肉体の魔王たちと、南霧郷の反撃
第66話:肉体の魔王たちと、南霧郷の反撃
頼れる猛将・秦野が倒れ、悲鳴と絶望が夜陣を包み込む。
勝利を確信し、狂気の笑みを浮かべながら流星錘を振り回す石田宝。
「ハハハッ! 全員砕け散れッ! 大葉さんの邪魔をする奴らは一人残らず――」
――ガツゥゥゥンッ!!
暗闇を打ち破る、凄まじい金属打撃音。
石田の音速の流星錘を、正面から重鉄の武器で強引にはじき返した男たちがいた。
「……てめえ、よくも秦野さんをやってくれたな……ッ!」
「おいおい小僧……図に乗るのも大概にしねえと、骨ごと叩き潰すぞ」
煙幕と雨の中から姿を現したのは――大八、武藤、そして関口勝の三人であった。
病魔が蔓延し、多くの仲間が倒れ伏す地獄絵図の中で、この三人だけは違っていた。
常人離れした圧倒的な体幹と鋼の肉体、そして研ぎ澄まされた生存本能により、マラリアの病魔すら跳ね返して無傷で踏みとどまっていたのだ。
「バ……バカな!? なぜマラリアで倒れていない……!?」
戦慄する石田。
関口の大薙刀が一閃し、武藤の空手仕込みの打撃が夜襲部隊を吹き飛ばし、大八の破壊的な鉄棒が押し寄せる紅巾兵を一網打尽にしていく。
「退けッ! 一度退くんだッ!!」
三人の「怪物」が見せた鬼神のごとき反撃の前に、石田宝の夜襲部隊はたまらず後方へと引き揚げざるを得なかったのだった。
夜襲を食い止めたこの一戦を境に、追い詰められていた葦ヶ原軍の反撃が始まった。
「湿地やジャングルで戦うから相手のペースになるんだ! 敵を街の中へ誘い込め!」
智也の即座の采配と、正気を取り戻した仲間たちの決死の執念。
大葉軍が得意とする「泥濘と蚊の潜む森」から、舞台は建造物が立ち並ぶ『南霧郷の市街地』へと引きずり込まれていく。
視界が開け、壁や路地を活用できる街中での戦い。
大葉のゲリラ網とマラリアの優位性を奪い去り、葦ヶ原軍はついに勢力を巻き返して互角以上の死闘を繰り広げ始めたのだった。




