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伏魔の恵  作者: 水前寺鯉太郎


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双鞭の國府田と、挟み撃ちの死線

第42話:双鞭の國府田と、挟み撃ちの死線

 正面に立ち塞がる五千のからくり兵。殺意を持たぬ鉄の波を前に、葦ヶ原軍が陣形を整え直そうとした――まさにその一瞬だった。

「――全軍、突撃ぃぃぃッ! 野盗どもを左右から踏み潰せ!」

 側面を守る無警戒な森の奥から、轟音とともに突風が巻き起こる。

 木々をなぎ倒して乱入してきたのは、官軍の鉄騎兵を率いる強大な猛将――國府田延晴(こうだ のぶはる)であった。

「なっ……!? 側面から奇襲だと……!?」

 驚愕する恵太たちの視界の中で、國府田の両腕に握られた二本の重厚な鉄鞭――『双鞭(そうべん)』が不気味な鈍光を放つ。

 國府田は豪快な咆哮とともに双鞭を振り回し、葦ヶ原軍の側頭部へ一気に殴り込んできた。

 ブワッ! と空気を切り裂く重打の一閃。

 國府田の繰り出す双鞭の一撃は、甲冑ごと兵士を吹き飛ばし、盾を粉々に打ち砕く圧倒的な質量の暴力だった。

「甘いぞ、葦ヶ原! 高田のカラクリ兵に気を取られている隙を叩くのが、この國府田延晴の戦術よ!」

 正面には隙のない五千のからくり兵。

 そして側面からは、一騎当千の猛将・國府田率いる鉄騎兵の猛攻。

「くっ……挟み撃ちか……! 陣形が崩れるぞ!」

 智也の悲痛な叫びが響く。

 内外の連携どころか、軍勢そのものが南北から挟み潰されようとする絶体絶命の死線。

 葦ヶ原軍は結成以来、かつてない壊滅の危機へと追い詰められたのだった。 

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