんにはもう素敵な奥さんがいる、そうでしょう?」

「……だからか。ちょっと義母さんと軋轢があるって言っていたのは」

「女は怖い生き物だってよく言ったものですね」


 彼女は少し淋しげに微笑みを続けていた。僕はこの表情の真意をえらく理解できていた。父親が他の女性に持っていかれる補償として、僕と対面できたのだから……。


「あ、もう一つだけいいですか?」


 彼女は人差し指を立ててそう呟いた。


「こ、今度はなんだ……?」


 そして彼女は両方の腕を広げ、本物の聖母の眼差しを向けてきた。


「……やっと会えたね。私のお腹にいた赤ちゃん」


 次の瞬間、僕は彼女の胸に飛び込んで、自分が感知する間もなく、一雫の涙で彼女を濡らした。若干揺れる観覧車に恐怖を覚えることもなく、ただ感動の再会を噛み締めていた。


「ごめん……ちょっと、衝動が」

「大丈夫ですよ。ちょうど私も……抱きつくところでしたから」


 万一彼女が虚偽を言っていて実母でなくとも、今の彼女には実母の代わりになるだけの引力が備わっていた。


「……本当にごめん、ごめん」


 僕は涙ながらにそう告げると、彼女はもう一段階、包み込む圧を強めてきた。


「どうして駿さんが謝るんですか……」

「だ、だって……僕が産まれたせいで、お母さんは……お母さんは」

「私の幸せは、家族の幸せ……つまり、駿さんの幸せなんです。ですから、私は死んでからずっと幸せの渦中にいるんですよ」


 彼女はそう言うと、僕の背中をポンポンと二回柔らかな手つきで叩いた。


「でも……どうして今なんだよ」


 感動の再会を終えると、僕は至極全うな疑問を投げかけた。


「どうして……とは?」

「もっと早くに僕と出会えただろ……そしたら、父親も再婚しなかったかもしれないし」


 彼女は「スー」と言って言葉を紡がない。そこにはなにか、言葉を続けられないだけの事情が備わっていた。


「……複雑な事情が無数に絡み合っているんです」


 彼女はじっくりと時間をかけてそう答えた。


「そうなのか?」

「これもいずれお伝えしたければならないとは思っていますから、待っていてください」

「分かったよ……」


 彼女は僕に微笑むと、眼下の緑地と町々を見つめはじめた。


「うわぁ、綺麗ですね」


 子犬のように目を煌めかせる彼女に、僕もほんのり笑顔を浮かべた。


「誰かさんの笑顔には及ばないけどな」

「誰の笑顔しょうか」

「さぁな」

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