伏魔殿の鍵と、最後の条件
第60話:伏魔殿の鍵と、最後の条件
山下先生の命がけの直訴から、一ヶ月後。
都の大極殿へと召喚された恵太は、絢爛豪華な玉座に鎮座するこの国の頂点――皇帝の前に単身で着座していた。
威圧感あふれる重々しい静寂の中、皇帝は手にした黄金の勅書を恵太へと差し出し、静かに言葉を投げかけた。
「……恵太とやら。お前たちは、この世界とは違う『異界』から落ちてきたそうだな」
「っ……!? はい……」
真実を見抜かれていたことに息を呑む恵太。皇帝は優しく目元を緩め、さらに問い重ねる。
「それで……過酷な戦いを乗り越え、何としても『元の世界』へと戻りたいと」
「はい! 僕も、百八人の仲間たちも……元の平和な世界へ帰ることが唯一の望みです!」
「ならば、これを見るがいい」
皇帝が懐から取り出し、掌の上に提示したのは――怪しい燐光を放つ古びた装飾の施された『鍵』であった。
「これは『伏魔殿の鍵』。あの日、お前たちが解き放った百八の魔星の因縁を封じ、異界の扉を再び開く唯一の神器だ。これがあれば、お前たちは全員無事に元の世界へ戻れよう」
息をのむ恵太。ついに目の前に現れた、元の世界へ帰るための「最後の希望」。
しかし、皇帝の眼光が再び鋭く光を帯びた。
「ただし――鍵を授けるには条件がある」
「条件……とは?」
「最近、都の知らぬ各地で『紅色の頭巾』を巻いた庶民どもが蜂起し、国全体を荒らしておる。この大規模な反乱軍を完全に鎮圧して参れ。見事、国に平穏を取り戻したその時に……この伏魔殿の鍵をお前たちに与えよう」
「――!」
元の世界への帰還を賭けた、最後の試練。
恵太は皇帝の提示した鍵を固く見つめ、静かに、しかし力強くその条件を受け入れるべく頷いたのだった。




