松の木と、散りゆく双槍
第68話:松の木と、散りゆく双槍
鳴り響く突撃ラッパと、石造りの要塞と化した南霧郷の市街地。
その路地裏の激戦区で、石田宝の狂猛な流星錘と刃を交えていたのは、かつて二本槍で鳴らした猛将・青木草平と、築城の天才1年生・大田道灌の二人であった。
「このガキ……っ! どこからそれほどの威力が……っ!」
重鉄の球体を縦横無尽に振り回す石田の猛攻。
激しい打撃の連打の中、青木の腕に流星錘の激震が走り、鈍い骨鳴りとともに右腕が大きく痺れ跳ね上がる。
「くっ……腕が……骨をやられたか……っ!」
片腕の自由を失い、連続攻撃の命である二本槍の連携が完全に崩れた青木。大田の制止も虚しく、石田宝は片腕を負傷し後退する青木を獲物と定め、不気味な笑みを浮かべながら狂おしく追撃を開始する。
「逃がすかよ……! 大葉さんの邪魔をする奴は、一人残らず潰すんだッ!」
「しつこい小僧め……! 朝廷の二本槍、舐めるなッ!!」
路地裏の行き止まり、一本の古びた松の木が立つ開けた広場へと追い詰められた青木。
迫り来る石田の胸元へ向け、残された左腕で決死の渾身の一撃――長槍を電光石火の突きで繰り出した!
しかし――決死の一閃は、焦りからわずかに軌道が逸れる。
――ガチィィィンッ!!
「な……なにッ!?」
青木の放った魂の長槍は、石田の体をすり抜け、背後の太い松の木へと深々と突き刺さってしまった。
焦りから必死に引き抜こうと力を込める青木。だが、湿気を吸った松の木肌は深く槍刃を咬み込み、ピクリとも抜けない。
「抜けろ……! 抜けろッ、頼むから抜けろぉぉッ!!」
「フハハハッ! マヌケだなあ! 木と戯れてる場合じゃないだろッ!」
槍から手が離せない絶体絶命の隙。
石田の頭上でブウンと唸りを上げた流星錘が、暗闇を切り裂いて青木の無防備な頭部へと叩きつけられた。
――ガカァァァンッ!!
「ぐあぁぁぁっ……!?」
鮮血が吹き出し、かつて双槍将と恐れられた青木草平の身体が、槍を松の木に残したまま、ゆっくりと冷たい泥の上へ倒れ伏す。
「青木さん……っ!? うわぁぁぁぁッ!!」
遠くから駆けつけた大田道灌の絶叫が、不気味な突撃ラッパの音と混ざり合い、夜の南霧郷へと悲しくこだましたのだった。




