↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伏魔の恵  作者: 水前寺鯉太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/78

松の木と、散りゆく双槍

第68話:松の木と、散りゆく双槍

 鳴り響く突撃ラッパと、石造りの要塞と化した南霧郷の市街地。

 その路地裏の激戦区で、石田宝の狂猛な流星錘と刃を交えていたのは、かつて二本槍で鳴らした猛将・青木草平と、築城の天才1年生・大田道灌の二人であった。

「このガキ……っ! どこからそれほどの威力が……っ!」

 重鉄の球体を縦横無尽に振り回す石田の猛攻。

 激しい打撃の連打の中、青木の腕に流星錘の激震が走り、鈍い骨鳴りとともに右腕が大きく痺れ跳ね上がる。

「くっ……腕が……骨をやられたか……っ!」

 片腕の自由を失い、連続攻撃の命である二本槍の連携が完全に崩れた青木。大田の制止も虚しく、石田宝は片腕を負傷し後退する青木を獲物と定め、不気味な笑みを浮かべながら狂おしく追撃を開始する。

「逃がすかよ……! 大葉さんの邪魔をする奴は、一人残らず潰すんだッ!」

「しつこい小僧め……! 朝廷の二本槍、舐めるなッ!!」

 路地裏の行き止まり、一本の古びた松の木が立つ開けた広場へと追い詰められた青木。

 迫り来る石田の胸元へ向け、残された左腕で決死の渾身の一撃――長槍を電光石火の突きで繰り出した!

 しかし――決死の一閃は、焦りからわずかに軌道が逸れる。

 ――ガチィィィンッ!!

「な……なにッ!?」

 青木の放った魂の長槍は、石田の体をすり抜け、背後の太い松の木へと深々と突き刺さってしまった。

 焦りから必死に引き抜こうと力を込める青木。だが、湿気を吸った松の木肌は深く槍刃を咬み込み、ピクリとも抜けない。

「抜けろ……! 抜けろッ、頼むから抜けろぉぉッ!!」

「フハハハッ! マヌケだなあ! 木と戯れてる場合じゃないだろッ!」

 槍から手が離せない絶体絶命の隙。

 石田の頭上でブウンと唸りを上げた流星錘が、暗闇を切り裂いて青木の無防備な頭部へと叩きつけられた。

 ――ガカァァァンッ!!

「ぐあぁぁぁっ……!?」

 鮮血が吹き出し、かつて双槍将と恐れられた青木草平の身体が、槍を松の木に残したまま、ゆっくりと冷たい泥の上へ倒れ伏す。

「青木さん……っ!? うわぁぁぁぁッ!!」

 遠くから駆けつけた大田道灌の絶叫が、不気味な突撃ラッパの音と混ざり合い、夜の南霧郷へと悲しくこだましたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。