↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の義妹(マイシスターインロー)は一親等。【長編小説】  作者: 金森 亮
第五章 宣告と肉体

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/19

第17話 血縁が全てなんだと。

「……自分を殺してでも、僕と三ヶ月だけ会うことを選んだんだよな?」


 彼女の去り際、僕は彼女にそう尋ねた。僕に残った最後の疑問だった。


「えぇ、そういうことになります」

「僕には……ちょっとよく分からないんだ」

「なにがですか?」

「生きることより、僕の前で死ぬことを選んだわけだよ……」


 すると、彼女は頭に「一言いいですか?」と言って最後にこう呟いた。


「好きでも嫌いでも、血縁に変わるものはないんですよ」

「……それがよく分からないんだ」

「つまり、駿さんだって嫌いでも、虎之介さんに代わる人はいないんです」


 僕はなかなか煮え切らずにいた。


「結婚すればいいんじゃないのか……?」

「夫婦は離婚したらそこでお終いです。元はただの他人ですから」

「それはそうかもしれないけどさ……」

「縁を切っても切れないのが血縁なんです。私は駿さんと血縁があったこと、誇りに思っていますから」


 彼女はそう言うと目を瞑って笑い、一雫の熱いものを流していった。



 5月6日日曜日、今朝の僕は父親と言の葉を紡ごうと思っていた。新聞紙片手に堂々と椅子に腰掛ける父は、僕の入る隙を与えてくれない。だが、そこは僕も折れなかった。


「……なぁ、父さん」

「あぁ、なんだよ?」

「そ、そっちは上手くやっているのか?」

「お前が心配することはねぇよ。用が済んだらどっかいけ、しっし」

「……本当に最悪だな」

「最悪な息子に最悪な父ってか、ははは」


 僕は朝ご飯も食べずに自室に籠る。外から彼女の、「駿さん、食べないんですか?」という声が聞こえる。一言「うん」とだけ返事をし、独り言を呟くのだった。


「……血縁なんて、目に見えないものをどうして信じるんだよ」


 僕にとって血縁というものは、もはや形骸化したものに過ぎなかった。血縁なんてものを彼女が信じる意味が、今日もやっぱり知れないのだった。



 5月8日火曜日、隼人と共に帰路を歩んでいたときのことだった。菩薩のような顔をして正気を失う僕に、隼人はこんな言葉をかけてきた。


「何があったか言ってみろよ」

「……母親と再会したけど、母親は余命二ヶ月だし、父親には煙たがられている」

「そうか」


 隼人はにっこりと笑みを浮かべると、僕にこんな言葉で支柱となってくれた。


「辛いことは共有してナンボだ」

「……そうなのかもな」

「だからさ、友達として、親友として、手伝えることはなんでもするから、な?」

「悪いな。無理にそう思わせて……」

「お前が生きていないと、俺も生きている心地がしないもんでな」


 僕は彼女に対する血縁の感情が、段々と薄められて半透明になっていた。


「……血縁関係なんか、信じるほうがアホくさいよな」

「へ……?」

「もっと大切なものがある……そうに違いないんだよ」


 僕は断言することにした。彼女の指針は完全に間違っているのだと。


 そして、唯一彼女の正体を知っている僕には、血縁という呪いから目を覚めさせる使命があるのだと……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。