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伏魔の恵  作者: 水前寺鯉太郎


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暗雲の北狄村と、地に落ちた巨星

第47話:暗雲の北狄村と、地に落ちた巨星

「敵が引いていくぞ……! 今だ、押し込めぇぇッ!」

 吹雪舞い散る北狄村の深道。

 引き際を見せる敵の背を前に、長谷川蓋人は功を焦るあまり、冷静さを欠いていた。

「待ってください、長谷川先輩! 罠です! 深追いしすぎです!」

「この地形は危険だ! 一度陣を引くべきです!」

 智也や宗一郎ら側近たちの必死の静止の声が響く。だが、恵太にばかり背負わせてきた罪悪感と「首領として戦果を挙げねば」という焦燥が、長谷川の耳を塞いでいた。

「黙って見ていろ! 俺だって葦ヶ原の頭領なんだッ!」

 周りの制止を振り切り、単騎で先陣を切って突撃を敢行する長谷川。

 しかし――それこそが、神弓の使い手・史野恭弥の描いた「殺戮の筋書き」であった。

 鬱蒼と茂る大木の枝の上。吹雪と同化するように気配を消していた史野は、獲物が自ら死地へ飛び込んできたのを見下ろし、ニヤリと冷酷に口角を上げた。

(かかったな……愚かな首領め)

 キシ…と弓弦が極限まで引き絞られる。

 史野の放った黒い一矢は、風を切り、吹雪を貫き――突進する長谷川の眉間へとまっすぐに吸い込まれていった。

 ――ドスッ!!

「ぐあぁぁぁっ……!?」

 鮮血が白雪を赤く染め上げる。

 凄まじい衝撃とともに、長谷川の途絶えた悲鳴が響き、その巨躯は大きく揺らめく馬上から崩れ落ち、冷たい雪原へと叩きつけられたのだった。

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