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僕の義妹(マイシスターインロー)は一親等。【長編小説】  作者: 金森 亮
第五章 宣告と肉体

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第15話 母恋。

 5月5日土曜日、今日も僕は彼女からお誘いを受けて、夕ご飯を外で食べることになっていた。


「駿さんとしたくてもできなかったこと。そのうちの一つが、外食をすることでした」


 栄の方に向かう地下鉄で、彼女はそう言葉を綴った。


「どうして外食なんだ?」

「ほら、幸せっぷりを周りにアピールできるじゃないですか!」

「今と昔とは全然違くはないか……?」

「えぇ。ですが、カレカノって体裁もまた、悪くはないですよ!」

「……そうか。それならいいんだけどさ」



 ゴールデンウィークは人、人、人のオンパレードで、僕らはごった返す栄の街をかき分けるようにして進む。


「そんなゴールデンウィークじゃなくてもよかったのに……」

「いいえ。ゴールデンウィークだからこそ、雰囲気があっていいじゃないですか」

「それって……どんな雰囲気だ?」

「幸福と希望に包まれている雰囲気です!」


 彼女はこちらに、陽だまりのような笑みを照らしつける。どんなネオンよりも美しい彼女の笑顔は、僕の荒みかけていた心も浄化してくれた。



「なにを食べに行くんだ?」


 僕が不意にそう尋ねると、彼女は安牌に「味噌カツです」と回答してきた。


 辿り着いた先の店で、彼女はなんと予約をしており、そのまま席へと移される。


「……随分前から計画していたのか?」

「流石は駿さん、話が早いですね。私のアバンチュールは全て計画のうちにあります」

「じゃあ……もし僕が断ったら?」

「えぇ、全ておじゃんです!」


 彼女はなぜか笑みを絶やさずにそう言い切った。僕に半依存しているかのような彼女の生活は、母親にしか到底叶わないものだった。


「……眉唾物の話だけど、僕はお母さんのことをなんて呼んだんだろうな」

「いま、実験してみます?」

「でも……小雪でいたいんだろ?」

「一瞬だけ解禁ってことで!」


 僕は彼女の顔をまじまじと見つめ、毎日見ていた遺影と重ね合わせる。そうして導き出された言葉が、「お母さん」だった。


「……お母さん。たぶん、そう言っていたと思う」

「凄く優しい言い回しですね」

「きっと、優しい母親だっただろうからな」

「実際、手は出さないつもりでしたよ」


 そんな与太話に耽って、僕らは味噌カツを嗜んだ。これが、僕の最後の休息だとも知らずに……。



 夕食を食べてからというもの、栄の町並みがあまりにもロマンティックで、この場のムードを瞬く間に掻き立てていく。


「……別にこのまま逃避行し続けてもいいんだからな」


 僕は遂にそんな粋な言葉まで漏らしてしまった。


「それは、新手の告白ですか?」

「そうなのかも……しれない」

「え?」


 僕は震える唇をどうにか操って、彼女に胸の内を吐露した。


「僕は小雪のことが、人として好きなんだ。母親に対する愛かもしれないけど……」

「……そう言われて、嬉しくないわけがないですよ」

「それで僕らが結婚すれば、僕らは真の意味で家族になれるんだよ……なれるかもしれないんだよ」


 彼女はいつものように満面の笑顔を見せてきた。しかし、それは僕を否定しないための手段に過ぎず、どこか澱んだ笑顔をしていた。


「たしかに、それは名案だと思います。でも……ごめんなさい。それは無理なんです」

「ど、どうして。やっぱり、親子の関係に戻りたくなったのか?」

「……そろそろ潮時ですね」

「へ……?」


 彼女は聞いたことのある「ふぅ」という吐息を漏らして、僕に寂し気な笑顔を向けてきた。




―――私、余命二ヶ月なんです。―――




「……は」

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