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僕の義妹(マイシスターインロー)は一親等。【長編小説】  作者: 金森 亮
第五章 宣告と肉体

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18/19

第18話 母親が小雪ではないことにする。

 5月16日水曜日、彼女と出会ってから彼女が死ぬまで、大体半分となった今晩、僕は彼女にこんな提案をしていた。


「……なぁ、小雪」

「なんですか?」

「小雪には申し訳ないんだけど、僕にはまだ血縁がどんなものか分からない」

「いいんです。いつか分かってもらえれば」


 僕は目を逸らして言葉を躊躇う。そして意を決してこの言葉を告げた。


「だから、僕がいまここで告白しても……変じゃないと思うんだよ」

「……たしかに、私たちの関係は所詮心の血縁ですが、私はそのうち死ぬんですよ?」

「分かっている。だから……だから、最後ぐらいは、お前に小雪を演じさせてやりたい」


 彼女が小雪と化しているのは、父に再婚相手ができたことで、状況を混乱させないための逃避にすぎない。それを、僕は本物の“鹿野小雪”に昇華させようとしたのだ。


「私はなんだっていいですよ。駿さんが幸せに生きてさえいてくれればそれd……」

「そんなこと……僕には知ったこっちゃないんだよ」

「……え?」


 途端に、僕は彼女を今までで一番強い圧を以て抱擁した。


「ど、どうしちゃったんですか……?」

「エゴだとは分かっている……だけど、最後の一ヶ月半は、ちゃんと生きていてほしい」

「……私はちゃんと生きていますよ」

「違う。演じるなら演じるで、妥協しないでほしいんだよ……」


 僕はポツンと雨の如く涙を滴らせ、彼女に想いを伝えた。自分でも何を言っているのか意味が分からない。だが、彼女の人生が実り豊かであることだけを願っていた。


「……私は、自分の存在に根拠がないから小雪として逃げているだけです」


 すると、彼女が唐突にそう告げてきた。


「ど、どういうことだよ……?」


 僕は彼女への束縛を解いて、そのまま話に耳を傾ける。


「虎之介さんにしか分からないような情報を知っていたことで、駿さんに信用してもらえましたよね?」

「そうだけど……?」

「つまり、私・兼平麻也の存在は情報に頼っているんです。ですから……」




―――駿さんが信じてくれなかったら、私に存在価値なんてなかったんですよ。―――




 彼女はどうしてか微笑すると、急に小刻みに震え出した。


「つまり、堂々と生きたい私と、駿さんに存在を知ってもらいたい私……そこの間に葛藤があるんですよ」

「……僕が言うまでもなかったってことか」

「えぇ。なので、心配されなくて大丈夫ですよ。私は葛藤しながら最期を迎えますから」


 彼女の言葉にはどこか悲壮感の類が募っていた。そんな彼女を見て、黙りこくる僕ではなかった。


「……やっぱりそんなのダメだ。僕は小雪に葛藤なんて抱えないで、一人の人間として生きてほしい」

「お気持ちだけじゃ……いけませんか?」

「それなら……それこそ、僕は小雪と付き合いたい。小雪を本物の人間にしたいんだ」

「私の話を聞いてもそう仰るなら……分かりました。よろしくお願いします」

 

 そうして僕らは疑似交際関係に至った。この交際には大義があって、そのために僕は残りの約45日を、無駄のないように使う必要があった。


「彼女……小雪を……麻也を葛藤から救い出して見せる」


 彼女が部屋に戻った後、僕は一人そうぼやいた。既に僕の心には火が点っていた。

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