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伏魔の恵  作者: 水前寺鯉太郎


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決着の決闘と、退く妖術使い

第36話:決着の決闘と、退く妖術使い

 万願寺の外を包む闇の中、突風と稲光が渦巻いていた。

 官軍屈指の妖術使い・高田廉が放つ黒い竜巻に対し、公文勝也は八卦の鏡を掲げ、大気中の電位差と気流を正確に打ち消していく。

「バカな……! 我が黒風の術が、なぜ打ち消される……!?」

「言ったはずだ。君の術は大気の気圧変化に過ぎない。原理が分かれば、相殺するのは容易いさ」

 公文の冷徹な分析と科学的道術の前に、高田の強力な妖術はことごとく無力化されていく。一進一退の攻防の末、公文の放った風陣が撃ち合わされた瞬間、高田は苦々しく舌を打った。

「チッ……気象オタクの小僧が、調子に乗るなよ。……まあいい、今日はこのへんで終わりにしてやろう。次は必ず、お前たちを跡形もなく吹き飛ばしてやるからな!」

 不気味な捨てゼリフを残し、高田は黒煙とともに闇の中へ姿を消したのだった。

 一方、炎上する万願寺の境内では、命を懸けた四つの一騎打ちがついに決着の時を迎えていた。

「ハァァァッ!!」

 一閃。林田宗一郎の繰り出した鋭い長槍が、北条時宗の剣を弾き飛ばし、その胸元を捉えた。

「先生……アンタの剣術、確かに凄かったぜ。だが――俺の『拳』の重さには及ばねぇ!」

 山伏の法衣を翻した武藤松生が、藤堂遼一の刀身を間一髪で打ち払い、空手仕込みの極大の踏み込みから渾身の右拳を叩き込む。豪快な一撃に、武芸師範の巨躯が崩れ去った。

「ガハハハッ! お経の読み直しだな!」

 大八の振り下ろした巨杖が、次男・北条氏胤の武器を粉砕し、そのまま石畳へと打ち据える。

「ぬうぉぉぉッ!」「ぐあぁぁっ!」

 そして本堂前、将軍・秦野の狼牙棒と、三男・北条氏長の大剣が同時に激突し、爆風とともに両者弾け飛んで相打ちとなった。

 四つの激闘が終わり、静寂が訪れる万願寺。

 総大将・万願寺祝慶は、我が子らと武芸師範の敗北を目の当たりにして完全に戦意を喪失し、蓄えてきた莫大な財産のすべてを差し出すことを条件に、恵太たちへ降伏を申し出た。

 囚われていた黒木葵や加藤も無事に救出され、葦ヶ原砦は「万願寺攻略戦」において完全なる大勝利を収めたのだった。

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