芽生えた疑惑と、反逆の足音
第71話:芽生えた疑惑と、反逆の足音
都から戻った恵太が手にした『伏魔殿の鍵』。
本来であれば、全員で歓喜し、現代への帰還を祝うはずの葦ヶ原砦は、しかし夜の闇よりも重い沈黙と不穏な空気に包まれていた。
原因は――都で執り行われた、大葉たちの凄惨すぎる『八つ裂きの刑』であった。
「朝廷の奴ら……大葉さんたちをあんな目にあわせたのかよ……ッ!」
大評定の間で、武藤が怒りに震える拳で机を激しく叩き割る。
関口勝や大八、そして生き残った頭領たちの瞳にも、激しい怒りと朝廷への強烈な不信感が渦巻いていた。
「俺たちは朝廷の言われるがまま江南へ行き、マラリアに苦しみ、宗一郎や柴田さん、秦野さん、青木さん、大田まで失ったんだぞ!?」
「そうだ! それなのに朝廷のやったことは何だ! 民の苦しみを無視し、降伏した大葉たちを八つ裂きにして見せしめにしただけじゃないか!」
かつて議論された「朝廷への帰順(招安)」。
当時は元の世界へ帰るための苦渋の選択であったが、今の仲間たちにとって、それはただの「悪徳政治への屈服」にしか映らなかった。
「帰順なんて、撤回するべきだ!」
「このまま朝廷の飼い犬になれば、いつか俺たちも使い捨てにされて八つ裂きにされるぞッ!」
「反朝廷・帰順拒否」の怒号が、大評定の間に激しく響き渡る。
仲間たちの悲痛な叫びを、総首領である恵太は静かに、そして深く受け止めていた。
手の中に握りしめられた『伏魔殿の鍵』の冷たさが、胸を刺す。
(僕たちは……何のために戦ってきたんだ? ただ自分たちだけが助かるために、この腐った朝廷の悪行を目をつぶって見過ごすのか……?)
智也と視線を交わす恵太。
朝廷から与えられた平穏を捨て、九十数人の仲間とともに「真の正義」のために立ち上がるのか。
葦ヶ原軍と腐敗した朝廷との、本当の生き残りを賭けた「最終決戦」の火蓋が、静かに落とされようとしていた。




