流浪の暴れん坊と、半年ぶりの再会
第7話:流浪の暴れん坊と、半年ぶりの再会
大野が去ってから、しばらくの時が流れた。
師の教えを守り、郷里で静かに暮らしていた篠田進だったが、運命の悪戯は彼を解き放たない。近郊の篁ヶ嶽を根城にする山賊の頭領たちと浅からぬ交流を持ったことが、強欲な地方役人の知るところとなったのだ。
山賊と通謀した叛逆の罪――冤罪混じりの告発状が出回り、篠田の屋敷は役人の手入れを受けた。激しい立ち回りの末、屋敷を焼き払われた篠田は、生まれ育った故郷を捨てることを余儀なくされる。手に持つは一本の三節棍。青年は流浪の旅人となり、師である大野の背中を追うように諸国遍歴へと足を踏み出していった。
――同じ頃、篁郷から遠く離れたとある貧しい村にて。
「だから言ったろ、呉原! 落ちてる山菜を適当に食べるなって!」
「い、胃が……胃が裏返るような感覚がする……俺に毒性のキノコは耐えられない……」
泥だらけのジャージ姿で腹を押さえる智也と、それを呆れ顔で見下ろす葵。異世界へ落ちてから半年、二人は言葉もロクに通じない土地で、智也の「弁舌」と葵の「怪力」だけを頼りにギリギリの野宿生活を生き延びていた。
その時――村の入口がにわかに騒がしくなった。
「おい! 噂の『なんでも屋』の小僧が来たぞ!」
「あいつ、また隣村の病人を背負って山を越えてきたらしい!」
村人たちが歓声を上げて集まる中心に、見覚えのある少年がいた。
ボロボロになったジャージの袖を捲り上げ、疲労困憊の体に笑みを浮かべる少女と老人を抱え下ろす姿。
「恵太……!?」
葵が声を上げた。
声に反応し、振り返った恵太の目が大きく見開かれる。
「黒木……? それに呉原……っ! お前たち、無事だったのか!」
半年ぶりの再会。だが、駆け寄る二人を迎えた恵太の表情は、どこか翳っていた。
彼の胸に重く圧し掛かるのは、あの夜、己の善意で解き放ってしまった【百八の魔星】という罪の記憶。
「よかった……二人とも生きていてくれて。……でも、俺は……俺のせいで、この世界は――」




