百箇日の法要と、漆黒のチョコレート
第49話:百箇日の法要と、漆黒のチョコレート
長谷川蓋人先輩が亡くなってから、百日。
葦ヶ原砦では、亡き総首領の功績を称え、冥福を祈る「百箇日の法要」が静かに取り執り行われていた。
哀愁漂う砦の中で、智也は恵太へ一人の男の名を提示する。
元の世界で恵太の隣のクラスにいた男子生徒――大手菓子メーカー『盧山製菓』の若き社長、盧山俊太郎であった。
「盧山……? あいつ、この異世界でもお菓子を作っているのか?」
「ああ。特に彼が開発した『チョコレート』がこの世界で大爆発的なヒットを記録している。持ち前の商才と圧倒的な声望で、今や都をも動かす大商人だよ」
元の世界での文武両道な才覚と、異世界での圧倒的な財力・名声。
史野恭弥という絶対的な強敵を討ち倒し、長谷川先輩の遺言を果たすためにも、盧山俊太郎の存在と影響力は喉から手が出るほど欲しい『最強のピース』だった。
「盧山を俺たちの仲間に引き入れよう」
恵太と智也は、彼を葦ヶ原砦へスカウトするための緻密な策を巡らせ始める。
しかし――運命の歯車は、誰も予想しなかった最悪の方向へと狂い出す。
都を牛耳る黒幕・高田修司のもとへ寄進された盧山製菓の高級チョコレート。その中に「毒」が仕込まれていたという疑いが持ち上がったのだ。
「高田様を毒殺しようとした謀反人だ! 盧山俊太郎を逮捕せよッ!」
「待ちたまえ! 私はそんな毒など入れていない! 冤罪だ!」
身に覚えのない濡れ衣を着せられ、無情にも朝廷の役人たちによって縄で縛り上げられる盧山俊太郎。
史野を討つための「救世主」となるはずだった大商人が、朝廷の陰謀の罠に落ち、処刑寸前のピンチへと叩き落とされたのだった。




