湖水郷の水門と、源田三兄弟
第72話:湖水郷の水門と、源田三兄弟
南霧郷の激闘を終え、朝廷への不審感を募らせる恵太たちが足を踏み入れたのは、広大な湖と無数の網状河川が広がる『湖水郷』の漁村であった。
この水辺の街で、民たちの怨嗟の声はすでに臨界点を迎えていた。
原因は、都から派遣された悪徳役人たちによる、度を越した「魚と水産物の過酷な搾取」である。
「また持って行くのかよ! これじゃ俺たちの喰う分どころか、来年の種魚すら残らねえぞ!」
役人たちに激しい怒りの視線を向け、網を固く握り締める三人の青年がいた。
この湖水郷の街で、抜群の船裁きと水練の技術を誇る「源田三兄弟」である。
長男・源田大樹――三年生。沈着冷静で弟たちを束ねる兄貴分。
次男・源田数正――二年生。血気盛んで不義を絶対に許さない情熱家。
三男・源田七郎――一年生。身軽で水中の動きにおいては誰にも負けない天才肌。
元の世界では水泳部に所属し、インターハイを目指してプールで汗を流していた三人は、異世界へ落ちて以降、その圧倒的な水練を活かして漁師としてたくましく生きていたのだ。
「大樹兄ちゃん! 朝廷の奴ら、また徴税の船を出してきたぜ! もう黙って見てられるかよッ!」
「落ち着け、数正。……だが、七郎の言う通りだ。こんな腐った朝廷に黙って従っていたら、この街の漁師は全員干からびて死ぬ」
朝廷の横暴に限界を感じ、決起の機会をうかがう源田三兄弟。
そこへ、都の不条理と大葉たちの死、そして仲間の犠牲を胸に抱いた恵太たち葦ヶ原軍が到着する。
陸の猛者を失った恵太たちと、水上の覇者である源田三兄弟。
腐敗した朝廷を叩き潰すための「水陸合同の反撃」が、湖水郷の地で静かに動き出そうとしていたのだった。




