第2話 義理の家族と僕。
翌7日金曜日、早くも相手一家と対面する機会ができた。父は家の内装を弄くって変に気合を注入しており、他方僕は黙って椅子に腰掛けていた。この無駄を煮詰めたような時間は、明らかに僕の心を荒ませていた。
やって来た親子は別段に身なりの整った女性二人だった。どういうわけか、義妹らしき女性は僕の顔を舐め回すように見つめていた。
「はじめまして、私は母の鹿野朋美と申します」
「私は娘の鹿野小雪と申します!趣味は生きることです!」
「こらぁ、小雪、変なこと言わないの」
「えへへ」
独特な雰囲気の漂う中、父が二人を自宅に招き入れると、小雪という義妹はこちらを見てほんのり顔上に笑みを滲ませた。
机上で会話を交わすと、段々と相手の粗相がよく分かってきた。義母は一般的な風貌のおばさまといった印象で、所作の一つ一つが格式張っていること以外、特に特筆することはなかった。
だが、義妹はというと少し話が異なってきた。僕の一つ下の高校一年生で、父に対しても当たり障りのない返事をし、僕にも愛嬌を振りまくとても出来た娘だった。特筆するべきはその秀麗な顔立ちで、僕に目移りすることを許さなかった。
そして、義母が彼女に所作の数々を施したことを思うと、子は親に似るという句が起こされて、ふしだらに育った僕の心を抉ってきた。
話し合いが終わると、僕は自室に籠もろうと義理の家族に背を向けた。この家族と関わる気なんて端からなかった。しかし、僕にそう安々と自室へ戻ることは許されなかった。
「あ、あの、ちょっといいですか?」
「は、はい……!」
振り返った先には、今にも掌を僕の肩に置こうとする義妹の姿があった。どういうわけか唇を微妙に震わせて、僕に何かを訴えかけていた。
「あなた、しゅ、駿さんって言うんですよね?」
「そ、そうですけど……それがなにか」
僕は義妹に少々高圧的な態度で接した。僕はこれできっぱりと奇縁を断つつもりでいたのだ。
だが、義妹の態度は僕の予想に反して、瞳孔をかっ開いては満面の笑みを浮かべて、一途に僕の拳を掴んできた。
「わぁ、やっと会えました!」
「……へ?」
世代の近い女性に手を触れられ動揺する僕に、義妹は理解が及んでいないようで、不思議そうにこちらを覗き見てきた。
「どうかされました?」という義妹に僕は目を四方八方にやりながら、辛うじて「いやなんでもないです」と答えた。
「私、一人っ子なんです。ですから、兄弟の存在には憧憬の念を抱いていたんですよ!」
「し、憧憬の念……随分と難しい言い方しますね」
変に語彙の整った義妹の台詞と感涙しかける義妹の態度が、僕の脳を混乱へと陥らせる。
「あぁ、駿さんは敬語じゃなくていいんですよ。私は妹ですから」
「そうか。それなら砕けた言い方にするけど……」
「慣れるのが早いですね。でも、そのほうが自然体でよきです! これからよろしくお願いします!」
そう言われてしまっては「よろしく」と続ける以外に術はなく、義妹は意外にも僕の懐にすんなりと入っていった。




