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伏魔の恵  作者: 水前寺鯉太郎


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捕縛の首魁と、背後の暗刃

第69話:捕縛の首魁と、背後の暗刃

 鳴り響く突撃ラッパの音を吹き飛ばすように、恵太率いる葦ヶ原軍の本隊がついに石造りの要塞の最奥へと雪崩れ込んだ。

「これ以上の無駄な血は流させない! 大葉、観念しろッ!」

 関口勝の大薙刀、武藤の打撃、そして恵太たちの執念が、要塞を護る凄絶な激闘を制する。

 激しい乱戦の末、ついに紅巾軍の首謀者――「フォックス」こと大葉を生け捕りにすることに成功したのだった。

 首魁を抑え、南霧郷の戦いに決着がつこうとしていたその時。

 市街地の瓦礫の陰では、もう一つの凄惨な死闘が終わりを迎えようとしていた。

「許さない……青木さんを殺したお前を、絶対に許さないッ!!」

 かつてないほど怒りに我を忘れた1年生・大田道灌。

 いつもならミリ単位で計算し尽くす音速の「石投げ(つぶて)」を乱射するが、憎悪によるフォームの乱れを、石田宝は気味の悪い笑みを浮かべながら流星錘の鋼線で器用に弾き返していく。

「ハハハッ! どうしたんだよ築城マニア! 怒りで照準が狂ってるぞッ!」

 頭に血が上り、冷静さを失った大田の攻撃は決まらない。

 それでも亡き青木の無念を晴らすため、必死に石を構え直したその瞬間――。

 暗闇の中からぬっと躍り出た影があった。石田宝の救援に駆けつけた副将・張本である。

 ――ドスッ!!

「が……ハッ……!?」

 背後から無情にも突き立てられた冷たい刃。

 背中を深く穿たれた大田道灌の口から鮮血が吹き出し、手に握られていた小石が、ガラガラと虚しく瓦礫の上へとこぼれ落ちた。

「大田ッ!!」

 遠くから叫ぶ仲間の声も届かず、築城と石投げの天才少年は、膝から崩れ落ちて南霧郷の冷たい土へと倒れ伏したのだった。

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