天井裏の忍びと、五千のからくり兵
第41話:天井裏の忍びと、五千のからくり兵
不気味な鉄の匂いが充満する「からくり城」の暗がり。
天井裏を影のように這う時田潜には、元の世界から得意としていた特殊な技術があった。人間の喉とは思えぬほどリアルな「動物の鳴き真似」である。
「チュー……チュチュッ……」
梁の隙間から時田が忍びやかに発したネズミの鳴き声に、回廊を巡回していた見張り兵たちが足を止めた。
「ああん……? なんてぇこった、ただのドブネズミか」
「チッ、からくり動力の配線をかじられちゃ堪らん。探すぞ!」
見張りたちの注意が見事に逸れた一瞬の隙を突き、時田は猫のような軽やかさで中枢のカラクリ制御室へと忍び込んだ。両親の仇である高田の野望を挫くため、少年は単身で回路の破壊工作を開始する。
一方――からくり城の重々しい正門前。
荒涼とした平原に陣を敷いた葦ヶ原軍の前に、城壁の上から見下ろす高田廉が姿を現していた。
「ほぉ……逃げずにここまで来たか。その威勢だけは褒めてやろう」
高田が薄笑いを浮かべ、懐から不気味な黒い御札を掲げて妖術を詠唱する。
次の瞬間、地鳴りのような重低音とともに、からくり城の巨大な鉄門がゆっくりと打ち開かれた。
「行け、我が愛しき『カラクリ兵』どもよ。野盗どもを一人残らず踏み潰せ!」
――ズシン! ズシン! ズシン!
規則正しい殺戮の足音が大地を激しく揺らす。
門の奥から湧き出してきたのは、全身を鉄の装甲とギヤで固め、長槍や鋸刃を携えた異形の機械人形の群れ――その数、実に『五千』!
「なっ……五千だと……!?」
殺気を持たず、感情もなく、ただ命令に従って行進してくる五千の機械の波。
圧倒的な軍勢の質量を前に、流石の葦ヶ原軍の陣形にも激しい戦慄が走ったのだった。




