伏魔殿の鍵と、悲しき凱旋
第70話:伏魔殿の鍵と、悲しき凱旋
大葉、石田宝、そして張韜(張本)。
南霧郷の死闘の末に捕らえられた紅巾軍の首脳陣は、朝廷の官兵たちによって厳重に縛り上げられ、都へと護送されていった。
恵太たちは彼らが正当な裁判を受け、しかるべき処罰で済むことを願っていた。……しかし、待ち受けていたのは過酷すぎる現実であった。
都へ到着した三人に対し、朝廷が下した判決は――惨虐極まる『八つ裂きの刑』。
見せしめとして都の広場で処刑されたという報せを聞き、恵太は激しい吐き気と激痛に襲われる。
「そんな……八つ裂きだなんて……っ! 確かに彼らは反乱を起こしたけれど、元はと言えば朝廷の重税に苦しんでいたからで……!」
自分たちが信じて戦った「正義」とは何だったのか。
朝廷のあまりにも冷酷なやり方に、生き残った仲間たちの間にも重い沈黙と不信感が広がっていく。
そして――約束通り、皇帝の御前へと呼び出された恵太。
「見事であった、恵太。紅巾の乱の首謀者どもを鎮圧し、国に束の間の平穏をもたらした功績、真に讃えよう」
玉座の皇帝は冷ややかな笑みを浮かべ、約束の品を恵太へと差し出した。
怪しい燐光を放つ古びた鍵――『伏魔殿の鍵』である。
「約束通り、これを授ける。これがあれば、お前たちはいつでも『元の世界』へ戻ることができよう」
手に伝わる冷たい金属の感触。
林田宗一郎、柴田、秦野、青木草平、大田道灌……共に現代へ帰るはずだった多くの仲間たちを失い、血と涙で勝ち取った「元の世界への鍵」。
恵太は震える手でその鍵を固く握り締め、深く頭を下げるのだった。




