都の焦土と、迫る暴王
第74話:都の焦土と、迫る暴王
湖水郷の地に広がる反逆の煙。
その一角にある、服部先生と奥田先生が切り盛りする小さな宿屋に、突如として一人の男が倒れ込んできた。
燃えるような赤い髪に、伸び放題の黄色いヒゲ。髪はボサボサで衣服はボロボロ、何日もまともな食事を口にしていない様子で、息も絶え絶えであった。
「大丈夫ですか!? おい、奥田先生、すぐに水と粥を頼む!」
「服部先生、この人……酷い傷だ! 一体何があったんだ!?」
先生たちの介抱により、かろうじて息を吹き返した男の名は――段影住。
朝廷の暴虐な兵士たちによって故郷の村を焼かれ、命からがら湖水郷まで逃げ延びてきた避難民であった。
温かい粥を夢中でかき込み、涙を流す段影住は、やがて都で起きた「恐ろしい悪夢」について語り始めた。
「……都は……もう終わりだ……。恐ろしい魔王が現れたんだ……!」
「魔王……? 一体どういうことだ」
驚く二人の先生に、段影住は震える声で告げた。
「朝廷の将として突如現れた男……『菫山卓』。あいつは、盛大な酒宴の席で……あの高田修司を衆目の前で殺害したんだ!」
「なにッ!? 高田修司が……殺された……!?」
「そうだ……! 高田を血祭りにあげた菫山は、そのまま朝廷の権力を強奪して独裁者のトップに君臨した。そして奴の兵どもが都へ解き放たれ、略奪と火放ちを繰り返し……今や都は見る影もなく荒廃してしまったんだ……ッ!」
絶句する服部先生と奥田先生。
腐敗した奸臣・高田修司の死、そしてそれを上回る圧倒的な暴虐の王・菫山卓の降臨。
朝廷の崩壊と都の焦土化という恐ろしい報せは、湖水郷に集う恵太たちの耳へともたらされようとしていた。




