秘めたる不満と、プライドのつぶて
第55話:秘めたる不満と、プライドのつぶて
「――大田くん。君は本当に、今の朝廷のやり方に満足しているのかい?」
煙幕と対峙する陣前で、智也の静かな問いかけが大田道灌の耳に届く。
大田の眉根が一瞬、かすかに跳ねた。
築城の天才であり、頭脳明晰な大田は、とっくに気づいていたのだ。民を搾取し、保身と権力に走る朝廷の腐敗した現実を。
自分のような1年生の技術すら利用するだけ利用し、捨て駒のように扱う上層部への不満と怒りを、大田は冷たい仮面の下にずっと隠し続けていた。
(……分かっている。こんな朝廷に義などないことくらい……!)
心の揺らぎを打ち消すように、大田は手の中の小石を強く握り締める。
そこへ、智也の背後から軽やかな足取りで一人の少年が歩み出た。盧山俊太郎の忠僕・青山燕である。
「大田くん。君の石投げは凄い。だけど、朝廷の言いなりになって投げる石に、本当のプライドはあるのかな?」
燕はポケットから、手頃な小石をひとつ取り出し、指先で器用に弄んでみせた。
「言葉で議論するのはやめよう。……僕と君の『石投げ』で決着をつけないか?」
「……僕の弾道とスピードに、石投げで挑むと言うんですか」
「僕が勝ったら、君のその頭脳と石を、僕たちの『正義』のために貸してもらう。……どうだい?」
大田の瞳に、初めて狂暴なまでの闘志と情熱の火が灯る。
朝廷の兵としてではなく、一人の「石切り・投石の表現者」として。
「面白い……! 盧山の側近・青山燕、僕の石を撃ち落とせるものなら撃ち落としてみてくださいッ!」
二人の天才が、同時に小石を構える。
東雲府の戦場全体が静まり返り、息をのむ「音速のつぶて対決」の火蓋が切り落とされたのだった。




